保育の基礎知識

芸術的な幼児教育「シュタイナー教育」で、子どもはどう育つ?

シュタイナー教育をご存じですか?
名前は聞いたことがあるけれど、実際はどんなものかよく知らない……そんな方も多いのではないでしょうか。
幼児教育に対する興味関心が高まるこの頃、さまざまな教育思想についても知識を蓄えておきたいですよね。

今回はシュタイナー教育(ヴァルドルフ教育学)について、その理念や特徴をご紹介します!

シュタイナー教育とは?

シュタイナー教育

シュタイナー教育とは、20世紀初めのオーストリアの思想家、ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育思想です。シュタイナー氏がドイツのヴァルドルフ・タバコ工場の労働者のために設立した学校(ヴァルドルフ学校)がモデルになっていることから、ドイツでは一般にヴァルドルフ教育学と呼ばれています。

◆ヴァルドルフ学校って?◆
第一次世界大戦後のドイツでは大変珍しかった、男女共学ですべての社会階級の子どもが学べる学校。小学校から高校まで12年間、子どもたちの発達段階に合った授業を行い、成長過程を支える教育を行いました。その教育思想は全国に広がり、現在では1000を超える学校や1500以上の幼稚園でシュタイナー教育(ヴァルドルフ教育学)が実践されています。

独自の思想を基にして、自分の意志で行動できる人間への成長を促すための教育に取り組んでいます。

シュタイナー教育の特徴

シュタイナー教育

1.人間に対する考え方

シュタイナー教育のねらいは、心と体を含めた全人教育を施し、自由な意志で動いていける人間を育てること。
そのためには「「人間に備わっている4つの構成要素を、成長段階にあわせて育むこと」」が重要だと考えられています。

物質体(0歳に形成) 物体としての身体そのもの
生命体(エーテル体/7歳頃形成) 引力に逆らい下から上に伸びる力。成長や繁殖をつかさどる力
感情体(アストラル体/14歳頃形成) 快・不快の感情も結びついた動き
自我(21歳頃形成) 考え、話し、自分に対する意識を持つこと

これらをバランスよく成長させていくことが重要視されています。どの構成要素が強く現れるかで子供の気質が変化すると考えられており、それにあわせて接し方を変えるのがシュタイナー教育の大きな特徴です。

七年期説

シュタイナー教育では、人間は7年ごとに成長の節目を迎えると考えられています。生まれてから成人するまで(0~21歳)を3分割して、それぞれの段階にあわせた教育方法を提案します。

第1七年期(0~7歳)
体を作り動かす時期です。毎日位の生活リズムや周囲の大人の影響を重視します。
身の回りに善があふれていると無意識に理解できるように、子どもに吸収されてよいものを身の回りに置きます。
第2七年期(7~14歳)
感情の成長が課題となる時期です。さまざまな芸術に触れることで「世界は美しい」と感じられる教育を目指します。
第3七年期(14~21歳)
自我が発達するまでの時期です。抽象的な概念や思考力によって世界についての理解を深め、思考力や知力、判断力を育みます。

4つの気質

また、シュタイナーは人間の気質を「生まれながらの個性と遺伝との混合」と考え、4つに分類しています。
子どもの気質にあわせた接し方も提唱されているので、これもぜひチェックしておきたいですね。

胆汁質(火・赤)
・自己主張や意志が強い
・決断力や行動力がある
・意志が通らないと癇癪をおこす
・周囲と衝突しやすい
・能力が認められることで力を発揮する
 
子どもに注目し関心を示す、少し難易度の高い課題を与える、尊敬できる大人を傍におくなどの接し方が必要。
憂鬱質(土・紺や紫)
・物事をネガティブに考えがち
・非社交的で孤独
・傷つきやすい
・自分に対する関心が強い
・懐疑的
 
辛い体験をした人を愛する傾向にあり、そういった出会いがないと孤独感を感じるため注意する。
粘液質(水・緑)
・自己主張や意志が強い
・決断力や行動力がある
・意志が通らないと癇癪をおこす
・周囲と衝突しやすい
・能力が認められることで力を発揮する
 
子どもに関心を持ってさまざまなことに気付き、反応を示す接し方が必要。
多血質(風・黄色)
・さまざまなことに関心を示す
・楽天的でポジティブ
・活気がある、陽気
・人当たりがよくやさしい
・長い間集中することが苦手
 
落ち着かない傾向もあるためゆっくり接する、またはそれ以上にせわしなく接し、自ら気付かせることが必要。

 

どんな風に教育するの?

シュタイナー教育
シュタイナー教育には、環境や子どもへのアプローチの仕方などにもさまざまな特徴があります。その代表的なものをご紹介しましょう。

授業自体が芸術的

どんな教科であっても、詩を唱えたり歌を歌ったりといった芸術活動を通じて学びを提供しています。

早期の知的教育は避ける

人間の発達段階に関する理論に基づき、早期の知的教育は行いません。テレビや映画、ゲームなどは基本的に禁止しています。また絵本や紙芝居は使わず、お話しのみで物語を伝えることも特徴のひとつ。感情を抑え淡々とした語り口調で話し、子どものイメージを膨らませます。

生活環境の特徴

子どもが安心できるよう、静かな環境を作り、色についても安心できるような淡いピンクなどが基調とされる場合が多いようです。規則正しい生活のリズムを大切にします。

エポック教育

「エポック」と呼ばれる、国語・算数・理科・社会といった主要教科から1教科だけを選んで数週間学び続ける時間があります。
集中して1つの教科を学習をすることで、各教科に対しての知識を深められると考えられています。
点数で優劣をつけないためにテストは実施せず、日々の受け答えや提出物などで評価します。

縦割りクラスと同一担任制

幼稚園においては異年齢の縦割りクラス、小・中学校では8年間の持ち上がり制の一貫教育体制が取られています。小・中学校では8年間同じ担任がクラスを担当します。
 

幼稚園から学校まで一貫して教育を行うところもあるけれど、幼稚園だけ、学校だけ、というケースもあります!

オイリュトミー

体を使っていろいろな表現を行います。みんなで円を作ってみることで協調性や責任感を育んだり、詩を唱えながら言葉の響きに沿って体を動かすなどの取り組みを行います。

水彩

にじみ絵という水彩技法を用います。十分に濡らした画用紙に赤、黄、青の3色の絵具をたらし、混色や色の広がりを楽しみ感性を育てます。

フォルメン

直線や曲線、四角や渦巻などの線を、色を使って描かせ、運動感覚やバランス感覚、集中力を養います。

自然素材にこだわる

天然の木やシルク、綿、羊毛などで作られたおもちゃや人形を与えます。有機栽培の野菜や、添加物をなるべく使用しない食材で昼食を作成する園もあります。

賛否両論?保護者の意見を聞いてみよう!

シュタイナー教育
このように多くの特徴があるシュタイナー教育は、メディアなどにも取り上げられ、その教育理論に対して賛否両論の意見が寄せられています。

皆同じような絵を描くのが気になります。にじみ絵っていうんですかね、絵の具をにじませるシュタイナー教育の描き方。その園を出て、小学生になってもそういう絵を描いている子がいました。これってどうなのかな…。(とんびさん)
学校では子供の発達というのをとても大切にしていて、~7歳は特に意志を育てる環境、~14歳は感情に働きかける教育が徹底されていました。我が子達は学校で習ってきたことが楽しくて仕方ないようで、家でも自分から勉強していました。(みーなさん)
本人の資質にも寄りますがシュタイナー教育を受けたお子さんは
成功例:人の意見に惑わされずに全体を見ることができ、もっともふさわしいと思える判断ができる。
失敗例:人の感情は無視する。要するに空気を読めない。あるいは読まない。
日本では「空気が読めない。読まない。」は最も嫌われると思います。(シュタシュタさん)
シュタイナーやモンテッソーリは「思想」です。その思想はきっとすばらしいものだと思います。ですが、実践されている方々がその思想を十分に理解していなければ、単に「こういうときはこうする」という画一的な対応になってしまい、教育者が主役で、個々の子供は脇役になってしまいます。まずは思想全体を理解されることが重要なのではないかと思います。(DaoPさん)

 
《参考》読売小町|大手小町
 

働く上での特徴とは?メリットとデメリット

シュタイナー教育
幼稚園教諭さんとして働く際には、まず大前提としてシュタイナー教育に興味と関心を持ち、自主的に学んでおく必要があるでしょう。
 
●自然素材や芸術にふれる機会を、子どもたちに多く与えたい、
●早期幼児教育に疑問を感じる
●縦割りの保育に興味がある
●静かな環境で仕事がしたい
 
シュタイナー教育について知識を得たうえで、上記のような項目に当てはまる方には、働くメリットが大きいと言えるでしょう。一方で理念や方針に共感できないといった場合には、働く上で疑問やストレスを感じることもあるかもしれません。
 
園によって方針や環境も異なりますので、働きたい!と思った場合には、見学などで職場をよく見てみると良いかもしれませんね!

編集者より

シュタイナー教育
日本にはさまざまな教育法が存在します。それらを見る中で、保護者の方にとって、保育者にとって、子どもにとって、それぞれに合う、合わないはあるのではないかと感じています。
 
大切なのは「良い・悪い」といった他者の意見を鵜呑みにしてしまうのではなく、様々な情報を自分で集め、最もご自身にあったものを選択することなのではないでしょうか。
 
シュタイナー教育を実践する園には、見学会などを実施しているところも多くあるようです。ご興味のある方は、いちど足を伸ばしてみても良いかもしれませんね!

参考文献・サイト

ABOUT ME
保育のお仕事レポート
保育業界専門の転職支援サービス「保育のお仕事」です。 「保育のお仕事レポート」は、現場で働く保育士さんのためのメディアとして運営しています。お役立ち情報や最新の求人情報は各SNS(FacebooktwitterLINE@)で要チェック!
保育のお仕事 最新求人