2015年度より大阪府などの4つの地域で導入された「地域限定保育士」。一体どんなものかをご存じでしょうか?
今回は一般的な保育士資格との違いや施策の課題点など、今さら聞けない「地域限定保育士」のキホンをおさらいしてみましょう!
地域限定保育士とは?
地域限定保育士とは、特定の地域でのみ働くことができる保育士のことを指します。
通常の保育士資格取得者が全国で働くことができるのに対して、地域限定保育士は該当試験に合格した自治体内でのみ保育士として働くことができます。
保育を担う人材不足に対応しようと創設されたもので、2015年度から神奈川県、千葉県、大阪府、沖縄県で試験が実施されました。
国家戦略特区(※)と呼ばれる一部の地域で保育士の試験回数を増やすことで、保育士不足問題を緩和しようというねらいがあります。
地域限定でさまざまな規制を外し、新しい産業や雇用を生み出す政策のことだよ。例えば、外国人の家事代行を地域限定で解禁したりしているよ。2014年3月に東京圏や関西圏など6つの特区が決められたんだよね。
そのほか、宮城県仙台市や新潟県でも地域限定保育士試験が実施されています。
「地域限定保育士」が生まれた理由
地域限定保育士が生まれたのは、慢性的な「保育士不足」を解消するため。
待遇改善はもちろんのこと、そもそもとして保育士資格取得者の母数を増やそう、という目的の下で実施されました。
今は「保育士試験」も年に2回実施されるようになりましたが、平成28年度以前は年に1回しか試験を受けるチャンスがありませんでした。
それを受けて、国会が平成27年に「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律」を成立させたのです。
この法律により、各自治体は「地域限定保育士試験」によって保育人材をより確保しやすくなりました。
普通の保育士資格と何が違うの?
ではこの「地域限定保育士」普通の保育士さんの資格と何が異なるのでしょうか?具体的には下記のような違いがあります。
地域限定保育士と保育士の違い | |
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1 | 地域限定保育士の資格は、通常全国で年1度実施される保育士試験ではなく、国家戦略特区で別途実施される試験に合格することで取得できる。 |
2 | 地域限定保育士資格を取得してから3年間は、都区内でしか保育業務に従事できない。ただし3年経過後は通常の保育士として全国で働くことが可能。 |
地域限定保育士は保育士不足解消につながる?
保育士不足が深刻な東京都に関しては、現状「地域限定保育士」の導入が未定となっています。また、保育士不足の原因は、資格取得機会の少なさだけではなく、給与の低さなども深く関係しています。「地域限定保育士」の導入が、保育士不足問題の根本的な解決につながるとは言い難いでしょう。
政府は「地域限定保育士」の創設だけでなく、保育士の処遇改善や潜在保育士の活用も視野に入れてさまざまな施策を行っています。保育の現場が抱える問題をしっかり把握した上での、多方向からのアプローチが必要と言えそうです。
地域限定保育士試験の問題は?
地域限定保育士試験は、基本的には全国で行われる保育士試験と同様の出題範囲と難易度になります。
通常の保育士試験で合格した科目は、地域限定保育士試験でも免除されます。また、地域限定保育士試験で合格した科目も、次回以降の保育士試験で免除できます(※合格後3年間)。
地域限定保育士試験でいくつかの科目に合格しておき、後の全国の保育士試験に備えるという方法も可能です。
ただし地域限定保育士試験に合格している場合は、通常の保育士試験における科目免除はなくなります。
地域限定保育士試験を足掛けにして全国保育士試験での合格を狙おう、という場合には注意が必要です。
編集者より
保育士試験の複数回実施は以前から要望もあったそう。「地域限定保育士」の導入で、どれほどの保育士さんが誕生するのか今後見守っていきたいところですね。
しかし、試験回数を増やしたからと言って、人材不足の本質的な解決にはなりません。まずは「保育士になりたい」と思えるような、そして長期的に働き続けることができるような、保育士さんの処遇改善を願いたいですね。