保育士として保育園で働いていると、書類や日誌、壁面制作、一斉保育の準備など、日々の仕事量が膨大にあり負担に感じてしまうこともあるでしょう。さらに、なかなか昇給しなかったり、そもそも基本給が低かったりと、仕事量に対して給与面のバランスが取れず、悩むこともあるかもしれません。中には、保育園の転職を検討している方もいるのではないでしょうか。
保育士資格を有している方が転職するなら、資格や自身のスキルを活かして働ける仕事がおすすめです。保育士資格を活かして働ける場所は、保育園以外にも数多くあります。本記事では、保育士資格を活かせる24種類の職業と仕事内容を紹介します。保育士の就職・転職先選びに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
保育士資格を活かせる仕事とは?

保育士資格を活かして働ける職場は保育園だけではありません。主に以下のような施設や企業などで働けます。
- 保育施設
- 保育園
- 認定こども園
- 認可外保育施設
- 企業内保育所
- 院内保育施設
- 病児保育施設 など
- 保育サービス
- 子育て支援センター
- 放課後児童クラブ
- ベビーシッター など
- 福祉施設
- 児童養護施設
- 乳児院
- 障害児入所施設
- 母子生活支援施設 など
- 一般企業
- 保育園運営会社
- 子ども向けの習い事講師
- 子ども向け教材メーカー
- 子ども服の販売員
- 写真館のスタッフ など
保育施設だけではなく、福祉施設や一般企業など、保育士資格を活かせる職場は多くあります。特に、一般企業ではさまざまなジャンルの職業で資格やスキルを活かすことが可能です。
保育園以外で保育士資格を活かせる保育施設
保育施設といえば、真っ先に保育園を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、保育園以外にも保育士資格を活かせる保育施設は多数あります。ここでは、保育士資格を活かして働ける代表的な保育施設を7つ紹介します。
認定こども園
認定こども園は、幼稚園と保育園の両方の機能を併せ持つ、教育・保育を一体的に行う施設です。対象は0~5歳児の子どもで、利用にあたって保護者の就労の有無は問いません。認定こども園は、地域の実情や保護者のニーズ、もともとの施設の機能などによって以下の4種類にわけられます。
幼保連携型 | 幼稚園と保育園両方の機能を併せ持つ単一の施設 |
幼稚園型 | 認可幼稚園に、保育所的な機能を備えた施設 |
保育所型 | 認可保育園に、幼稚園的な機能を備えた施設 |
地方裁量型 | 幼稚園と保育園、いずれの認可もない地域の教育・保育施設が認定こども園として必要な機能を担う施設 |
保育士資格のみで働ける認定こども園もありますが、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方が必要になるケースがあります。例えば、幼保連携型の認定こども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を持つ「保育教諭」という職員の配置が必要です。
ただし、いずれか一方の資格または免許状を有していれば、保育教諭として働ける特例期間が設けられています。この特例期間は2029年度末までです。また、もう一方の免許・資格を取得するための要件を緩和する特例も、同じ期間適用されます。
※参考:文部科学省.「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」.https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339596.htm ,(参照 2025-03-17).
幼稚園
保育園は厚生労働省の管轄ですが、幼稚園は文部科学省の管轄であり、幼稚園教育要領に基づく教育が実施されています。幼稚園は3歳から小学校入学前までの子どもが対象です。
幼稚園は保育施設ではなく教育施設になるため、保育士資格のみでは働けず、幼稚園教諭免許状が必要となります。ただし、保育士資格がある場合には先述の特例制度により、幼稚園教諭免許状の取得に必要な単位数が軽減される措置がとられています。
認可外保育施設
一般的に無認可保育園といわれることもある認可外保育施設は、都道府県知事の認可を受けずに運営する保育施設を指します。設置や運営の基準が認可保育所と比べて緩やかであるため、認可保育所よりも比較的開所しやすいこともあり、待機児童が多い地域などでは高いニーズがあります。
また、施設独自の方針で運営している園も多く、スポーツやアートに力を入れているなど、特色ある保育を行っているケースも多いです。
企業内保育所
企業内保育所は、企業のオフィス内や近隣に設置された保育所のことです。保育所の設置や運営にかかる費用の一部を助成する「企業主導型保育事業」の支援によって、年々施設数が増加しています。また、女性の社会進出も企業内保育所の増加要因の一つと考えられるでしょう。
企業内保育所は、主にその企業で働く従業員の子どもを対象としており、従業員の就労時間に合わせて保育が行われます。少人数保育が主流で、クラス分けのない縦割保育を実施している施設も多いようです。
院内保育施設
院内保育施設は、病院で働く医療従事者のために設置された企業内保育の一種です。病院は24時間体制で稼働しているため、施設によっては24時間保育に対応しているケースもあります。その場合、準夜勤や夜勤などがあり勤務時間が不規則になる可能性がある点に注意が必要です。
ただし、少人数制の保育を行っている施設も多く、業務の負担は比較的軽いといわれています。夜勤がある院内保育施設の場合は、夜勤手当があるなど給与面が日勤だけの保育所よりも好待遇になることも多くあります。
病児保育施設
子どもが病気のときは、保育所に預けられません。その際、自宅での保育が困難な場合に、一時的に子どもを受け入れてくれるのが病児保育施設です。
病児保育施設には「病児対応型・病後児対応型」「体調不良児対応型」「非施設型(訪問型)」の3種類があり、多様な働き方の選択ができます。病児保育においては、通常の保育とは異なり、子どもの体調管理が業務のメインです。
インターナショナルプリスクール
インターナショナルプリスクールは、英語で保育を行う施設の総称です。インターナショナルスクールは母国語が日本語以外の外国籍の子どもや、帰国児童で日本の慣習に慣れていない子どもなどが対象です。一方プリスクールは、英語を母国語としていない日本人の子どもを対象としています。
また、インターナショナルスクールは保育施設としてだけではなく、小学校や中学校まで含まれる場合もあります。ただし、厳密な定義があるわけではなく、インターナショナルプリスクールは義務教育前の英語保育を行う施設という認識でも問題ありません。保育者は英語が必須の場合が多いですが、施設によっては日本人の保育者に英語力を求めない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
保育士資格を活かせる保育サービスの仕事

保育士資格を活用して働けるのは、保育施設だけではありません。資格を活かして保育サービスの職員として働く方法もあります。ここでは、保育士資格を活かせる保育サービスの種類や仕事内容を紹介します。
放課後児童クラブ
放課後児童クラブは、保護者が仕事などで昼間家庭にいない小学生の児童を、放課後や夏休みなどの長期休暇の期間に預かる施設です。放課後児童クラブでは、児童の健康管理や安全確保に配慮し、情緒の安定を支える他、遊びや学習指導、保護者や小学校との連携などを行っています。
働くために必須の資格はないので保育士資格のみでも働けますが、施設ごとに「放課後児童支援員」の資格保持者を2名以上配置しなければならないため、放課後児童支援員の資格もある方が就職・転職には有利でしょう。
子育て支援センター
乳幼児の子どもとその保護者が交流を深める場である子育て支援センターも、保育士資格があると活躍できる職場です。子育て支援センターは、地域子育て支援拠点事業の一つという位置づけであり、市区町村ごとに設置されています。「子育て広場」や「子ども家庭センター」などと呼ばれることもあり、自治体によって名称はさまざまです。
子育て支援センターでは、子育て中の保護者とその子どもの交流や育児相談などの援助、情報提供などが主な業務になります。また、一時的に子どもを預かる「一時保育」も実施しており、通常の保育スキルだけではなく、保護者支援など幅広いスキルが求められます。
ベビーシッター
ベビーシッターは、保育園などの保育施設ではなく、利用者の個人宅などで子どもを預かりお世話をします。無資格でもベビーシッターとして働けますが、個人のベビーシッターを含む認可外の「居宅訪問型保育事業」を目的とする全ての保育従事者は、保育士・看護師の資格か、無資格者の場合は一定の研修の修了が必要です。
また、保育士資格があることで、保護者の安心や信頼にもつながるでしょう。事業所の形態や保護者からの要望によっては、子どもの送迎や家事支援まで担う場合もあります。
家庭的保育事業(保育ママ)
家庭的保育事業とは、主に0歳から2歳までの乳幼児を対象に、自宅などの小規模な保育スペースで子どもを預かります。通称「保育ママ」とも呼ばれています。
保育者一人に対し、預かれるのは3人までとなっており、補助者がいる場合は5人まで預かり可能です。市区町村の認定を受けた方がなることができ、家庭的な雰囲気で一人ひとりに寄り添ったアットホームな保育を行えるのが特徴です。
保育士資格を活かせる福祉施設の仕事
保育士資格は保育の現場だけではなく、福祉業界にも活かせるものが多数あります。どのような福祉施設で保育士が必要とされているのでしょうか。代表的なものを5つ紹介します。
児童館
児童館は18歳未満の子どもが利用できる児童福祉施設です。専門の職員が遊びを通して、子どもの健全育成活動を行っています。
児童館で働くために必要な資格はいくつかありますが、保育士も該当資格に含まれるため、活躍できるでしょう。プレイルームや図書館など設置施設はさまざまで、児童館によっては子育て相談を実施する施設もあります。
乳児院
乳児院は、さまざまな事情で家族と一緒に暮らせない乳幼児を養育するための施設です。
乳児院は通所ではなく入所施設となるため、24時間365日体制で子どもの生活を見守り、里親支援なども行います。また、虐待を受けた子どものケアや児童相談所との連携など業務は多岐にわたり、高度な専門スキルを求められることもあるでしょう。
児童養護施設
児童養護施設は、おおむね18歳までの子どもを対象とした子どもたちの生活の場です。さまざまな家庭の事情で養護が必要な子どもたちのために、24時間365日体制で生活をサポートします。
子どもの年齢にもよりますが、保育士の配置が定められているため、就職の際は保育士資格が役立つでしょう。
障害児入所施設
障害児入所施設は、障害がある子どもを対象に日常生活の支援やレクリエーションなどを行う施設です。障害児入所施設には、発達支援や自立支援などを提供する「福祉型」と、医療の提供まで行う「医療型」の2種類があります。
障害児保育のスキルが求められるものの、子どもと関わる仕事のため、保育士としての知識や経験を活かせる職場です。また、障害児入所施設では保育士の配置基準が設けられており、保育士資格が応募の必須条件となることもあります。
母子生活支援施設
母子生活支援施設は、18歳未満の子どもがいる母子家庭や、それに準ずる事情のある母子を対象とした支援施設です。母子生活支援施設では、母子を保護するだけではなく、家庭生活などの状況に応じて就労や子どもの教育に関する相談援助を行っています。
DVなどにより大きな不安を抱えて入所している母子もいるため、きめ細やかな配慮が求められる場面も多いでしょう。子どもも入所するため、保育士としての経験や知識を活かせる職場だといえます。
保育士資格を活かせるおすすめの一般企業

保育や福祉の施設だけではなく、一般企業においても保育士資格を活かせる職場はさまざまあります。ここでは、保育士資格が有利に働く企業と業務内容を8つ紹介します。
保育施設の運営
保育の現場を知る立場として、保育施設の運営側を担うのも選択肢の一つです。保育施設の運営に保育士資格が必須ではありませんが、人事職や総合職として保育施設の運営に携わる際、園の実態に合わせた業務の改善提案や園と保育士双方の事情をくみ取った橋渡し役など、保育士としての経験を活かせるでしょう。
他にも事務作業や広報、現場でのサポートなど業務は多岐に渡ります。
託児所のスタッフ
託児所とは一般的に、0歳から就学前までの子どもを預かる認可外の保育施設の総称です。託児所は比較的運営の自由度が高く、「夜間保育対応」「土日利用可能」など、保護者の事情やニーズに沿ったサポートを行っています。
設置場所も大型商業施設や美容院、歯科医院などさまざまで、一時預かりの単発利用やベビーホテルとして預けられる場合もあります。
幼児教室など習い事講師
幼児教室などの習い事講師も、保育士としての経験を活かせる職場です。幼児教室では国語や算数など、いわゆるお受験対策を行っているところもあり、子どもの興味を促したり、わかりやすい言葉で説明したりといったスキルが求められます。ピアノや英語、スポーツ、プログラミングなど、得意分野がある方は天職になるかもしれません。
また、お受験特化型の幼児教室の場合は給与が高い傾向があるため、給料アップを希望している方にもおすすめです。
フォトスタジオ(写真館)スタッフ
誕生日や七五三など、子どものイベント時に記念写真を残したいと考える家庭は多くあります。しかし、慣れない場所での写真撮影の場合、子どもが泣いたりぐずったりしてしまい、自然な笑顔を引き出すのに苦戦するケースも少なくありません。
その際、フォトグラファーのサポート役として、泣いている子どもをあやしたり笑顔を引き出したりするスタッフが大活躍します。特に子どもの撮影専門のフォトスタジオでは、保育士の募集を行っている場合も多く、保育の経験やスキルが存分に活かせるでしょう。
テーマパークのスタッフ
子ども向けのテーマパークも、保育士としての経験を活かせる職場の一つです。テーマパークでは、接客や誘導の仕事が主ですが、子ども向けテーマパークの場合は当然子どもに対応する場面が多くあります。
その際に、保育士として培った安全管理や子どもとのコミュニケーションスキルなどが活かされるでしょう。
玩具メーカー
玩具の開発や販売も、保育士の経験が役立ちます。月齢に応じた玩具の提案や、子どもや保護者のニーズに合わせた玩具の考案などの際に、現場での経験が活きてくるでしょう。
おもちゃコンサルタントやおもちゃインストラクターなど、玩具の開発や販売に役立つ資格を追加で取得しておくと、就職活動・転職活動の際に強みになります。
幼児向け教材メーカー
保育園や幼稚園で使う子ども向けの書籍や教材用品、運動用具などの企画開発・製造・販売業務に携わる教材メーカーは、子どもの発達を良く知る人材が求められます。保育士としての勤務経験から、園や子ども、保護者のニーズをくみ取り、発達段階に沿った教材の提案ができるでしょう。
間接的とはいえ、子どもの成長に関わる仕事であるため、保育士ならではの視点が強みとなります。
子ども服や子ども用品の販売
子ども服を取り扱うアパレル企業や、子ども用品のショップで働く方法もあります。ショップでは接客がメインの業務になるため、保育士として培ったコミュニケーションスキルが活かせるでしょう。
また、所属する部署や職種によっては、保育経験を活かして、子どもが着脱しやすい衣服のデザイン提案なども可能です。
保育士資格を活かせる転職先を見つけるコツ
保育士資格を活かせる職場は、やみくもに探して見つかるわけではありません。希望する職種や仕事内容などをある程度絞り、数ある求人の中から自分に合うものを探さなくてはなりません。ここでは、保育士資格を活かせる転職先を見つけるためのポイントやコツを紹介します。
経験やスキルに合う仕事を探す
国家資格である保育士資格を活かせる職場は、先述の通りさまざまあります。せっかく転職するのであれば、自身のスキルや経験を活かし、自分に合った就職先を見つけたいと考える人も多いはずです。
まずは自分の興味関心や得意分野を整理して、条件がマッチする仕事をリストアップしてみましょう。リストアップする職種は保育施設だけにこだわらず、子ども向けの事業を扱う一般企業にまで視野を広げてみることが大切です。具体的な希望がない場合は、本記事で挙げた仕事を参考に、やってみたいと思うものを探してみましょう。
就職・転職先の業務内容をよくリサーチする
自分のスキルや興味関心などを整理して希望がある程度固まったら、応募先の候補として優先順位を付け、仕事内容や働き方などより詳細な情報を収集しましょう。業務内容はもちろん、勤務日数や時間、給与体系なども詳しく調べておくと、後悔しない選択をしやすくなります。
リサーチする際は求人サイトの他、転職サービスも活用すると効率的に仕事探しができるのでおすすめです。
保育士資格を活かせる仕事で自分に合った転職先を探そう
保育士の就職・転職先というと、保育施設しかないと思う方も多いですが、一般企業などにも保育士資格を活かせる仕事は数多くあります。保育園で働くことだけにこだわらず視野を広げて見ると、資格や経験を活かせる仕事や、待遇の良い職場に出会えるチャンスが広がるでしょう。
就職や転職の際、自分に合った職場をどのように探せば良いか悩む方も多いかもしれません。そこでおすすめなのが、保育士・幼稚園教諭専門の転職サービス「保育のお仕事」です。「保育のお仕事」では、専属のキャリアアドバイザーが、あなたの仕事探しをマンツーマンでトータルサポートしてくれます。
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監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。