「にじの森保育園」。
東京都荒川区ののどかな住宅街、立ち並ぶマンションに囲われた広大な汐入公園の中に構えられた、全国で初めての「公園内保育園」です。
地域に開かれた保育園として子育てサロンや屋上の開放を行っているにじの森保育園ですが、実際に働いている保育士さん達は、日頃どんなことを意識して保育に取り組まれているのでしょうか?
今回の記事では、にじの森保育園の園長先生と現場の保育士さんにお話をお伺いします!
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*シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。
子どもも、先生も、のびのびと――渡邉園長インタビュー
訪問した時から終始にこやかに対応してくださったのは、にじの森保育園の園長・渡邉真弓(わたなべまゆみ)先生。
証券会社のOLから転身、25歳から専門学校へ通い始め、27歳で保育士資格を取得されたそうです。そのきっかけは、なんと「交通事故で入院した際、同室になった人が保育士だった」というドラマチックなものでした。
そんな渡邉先生に、にじの森保育園の魅力をお聞きしました。
――にじの森保育園の園長先生になるまでの経緯を教えてください。
渡邉園長:5年前に汐入保育室という、汐入小学校の空き教室を利用した保育室の職員として就職したのが始まりでした。そこで働いていたときに系列園の立ち上げ要員として異動して、2年間ほど副主任として会議などに参加していたのですが、ある日汐入保育室の施設長にならないかという打診がありまして。それで汐入保育室に戻って半年、今度はにじの森保育園が新しくできることになり……そのまま引き継ぐ形で、ここの園長になりました。
――にじの森保育園は地域の方々とのかかわりを大切にされている園ですが、これまでにどのような交流がありましたか?
渡邉園長:地域のかかわりとしては、子育てサロンや屋上開放などのほかに、小中学校の職業体験や保育士志望の学生のボランティアなどを積極的に受け入れるようにしていますね。子どもたちにとってもいい刺激になっていると思います。
あとは勤労感謝の日に、消防署の方達に子どもたちから手作りのカレンダーをプレゼントしたこともありました。そのお礼に子どもたちが消防車に乗せてもらいましたね。
子どもは平日の長い時間をこの園で過ごしているので、自分達が生活している地域にはどんな人がいるのかということを、こうしたかかわりの中で学んでほしいなと思いますね。
――園長先生がにじの森保育園で、大切にしていることは何ですか?
渡邉園長:「職員間の関係性」を大切にしていますね。にじの森保育園の前身である汐入保育室は、小学校の空き教室を使っていた関係で、環境的にはちょっと不便なところも多かったんです。水道の位置があわなくて台を後付けするとか、使っている教室が1階と3階に分かれていてエレベーターで移動するとか……。でも職員同士の関係がうまくいっていれば、そういうときでも協力し合えて、保育もうまくいくんだなと思いました。なのでそれは、にじの森保育園ができた今でも意識しています。
――園の理念にも、「保育者も楽しんで」というフレーズがありますね。保育士さん達が楽しくお仕事できるように、何か取り組んでいることはありますか?
渡邉園長:仕事はもちろん全力でしてもらっているのですが、それだけではなくて、プライベートも充実させてほしいなというのは強く思っています。やっぱり、仕事もオフも満たされていないと、働く人の気持ちとしていいパフォーマンスができないのではないかと考えていて。ですからできるだけ休みも希望通りに入れるようにはしています。
あと、にじの森保育園はママ保育士さんが多いので、子どもの急病などで先生が早退することもよくあります。ですがそういうときでも嫌な顔をせず、「子どもを優先してあげて」って送り出すようにしています。急な欠員が出ても大丈夫なように各クラス+1人になるよう多めに人員を配置していますし、人手がどうしても足りないときは私も保育に入りますので、きちんと回せていますね。
――それは素晴らしいですね!ほかにも、他にも園として取り組みなどはありますか?
渡邉園長:あとは、外部内部問わず研修によく出てもらって、スキルアップを図っています。それを先生達で発表しあってもらって、勉強してきたことを共有してもらっていますね。ただ聞いてきただけじゃなくて、きちんと実践できるようになることが大切だと思っています。
――園長先生が思う、一緒に働きたいと思う保育士さんはどのような人ですか?
渡邉園長:周りをよく見てくれる人がいいな、と思います。「自分の担当するクラスのことだけ」というのではなく、別のクラスのこともそれとなく気にかけてくれて、気になることがあればすぐ報告してくれるような人だとありがたいですね。
先生たちが働く環境については、少しでもよくしていけるよう、私と主任と三人で面談する機会を定期的に設けています。先生たちの悩みなども積極的に聞くようにしているので、そういったときにも相談しあえるといいなと思いますね。
働く保育士さんに聞いてみた「にじの森保育園」のいいところ
また今回は園長先生だけでなく、実際に「にじの森保育園」で働いている保育士の先生にもお話を伺いました。
今回インタビューに答えてくださったのは中原詩乃(なかはらしの)先生(35)。現在は2歳児クラスを担当しているベテラン保育士さん。また、ふたりのお子さんをもつママさん保育士でもあります。
短大を卒業してから幼稚園・保育園両方を経験してきた中原先生に、働く側から見るにじの森保育園の魅力をお聞きします。
――中原先生は初め、幼稚園に勤務されていたとのことですが、保育園に転職したのは、何かきっかけがあってのことでしょうか。
中原先生:短大で資格を取る中で、保育の道に進みたいというのはあったのですが、それが幼稚園か保育園かは当時考えていませんでした。はじめは幼稚園にしようと決めましたが、3年ほど勤めてから転職することになって。それで今度は保育園もやってみようと思った感じです。
乳幼児保育に強い関心があったわけではないのですが、働いてみたら小さい子どもたちの可愛さとか、魅力に気づきました。あと保育園は働いている保護者の方が多くいて、わたし自身が働きながら子育てしているママ保育士ということもあり、共感することが多かったので、今はずっと保育園で働きたいと思っています。
――にじの森保育園を転職先に選んだきっかけは何でしたか?
中原先生:元々は、にじの森保育園ではない、同じ法人(三樹会)の保育園を友人から紹介してもらって勤めていました。そこで5年ほど働いていたときに「新設する保育園があるから異動してほしい」というお話があって、このにじの森保育園に来ることになりました。
――さまざまな園で保育士経験を積んでこられている中原先生ですが、にじの森保育園の魅力はどのような点だと思いますか?
中原先生:これは法人全体に言えることなのですが、福利厚生がきちんとしている点です。ボーナスもしっかり出ますし、ママ保育士にとって働きやすい、時短などの働き方とかも選ばせてもらえます。そういった、園長をはじめ園のみんなが、子育てするママ保育士に配慮してくれるところがいいなと思います。
最初は母親になったら保育士を辞めて専業主婦になろうとしていましたが、今はずっと長く働いていたいと思いますね。先生同士の関係も良好で、子どもたちとの関わりも楽しくて、今は仕事が生きがいになっている感じです。
――中原先生は、お子さんがふたりいらっしゃるんですよね。
中原先生:はい。この園に来る前の同じ法人の園で働いているときから2回産休・育休を取りました。でも、働くのが楽しくて「早く戻りたい!」って思って、本当はもっと長く育休が取れるんですけど、半年で復帰しちゃいました(笑)
――中原先生が、保育をする上で意識されていることは何ですか?
中原先生:にじの森保育園はまだ開園して間もない公園内保育園なので、地域の方々からすごく注目されるんです。玄関から出ただけで「あ、あそこの保育園の子なんだ」といった感じで。なので、地域住民の方とのかかわりを大切にしたいと思っています。
先生が率先して模範となって、地域の方にご挨拶したり会話をしたりすることで、それを見ている子どもたちも自然と地域の方々と関わっていくようになってほしいと思います。
1日のお仕事の流れ
シフトによってもまた変わるそうですが、中原先生にお聞きしたにじの森保育園での一日のお仕事の流れは以下のようになります。
- 9:00 出勤
- 受け入れ、保護者対応
- 朝おやつ
- 散歩(今の時期はプール)
- 室内遊び
- 11:30 給食
- 12:00 お昼寝
- 15:00 起床
- 15:30 おやつ
- 帰りの時間まで自由遊び
編集者より
産休・育休をきっかけに退職してしまう保育士さんが多い中で、園全体でママ保育士さんをバックアップする、というにじの森保育園の取り組みは大変素晴らしいものですよね。
渡邉先生・中原先生ご両名からお話を伺って、この保育園では「先生同士が尊敬しあい、尊重しあう空気」ができているのだと感じることができました。
お忙しい中、取材にご協力いただきましてありがとうございました!