「乳児保育」。
乳児期と呼ばれる0~2歳の子ども達を対象とした保育のことで、近年では共働き家庭の増加によってますます需要が高まっているサービスです。
待機児童問題を解消するため、広大な敷地面積を必要とせずに開園することができる「小規模保育施設」も増加傾向にあります。これにより、保育士さんが乳児に接する機会も多くなってきているのではないでしょうか?
今回の記事では乳児保育の基本的な仕事内容やその魅力、やりがいについてご紹介します!
乳児保育とは
乳児保育は先述の通り、「乳児期」にある0~2歳児を対象とした保育のことを指します。
乳児期は人間の一生の中で、もっとも心身の発達がめざましい時期。どのように過ごすかによって、子どものその後の人格形成に大きく影響を及ぼすと言われています。
子どもにとっては何にも代えられない大切な数年間、そこに携わる保育士さんの責任は重大です。だからこそ保育士としてのやりがいが大きい仕事でもあります。
乳児保育では保育士1人に対して0歳児は3人まで、1~2歳児は6人までという配置基準が定められています。
一人ひとりの子どもとじっくり向き合えるように手厚く定められているのは、乳児は誤飲や転落といった事故によって命を落とす危険がある、日常的に目を離せない存在だからでしょう。
どの年代でもヒヤリハットは避けるべきことですが、特に乳児を相手にする場合は細心の注意を払うことが必要になります。
乳児保育ができる園が、爆発的に増えたわけ
3歳未満児に重点を置いて保育を行う小規模保育施設は年々増加傾向にあります。
内閣府が発表している「子ども・子育て支援新制度施行後の動きと見直しの検討について」の参考資料によれば、過去3年間の小規模保育施設数は以下のように変化しています。
2015年4月 | 1,665園 |
2016年4月 | 2,429園 |
2017年4月 | 3,494園 |
小規模保育施設の増加の背景には、2015年に施行された「子ども子育て支援新制度」があります。
それまでは認可園として認められていなかった定員20名以下の小規模保育施設が、この子ども子育て支援新制度によって正式に認可事業として認められるようになったのです。
国や自治体から補助が受けられるようになったこと、また小規模園の特徴として開園準備に時間がかからないことなどが後押しとなり、小規模保育施設は全国各地で次々に設置されるようになりました。
乳児保育の目的
乳児保育の目的は子どもの成長の土台を作ること。
先述の通り、乳児期は人間が一生のうちでもっとも成長する時期とされています。
この時期に乳児へ「安心感」を与えてあげられるかどうかが、子ども達のその後の健全な情緒を育むカギとなります。
安全な環境の中で保育士さんと子どもの間に信頼関係をつくること、それが安心感を与える第一歩です。
自分の気持ちを言葉で伝えることができない乳児とコミュニケーションをとるのは、そう簡単なことではありません。
「今この子はどんな機嫌かな?」
「何が欲しいのかな? どうしてほしいのかな?」
子どものサインの出し方はその子によって違います。普段から一人ひとりの子どもと向き合い、よく観察しながら、子どもの気持ちを適切に理解してあげられるといいですね。
一方で、乳児保育を利用する保護者のサポーターになる、という意識も忘れないようにしましょう。
乳児を保育園に預けていることについて、「子どもが著しい成長を見せる可愛い盛りにそばにいてあげられない」「子どもに寂しいを思いをさせているのでは」と罪悪感を持ってしまう保護者の方も少なくありません。
周囲から「まだ小さい子なのに、外に預けるなんてかわいそう」などと責められ、自分がダメな親なのではないかと思い詰めてしまう方もいます。
乳児保育の内容
2018年から運用されている保育所保育指針では、乳児期の保育について以下の視点を基に行うべきであるとしています。
- 身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」
-
□保育士の愛情豊かな受容の下で、空腹や眠気などの生理的・心理的欲求を満たし、 心地よく生活をする。
□一人ひとりの発育に応じて、ハイハイする・立つ・歩くなど十分に身体を動かす。
□個人差に応じてミルクを与えて離乳を進めていく中で、さまざまな食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しむ。
□一人ひとりの生活のリズムに応じて、安全な環境の下で十分に午睡をする。
□おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。
- 精神的発達に関する視点「身近なものと関わり感性が育つ」
-
□身近な生活用具、玩具や絵本に対する興味や好奇心を持つ。
□生活や遊びの中でさまざまなものに触れ、音や形や色、手触りなどに気付き、感覚の働きを豊かにする。
□保育士と一緒にさまざまな色彩や形のもの、絵本などを見る。
□玩具や身の回りのものをつまむ・掴む・叩く・引っ張るなどして、手や指を使って遊ぶ。
□保育士のあやし遊びに機嫌よく応じたり、歌やリズムに合わせて手足や体を動かして楽しんだりする。
- 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」
-
□保育士から笑顔を向けられたりスキンシップを受けたりすることで、安心感を得る。
□体の動きや表情、発声、喃語等を優しく受け止めてもらい、保育士とのやり取りを楽しむ。
□生活や遊びの中で、自分の身近な人の存在に気付き、親しみの気持ちを表す。
□保育士による語りかけや歌いかけ、発声や喃語への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つ。
□温かく受容的な関わりを通じて、自分を肯定する気持ちが芽生える。
乳児保育で働く保育士さんの主な仕事内容は、離乳食などの食事によって子どもの味覚を形成することや、排泄・排便のトイレトレーニングを行うこと、午睡のケアや室内外での遊びなどが挙げられます。
しかし、それらはただやればいいというものではありません。子どもの笑顔に笑顔で返したり、「お腹いっぱいになったね」「おむつ変えて気持ち良くしようね」などと優しい言葉をかけたり、抱っこの要求になるべく応えてスキンシップをたくさんしたり……。
排泄や食事、睡眠のケアだけではなく、子ども達にとって信頼できる人となり、関わりの中で心を育てていくことが大切です。
くわしい子どもとの接し方については、以下の記事もチェックしてみてくださいね!
乳児保育で働くメリット・デメリット
メリット
乳児保育で働くことについて、以下のような魅力が挙げられます。
・子どもの著しい成長の時期に携われる
・少人数制なので一人ひとりの子どもとじっくり向き合える
・小規模保育の場合、預かり人数が少ないためかアットホームな雰囲気の職場が多い
・0~5歳児がいる園の場合、担当した乳児の卒園を見届けることができる
幼児を含めた大規模園と乳児のみの小規模園、どちらにも良さはあります。
どちらがより自分に合っているのか、求人を見る際には考えてみるといいですね。
デメリット
やりがいのある乳児保育ですが、それだけに難しい一面もあります。
・言葉でのコミュニケーションができず、子どもの求めるものを汲み取るのが難しい
・何でも口に入れてしまう時期なので、誤飲が起こりやすい
・お母さんからもらっていた免疫機能が低下し、病気や感染症のリスクが高まる
乳児と接する際には、細心の注意を払って事故やヒヤリハットの防止に努めましょう。
編集者より
乳児期の過ごし方によって、その子の後の人生が大きく変わる……といっても過言ではありません。
その時期に携わって子ども達の育ちをサポートすることは、きっと保育士として得難い経験に繋がるでしょう。難しく責任の重い仕事だからこそ、大きなやりがいがあると言えますね。
参考文献・サイト
- 保育士くらぶ「乳児保育を知ろう!乳児保育の基本や重要性、課題とは?」(2018/11/06)
- 保育士の資格取得ナビ(2019/03/28)
- ほいくと仕事「【乳児期の子ども】乳児保育の基本知識や求人の探し方を解説!」(2018/12/15)
- 内閣府「子ども・子育て支援新制度施行後の動きと見直しの検討について」(2018/05/28)
- 厚生労働省「保育所保育指針解説」(2018/02)