「お迎えの時間に間に合わない!」
「数時間留守にしなきゃならないのに、子どもの預け先がない……」
そんなママ・パパの『困った』を、顔見知り同士でワンコインから頼り合える「子育てシェア」。この仕組みをつくり、誰もが育児も仕事もやりたいことも思い通りに実現できる社会を目指して取り組んでいるのが、株式会社AsMama(アズママ)です。
今回はこの「子育てシェア」やAsMama認定の支援者であるママサポーターのお仕事を知るべく、埼玉県ふじみ野市で開催されたイベントに参加させていただきました!
子育てシェアとは?
子育てシェアとは、同じ園に通う子どもを持つパパ・ママ同士や顔見知りの友だち同士で、子どもの送り迎えや託児を頼り合うネット上の仕組みのこと。
顔見知り同士で頼り合えるうえ、1時間500~700円というルールがあるので気兼ねなく利用できます。お預かり中に万が一子どもがケガなどをしてしまった時には、保険が適用されるので安心です!
2013年4月リリースしてから、利用登録者数は29,579人・解決済案件数5,922件(2015年8月31日現在)となっています。
子育てシェアの特徴
子育てシェアには、以下のようなポイントがあります。
□日本初、全支援者に最高5,000万円の保険が自動適用
□登録料・手数料一切不要
□利用料は500円~700円/1時間
□支援者に直接支払うシステムで、クレジットカードでも支払えるシステムを日本で初めて実現、決済手数料はAsMama負担。
AsMama親子イベントに参加!
今回取材に訪れたのは、埼玉県のふじみ野市。「AsMama説明会~安心して頼り合える子育て環境をつくろう!~」と称されたイベントには、関心を持った24名ほどの参加者さまと、その子どもたちが集まりました!
▲少々早く会場に到着した編集者。部屋の前後には子どものための遊び場も用意され、おもちゃや絵本が置かれていました。中央の画面にはAsMamaのキャラクター「ウサライオン」が。このキャラクター、本当は放っておかれると寂しくて死んでしまうウサギのようでも、子どものこととなればライオンのたてがみを付けて強く、たくましくなる世のお母さんたちをイメージして作られたのだとか。
いよいよイベントがスタート!
参加者も集まり、会場がほぼ満員になったところで、イベントがスタート!まずはアイスブレイクもかねて、自己紹介タイムが設けられ、参加者それぞれが、子育て環境に抱える悩みや、想いを語ってくれました!
今回参加のママサポーターは3名!
今回、イベント主催者として参加されたママサポーターは、写真上から加藤さん、小嶋さん、鈴木さんの3名。AsMamaのシンボルでもあるおそろいのオレンジTシャツを着て参加されていました。またその他にも、参加者として、応援に駆け付けたママサポーターも!ママサポーター同士のつながりの強さを感じました。
代表の甲田恵子さんも登壇!
AsMamaの生みの親である、株式会社AsMamaの代表取締役、甲田恵子(こうだ けいこ)さんもイベントに参加!
▲お嬢さんの愛珠(あず) ちゃん(10歳)も一生懸命お手伝いに参加していました!
動画でもっとわかりやすく!
AsMama(アズママ)ってそもそもどんな会社?
では、株式会社AsMamaとはどのような会社なのでしょうか。説明会の内容をご紹介していきましょう!
2009年の11月に創業されたAsMamaは、いわゆる「社会課題解決型」の企業です。
「安心して子どもを預けられるなら働きたい、やりたいことがある」「子どもといることを優先しながら社会に出たい、収入がほしい」といった方が多くいる現代。
双方を繋げて助け合うことができれば互いの課題をカバーできるのではないか?そのような頼りあいが全国に広がれば、あらゆる社会問題が解決できるのではないか?……という想いから創業されました。
「AsMama」の社名に込められた意味
最初、代表の甲田さんのお嬢さんのお名前から採用されたのかと思っていた社名。しかそこには別の意味が込められているのだそう。
AsMamaの「As」は英語で~として、~のように、という意味があります。社名に込められた思い「ママとしてパパとしてイキイキ生きられる社会」「ママのようにパパのようになりたいと子どもたちが思える社会」それを自分たち自身で作っていこうという想いが込められています。
創業当時13名でスタートした事業は、今や全国まで活動の範囲を広げ、現在は全国約40名の事務局スタッフとAsMama認定地域子育て支援者ママサポーター400名以上の大きな取り組みとなっています。そして今後は海外での事業展開も視野に入れているとのことです。
AsMamaの事業内容とは
【リアル】なつながりと【ネット】の気兼ねなさ、これらを組み合わせて「頼り合い」のシステムを実現させています。
- 【リアル】
- 企業などとタイアップしながら、地域の人たち同士、またママサポーターと顔見知りになるリアルな交流の場創りを行っています。(年間800回程度)
- 【ネットの仕組み】
- 子育てシェアでは、困ったときに即時的に、複数名に向けて同時にヘルプを出せ、且つ対応できる人からのみ返答があります。
AsMamaは社会福祉法人や認定NPO法人ではなく「株式会社」。しかし、子育てシェアは登録料も保険料も、クレジットカードで謝礼を決済する際の手数料すらかかりません。実はこの「子育てシェア」からは1円の収益も受け取っていないのだそうです。
ではどのようにして経営を成り立たせているのか…というと、企業とタッグを組んで、子育てや生活に役立つ情報を提供できるイベントを開催したり、企業のニーズ調査を行ったりすることで、企業とのWin-Winの関係を作り、収益を得ているのです。
▲熱心に話を聞く参加者さまと、事業内容を説明する加藤さん。
ママサポーターになるには?
近くに頼れる友人がいない時に頼れるのが、AsMama認定のいわば”世話役人”であるママサポーター(通称ママサポ)です!
ママサポーターはAsMamaの提供する託児研修・訓練を受講した、地域の子育て支援の有志者。送迎や託児の支援はもちろん、AsMama主催の地域交流や託児体験イベントを開いたり、AsMamaの活動を地域に広めたりといった活動をしています。
ママサポーターになるには、まずオンラインのオリエンテーションを受講する必要があります。ママサポーターとしての参画意志を提示したうえで、履歴書など必要な書類を提出して面談を行います。
面談に合格したからといって、すぐにママサポーターとして活躍できるわけではありません。各地域で受講できる、実地の心肺蘇生法とAEDの操作法の習得を目的とした救急救命講座や、AsMama流の集団託児を学ぶ集団実地研修、託児の基礎知識を学ぶeラーニング、Skype(ネット通話)を用いた初期研修とビジネスマナー研修などを、2ヶ月間を目安に行い、本登録してからようやく活動できるのです。
安心してその地域で「頼れる」「信頼できる」という人物を育てるために、少々ハードルが高くなっていますが、全国のママサポーターたちは、日々やりがいを持って活動されているそうです。なおAsMamaでは子育てシェアを、子育てにおける「救急車」のようなインフラにすることを目指しており、ママサポーター10,000人の実現を中間目標としているそうです。
ママサポーターの主な活動内容
ママサポーターになると、以下のような活動をメインで行うことになります。
□子育てシェアで知人の送迎託児支援
□月1,000人(目標でありノルマではありません)の対面広報(口コミ活動)
□イベント参加やイベントの広報
※「子育ては地域で頼り合ったほうが良い」ということを地域に伝えることが大きな役割。そのことによって社会の認識を変えていこう!というのが実現すべき目標となっています。
代表の甲田さんの10歳になるお嬢さん、愛珠(あず)ちゃんも、かつて甲田さんが鹿児島へ出張中に自宅のカギを忘れてしまったことがあるそう。その際には子育てシェアを利用して、無事に解決したとのことです。
子育てシェアの良いところのひとつは、子どもも友だちの家に遊びに行った感覚が強く、保護者の方の「知らない人に預ける」罪悪感を軽減できること。さまざまなポイントで「気兼ね」を取り払うための仕組み作りが、子育てシェアでは取り入れられています。今では企業や集合住宅にもこの仕組みが導入されているのだそう。
甲田恵子さんがAsMamaを設立するまで
ここで司会は株式会社AsMamaの代表取締役、甲田さんにバトンタッチ!参加者の緊張をほぐすストレッチをしてから、後半がスタートしました。
▲甲田さんはママサポーターと同じオレンジTシャツを身にまとい、登壇されていました。
AsMamaを立ち上げようと考えた2009年まで、一般企業で働くキャリアウーマンだった甲田さん。2005年にお嬢さんを出産。給与は保育園や夜間保育、緊急ベビーシッターサービスなどに費やしながら、何とか子育てをされていたそうです。「子どもに経済的な理由で我慢をさせることのないように」と考え、とにかく会社の中で偉くなりたい、そう考えていたのだとか。
しかし34歳、転機が訪れます。ある日会議室に従業員が集められ、社長が言った言葉は耳を疑うような内容でした。
―「今月の末で9割の社員には会社を辞めていただきます。」
いわゆるリストラでした。すぐに転職を検討したものの「本当に次の会社ではこんなことにならないのだろうか」という気持ちが入り交じり、すぐには転職ができなかったそうです。
甲田さんはハローワークに通いつつ、女性が男性と同様に学歴やキャリアを積み重ねながらも、出産や子育てで一線から退いてしまうことが大きな「損失」であることに思いを馳せました。
女性の社会進出の流れがある中で、少子高齢化から子どもも産んでもらいたいたいという社会的なニーズもある…その両立の難しさと矛盾…。実際にライフイベントを機に仕事を辞めた方の多くは、正規職員としては戻らないことも多いのが現状です。しかし、そういった方の多くが「なにか社会の役に立ちたい」という方がたくさんいることに、甲田さんは気付かれたそうです。
そんな中で「頼り合う」ことができれば、頼る方も頼られる方も、経済的・精神的に豊かになれるのではないかと考えたのが、子育てシェアの仕組みが生まれるきっかけでした。
「子どもが成長するうちに、見知らぬ人に預けられることに、子ども自身が不安に感じるようになる、大人だって他人といるのは居心地が悪いのに、子どもにとってはなおさら。しかし仕事をしていると近所に知り合いもいない…だから会える機会を作ることが必要と考えたんです。」と甲田さん。
一方で、仲良くなればなるほど、頼るということが難しくなるのもまた事実。そこで考え付いたのがインターネット上の子育てシェア、そしてママサポーターのシステムでした。
▲「地域の人たちを助けたい」人を”見える化”するために生まれたのが、ママサポーターさんのオレンジTシャツ。このコスチュームは救急救命士や消防士と同じ色を意識して作られています。
ママサポーターの役目は子育てシェアの仕組みを、地域に広めて伝えること。しかし認知度が低い地域では怪しまれてしまうことも。そこで企業とのタイアップによって安心感を高め、敷居を下げているそう。
また万が一の事故やケガにも対応できるよう、事業スタートから4年越しで保険制度も実現しました。お預かりの際はもちろん、AsMama主催のイベント開催時、AsMamaで告知をした各地域のママサポーター主催のイベント開催時など、子育てシェアを通じた様々な活動において適用されるので安心です。
その他個人情報の管理や、気兼ねのいらない謝礼の決まりなど、子育てシェアを利用しやすい仕組み、広めやすい仕組みは、甲田さんが熟慮と苦労を重ねに重ね、生み出されたものであることが、お話から伺えました。
AsMamaの理念、ママサポーターの行動指針とは…?
- ◆経営活動理念◆
- ~AsMamaが目指す社会~
【経営理念】
誰もが育児も仕事もやりたいことも思い通りに実現できる社会の仕組みや取り組みを創る。
- ◆ミッション◆
- 子どもたちの未来に、私たちの今に、無限大の可能性と豊かさをもたらすことができる。支援したい人と支援してほしい人が理想的に出会い助け合える仕組みを創る。
- ◆行動指針◆
- ~チームAsMamaでいるための共通ルール~
1.できない理由を考えない。どうすればできるかを考える。
2.関係するすべての人たちと継続的Win-Winの関係を築く。
3.自分のために、家族のために、地域のために、社会のために、未来のために。
4.効率・効果・成果の徹底追及。
5.ひとりひとりが責任感と使命感を持ち、自主的に主体的に積極的に課題に取り組む。
「チームでいる限りは、チーム全体として目指すことが必要。」と甲田さん。顔も見えない、時間管理もしない、子連れでもOK!ただし「子どもが小さいので〇〇できません…」そういったできない理由を考え始めたら、多くの人に子育てシェアの仕組みは伝えられない。だからこそ「どうすればできるか」を考えることをすべてのコミュニケーションの基本にしたい。と話されていました。
AsMamaで働く上では、「会社のために、社長のために」という視点は必要ではありません。
頼ること頼られることによって、自分たちが豊かになるのだから「自分のため」「家族のため」に活動をする視点が大切です。地域が良くなって社会が良くなって、子どもたちが大人になったときに「育児か仕事か」という二択に迷うことがないよう、その未来のために活動を行うのがママサポーターなのです。
AsMamaはボランティアでも、サークル活動でもありません。だからこそ効率・効果・成果の徹底追及にもこだわり、成果によって給与にも反映されるような評価制度が確立されています。
こう聞くと「難しそう」…と感じられる方もいるかもしれません。しかしAsMamaにはママサポーターをサポートする部署もあります。困ったときは相談できるしっかりとした本部体制があるのは安心ですね!
▲会社の体制を丁寧に説明する甲田さん。ママサポーターの発掘と教育・育成、相談業務などのサポートをするMSPJチーム、その他営業チームや情報発信チーム、総務チームなど、互いに連携を取りながら事業を進めているそう。
ちなみにママサポーターになるために必要なスキルは最低限「子育てシェア」が利用できること、そしてそれが利用できるスマートフォンやPC環境があること。研修なども受講料が不要で、必要な金銭的な負担はTシャツ代の2,500円程度とのことです。
「報告・連絡・相談」ができれば、どこでも仕事ができる、勤務時間に厳しい決まりもない、そんな自由な働き方「ママサポーター」。仕事ができるということは土台にしつつ、とてもフレックスな自己実現が子どもと共にいながら可能になっています。
編集者より
今回は話題のAsMamaの取り組みについて、取材をさせていただきましたが、いかがでしたか?核家族化や地域社会の関係性の希薄化のなかでは、子育てはどんどん難しく、頼る場所のないものになりかねません。子育てシェアの取り組みはまだまだ拡大の途中。この記事が、頼り合う子育てを伝える一つのきっかけになればと願っています。
取材に応じてくださいました株式会社AsMama、代表の甲田恵子さまをはじめ、ご協力いただきました多くのママサポーター、イベント参加の皆さまに、心より御礼申し上げます。