子どもを何回も抱っこしたり、小さな椅子にずっと座っていたり、外遊びで園児たちといっしょに走り回ることになったりと……日々の業務で身体を酷使している保育士さん。
気付いた時には「肩こりがひどい!」「腰が痛い!」「足のむくみが悪化している!」なんて身体が悲鳴を上げている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日々の業務の中には、身体に負担をかける動作をどうしても避けられない場面が多々あります。
そのときに身体を痛めないようにするには、動作に負けない身体作りとアフターケアが大切です。
第5回となる今回は保育士さんならではの抱っこの動作について、どうすれば楽に仕事ができるようになるのか、そのトレーニング方法をお聞きしました!
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*シリーズ「保育士さんのための保健室・セルフケア編」は、医師・専門家などのプロへの取材を通じて、保育士さんが自分でできる健康維持・向上に役立つに紹介していく連載企画です。
抱っこはどうして身体に負担をかけてしまうの?
どうしたら楽に抱っこできる?
まずは、保育士さんが自宅や職場で簡単にできる筋トレ方法を紹介しましょう。
大胸筋の簡単トレーニング
大胸筋(胸の筋肉)は腕の上げ下げなどの動作を行う上で欠かせない筋肉。赤ちゃんを抱っこする際に重要な部位です。
大胸筋を鍛えることで、毎日の動作がより楽になるでしょう。
大胸筋のトレーニングは、以下のような動作で行います。
- 片方の手を反対側の脇に挟む
- 手を挟んでいる脇側の手のひらを上に向け、肘を90度に曲げる
- その体勢のまま脇を締め、挟んだ手をぎゅっと圧迫する
- 3秒キープして力を緩め、また圧迫して3秒キープ
これを片側20回ずつできるといいですね。簡単な動きですが、ずっと続けていると効いてくる感じがありますよ!
肩の外転筋の簡単トレーニング
腕の上げ下げに欠かせないのは大胸筋だけではありません。肩を外転(側方に腕を上げる)させるための、肩関節周辺の筋肉(外転筋)のトレーニングも必要です。
肩関節は元々不安定な関節。周りの筋肉を鍛えて安定させることで、抱っこの際に肩や腕を痛めにくくなります。
- 大胸筋のトレーニングと同じように、脇に手を挟む
- 曲げた手を外側にゆっくり開く
- 真横まで開いたら前に戻す
開いてから戻ってくるまでを一往復とし、これを片側20回こなしましょう。
手首だけで動かそうとするとそこに負担がかかり、痛みの原因になってしまいます。
腕を開く際には手首だけ反らしてしまうことのないよう、中指から手首までのラインがまっすぐになることを意識しましょう。
胸と肩の簡単トレーニング
大胸筋と肩回りの筋肉を同時に鍛えられるトレーニングです。
- 両肘でティッシュ箱サイズのものを挟む
- 落とさないようにしながら腕だけ左右に動かす
これも左右に動かして戻ってくるくるのを一往復として、20回ほどできるといいですね。
身体ごと動かないように、また肘でティッシュ箱を潰してしまわないように注意が必要です。
また、腕を上げすぎたり、また下げすぎたりすることのないようにしましょう。90度くらいの高さで行うのがおすすめです。
背筋の簡単トレーニング
肩甲骨周りの筋肉を動かすことで背筋を鍛えます。
肩甲骨がうまく動かないと肩こりや痛みの原因となりがち。抱っこの際にも身体の負担を大きくしてしまうので、きちんと肩甲骨が動くようにトレーニングすることが必要です。
また、保育士さんに多いのが、抱っこの際に肩甲骨が外側に開いて背中が丸まってしまっている方。
正しい姿勢の維持のためにも、肩甲骨周辺はぜひ鍛えておきましょう。
- 手のひらを上にして、肘を90度に曲げる
- 胸を張るようにしながら腕を左右に開き、肩甲骨を中央に寄せる
肘のストレッチ
抱っこする際は肘を曲げた姿勢をキープしていることが多いため、適度に肘を伸ばすストレッチを行うことが大切です。
- 指が下を向くようにして手のひらを前に出し、手首を反らせる
- 反対側の手で指の付け根部分を押さえる
- 身体の方へ引っ張るようにして肘を伸ばす
- 20~30秒キープ
反対側の手で押さえる際、指の先だけを引っ掛けてしまうと、指だけが反って肘が曲がっている姿勢になりがちです。
しっかり肘を伸ばして、手首を反らすことを意識しましょう。
手指のストレッチ
だっこのときだけでなく、おたより作成など書き物の仕事やパソコン作業などのデスクワークでも手指を使うことの多い保育士さん。
指の関節が固くなってしまうと腱鞘炎を引き起こしやすくなるほか、肩の痛みの原因にもなってしまいます。指の関節もしっかりケアしましょう。
- 手を地面と水平に挙げ、指を手の甲側に反らせていく
- 20~30秒ほど伸ばしてから次の指へ
無理やり反らせようとしてしまうとかえって関節を痛めてしまうので、できる範囲でゆっくり行うようにしてくださいね。
大胸筋のストレッチ
だっこなどの前かがみになる姿勢を続けていると、どうしても人は猫背になりがち。背中が丸まった姿勢でいると、大胸筋が固く短くなってしまいます。
大胸筋は先述の通り、腕の動作に欠かせない筋肉。しっかりほぐして柔軟に動くようにしましょう。
- 壁に片手をつき、壁と逆の向きに身体を向ける
- 20~30秒キープ
大胸筋は大きい筋肉なので、手をつく位置を色々と変えながら伸ばすとより効果的です。
低い位置に手をつく際には、指が下になるように手の向きを変えるようにしましょう。
首のストレッチ
毎日の業務ですっかり肩こりや首こりが慢性化してしまっている保育士さん。肩・首回りのこりからくる頭痛に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
その際に必要なのが首回りのストレッチ。固まってしまっている筋肉をしっかり和らげていきましょう。
- 片方の手を反対側の耳にかける
- 首を横に倒す
- 首の横側が伸びているのを感じながら20秒キープ
- そのまま頭を前に倒す
- 首の後ろ側が伸びているのを感じながら20秒キープ
- 今度は頭を後ろに倒す
- 首の前側が伸びているのを感じながら20秒キープ
反らすのは首だけにして、身体ごと動いてしまわないように注意しましょう。
また、首は動かせる範囲が限られています。無理をすると神経を痛めてしまうこともあるので、気持ち良いと思える範囲までに留めておくことが大切です。