さまざまな色が混ざり合い、不思議な模様が生まれる「マーブリング」。さまざまな色が水面で混ざり合い、つくるたびに異なる模様・色合いの作品ができる面白さは、子どもから大人まで多くの人を魅了してきました。
今回は、そんなマーブリングの魅力を紹介するとともに、カンタンにマーブリングを楽しむためのやり方や、きれいな模様をつくるためのコツを紹介していきます。
そもそも「マーブリング」ってどんなもの?
マーブリングとは水よりも比重の軽い絵の具を水面にたらし、水面にできた模様を紙などに写しとる絵画技法のこと。
偶然にできる模様や形、色彩を利用して芸術表現を行う「モダンテクニック」の技法のうちのひとつです。
15世紀ごろにトルコで生まれたとされており、その模様が大理石(marble:マーブル)に似ていたことから「マーブリング」とよばれるようになりました。
マーブリングの2種類のやり方
マーブリングのやり方には、大きく分けて2種類あります。
ひとつめは、水のうえに直接墨や絵の具を落として模様をつくる、日本の墨流しに習ったスタイル。ふたつめは糊などを混ぜて粘性をつけた水溶液の上に絵の具を落として模様をつくる、ヨーロッパのマーブリングに習ったスタイルです。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、確認したうえで予算や子どもの年齢、人数などに合ったやり方を選ぶとよいでしょう。
◆墨流しスタイルのメリット&デメリット
日本の伝統的な墨流しに習い、墨汁や墨流し専用の水溶性顔料絵の具を、水面に落として模様を作ります。
○ メリット
●糊やマーブリング水溶液を使わないため、手軽に取り組める
●水と絵の具のみを使用するため比較的材料が揃えやすい
●専用インクを使えば絵の具を溶くなどの工程を削減できる
●水面に自然とできる模様の変化を楽しめる
●淡い色合いの作品をつくれる
●片付けが楽
× デメリット
●絵の具の操作性が悪く、思いどおりの模様を作りづらい
◆ヨーロッパスタイルのメリット&デメリット
ゴム樹脂の水溶液に、水分に反発する絵の具を垂らして模様を作ります。PVA(ポリビニールアルコール)入りの洗濯のりなどを混ぜて比重を大きくし、絵の具が水に沈みにくくすることでも再現できます。
○ メリット
●発色がよくくっきりとした色合いの作品が作れる
●絵の具の操作性がよく、思いどおりの模様を作りやすい
●絵の具が水底に沈みにくい
●アクリル絵の具と洗濯のりを使えば、安価に材料を揃えられる
●専用インクを使えば、絵の具を溶くなどの工程を削減できる
× デメリット
●専用キットを使う場合には費用が高くなる
●墨流しに比べて準備する工程が多い
●片付けが大変
●作品が乾きにくい
●油絵具や水溶液に有害な物質が含まれている可能性があるため注意が必要
マーブリングのやり方(墨流しスタイル)
ではまず、墨流しのスタイルでマーブリングを行う方法を紹介していきましょう。
・墨汁
・墨流し用の水溶性顔料絵の具
・水
・薄めた中性洗剤
・竹串やつまようじ
・絵筆
・浅いバット
・和紙など吸水性のよい紙/布/木材など
・新聞紙
・ティッシュペーパー
【1】バットに水を張る
あらかじめほこりや油分をきれいに取り除いた、浅いバットに3cmほどの深さで水を張ります。
水を張ったあと新聞紙などをいちど浮かべ、水面のほこりや油分を取り除いておくと墨汁や絵の具が広がりやすくなります。
【2】墨汁や絵の具を水面に広げる
水面にそっと墨汁や絵の具を広げます。絵の具などの量が多すぎると水に沈んでしまうため、筆やスポイトを使うか、フロート紙を使って絵の具が水に浮くようにしましょう。
◆筆を使う場合のやりかた
墨汁や絵の具をつけた筆先を、そっと水面に触れさせて色を広げます。
色を広げた部分に少量の薄めた中性洗剤をつけたつまようじを触れさせると、色が外側に広がっていきます。
この効果を利用すれば、同心円状に色の輪っかをつくるなど、より複雑な模様をつくれます。
◆スポイトを使う場合のやり方
水面に近い場所からスポイトに入れた絵の具を1滴垂らします。
異なる色の絵の具を垂らし、色が全体にいきわたるようにしましょう。
◆フロート紙を使う場合のやり方
あらかじめ作っておいたフロート紙を浮かべ、いちど水に沈めます。
フロート紙の中心にむかって絵の具を垂らし色を広げます。
また違う色の絵の具をフロート紙に落とし、色を広げていきましょう。
画用紙の両面にロウまたは油性クレヨンを塗ります。ロウやクレヨンを塗った場所を直径1cm程度の円形に切り抜けば、カンタンにフロート紙が作れます。
【3】竹串やつまようじでゆっくりと水面をかきまわす
息を吹きかけたり、竹串などでゆっくり水面をかきまわすようにして、模様をつくっていきます。
◆息を吹きかけて模様をつくる場合
あまり強く息を吹きかけないように注意しましょう。難しい場合はストローを使うと調整がしやすくなります。
◆竹串などで水面をかきまわして模様をつくる場合
バットの底まで竹串を入れてかきまわすと、絵の具が沈んでしまいます。水面だけにそっと触れるように、竹串などを動かしましょう。
【4】紙に模様を写しとる
模様ができたら、空気が入らないよう注意しながら紙を水面に置き、模様を写しとります。
時間が経つと絵の具が沈んでいってしまうため、模様を作ったら早めに写し取る作業を行いましょう。
あらかじめ用意しておいたティッシュペーパーの上などにいちど置いて水気を切り、よく乾かします。
水面に残った絵の具は、いらない新聞紙等を浮かべて写しとれば水を交換せずに次のマーブリングが行えます。
もっと楽しくなるアレンジアイデア
そのままでも楽しい墨流しスタイルのマーブリングですが、ひと工夫するとより楽しい作品が作れます。
◆はじき絵を応用したマーブリング
あらかじめクレヨンで絵を描いておいた紙をマーブリングで染めると、絵を描いた部分だけが染まらずに仕上がります。
◆部分染め
模様をつくったあとに、薄めた中性洗剤をつけたつまようじで触れると、その周囲だけ色がはじかれて透明になります。色を中心に寄せて染めると、一部分だけが染まった作品がつくれます。
◆二重染め
いちど染めたマーブリング作品を完全に乾かし、再度染めます。模様と色が重なって、奥深い味わいのある作品に仕上がります。
マーブリングのやり方(ヨーロッパスタイル)
ここからは、ヨーロッパスタイルのマーブリングのやり方を紹介していきます。今回は、アクリル絵の具とPVA洗濯のりを使った方法を紹介します。
・アクリル絵の具
・PVA洗濯のり
・水
・竹串やつまようじ
・くし
・絵筆
・浅いバット
・紙/布/木材など
・新聞紙
・ティッシュペーパー
【1】マーブリング水溶液をつくる
バット全体に広がるようにPVA洗濯のりを入れ、それと同量程度の水を加えてよく混ぜてマーブリング水溶液をつくります。
洗濯のりと水は1:1を目安に、模様をつくりやすい濃度に調節しましょう。
【2】アクリル絵の具を水で溶く
アクリル絵の具を水で溶いて液状にしておきます。
【3】絵の具を水面に広げる
液状にしたアクリル絵の具をマーブリング水溶液のうえに静かに広げます。
◆筆を使う場合のやりかた
絵の具を多めにつけた筆先を、そっと水面に触れさせて色を広げます。
◆スポイトを使う場合のやり方
水面に近い場所からスポイトに入れた絵の具を1滴垂らします。
異なる色の絵の具を垂らし、バット全体に色を広げていきましょう。
【3】竹串やくしなどで模様をつくる
水面を竹串やくしなどで引っかくようにして、模様を作っていきましょう。
◆竹串やつまようじを使う場合
マーブリング水溶液の表面だけに触れるように、そっと竹串やつまようじをあて、ゆっくりと動かして模様をつくります。
◆くしを使う場合のやり方
くしを水面に対してほぼ垂直にあて、ゆっくりと動かします。
【4】紙に模様を写しとる
模様ができたら、空気が入らないよう注意しながら紙を水面に置き、模様を写しとります。
あらかじめ用意しておいたティッシュペーパーの上などにいちど置いて水気を切り、よく乾かします。
水面に残った絵の具は、いらない新聞紙などを浮かべて写しとれば水溶液をそのまま再利用できます。
◆マーブリング専用インクを使う場合
今回はアクリル絵の具とPVA洗濯のりを使用しましたが、マーブリング専用のインク・マーブリング水溶液のセットでも同様に製作を楽しめます。
やり方は水とマーブリング水溶液を1:1の割合で混ぜ合わせてバットに張り、専用インクを落とすだけなので、アクリル絵の具と洗濯のりを使用する方法とほとんど変わりません。
ただし、専用インクの場合には下塗り液(シーラー)を使うことでプラスチックやガラスなどにもマーブリングを施せます。
ねらいを持ってマーブリングに取り組もう!
ここまでマーブリングの基本的なやり方を紹介してきましたが、保育園の活動の一環としてマーブリングを行うには、しっかりとねらいを設定して、子ども達の気づきや成長につなげていく必要があります。
保育所保育指針に沿ってねらいを設定しよう
保育所保育指針の第2章には、子ども達の発達の度合いに沿って、保育のねらいや内容が記されています。
指導計画を作成する際には、これらのねらいにもとづいて目標を設定するとよいでしょう。
乳児保育に関わるねらい
ウ 身近なものと関わり感性が育つ
身近な環境に興味や好奇心をもって関わり、感じたことや考えたことを表現する力の基盤を培う。
(ア) ねらい
① 身の回りのものに親しみ、様々なものに興味や関心をもつ。
② 見る、触れる、探索するなど、身近な環境に自分から関わろうとする。
③ 身体の諸感覚による認識が豊かになり、表情や手足、体の動き等で表現する。
厚生労働省『保育所保育指針』より引用
・さまざまな色が水面で混ざり合う様子を見て色彩に興味をもつ
・色合いや模様が変化する様子を見て楽しむ
◆1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい
オ 表現
感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。
(ア) ねらい
① 身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
② 感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
③ 生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。
厚生労働省『保育所保育指針』より引用
・マーブリングの技法を知り表現することを楽しむ
・自ら色を選ぶなかで色に対する興味・関心を深める
◆3歳以上児の保育に関するねらい
オ 表現
感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。
(ア) ねらい
① いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
② 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
③ 生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。
厚生労働省『保育所保育指針』より引用
・マーブリングによって生まれる色彩や模様の美しさにふれる
・偶然できた模様から想像力をはたらかせて造形活動を楽しむ
編集者より
マーブリングのおもしろさは、なんといっても「2つとして同じ作品は作れないこと」。偶然が生み出す美しい色合いや模様は、きっと子ども達を夢中にさせてくれることでしょう。
新たな表現技法に触れた際の驚き、製作活動のなかで感じた楽しさは、子ども達が大人になっても強く思い出に残るもの。
マーブリングとの出会いが、子ども達の豊かな感性を育むひとつのきっかけとなればよいですね。
★さらにマーブリング作品を活かした製作アイデアはこちら♪
参考文献・サイト
- 厚生労働省『保育所保育指針』(2019/6/26)
- 武蔵野美術大学『造形ファイル/マーブリング』(2019/6/26)
- 楽しい図画工作・美術『墨流し(マーブリング)とは』(2019/6/26)
- Chiik! – 3分で読める知育マガジン -『100均商品でアート体験!マーブリングをやってみよう』(2019/6/26)