幼児教育への関心が高まり、さまざまな教育法・教育機関が注目を集めている昨今。保育士として、どのような幼児教育があるのかは把握しておきたいところですよね。
保育のお仕事レポートでは、これまでさまざまな教育法についてまとめてまいりました。
今回はそうした幼児教育のひとつを行う学校、サドベリースクールについてご紹介いたします。
サドベリースクールとは
サドベリースクールは、米ボストンにある「サドベリー・バレー・スクール※」に共感して、同じ理念で運営している世界中の学校の総称です。
2008年時点で、世界に約40校のサドベリースクールがあります。
幼年期に信頼と責任を与えることによって、「自分が何をしたいのか、どうしてそれをしたいのか、どうすればそれを成し遂げられるのか」を学ぶことができるとするのが、サドベリースクールの教育哲学。
「人は本当にやりたい、必要だと感じた時に一番よく学ぶ」という考えを重んじた、子ども主体の活動を行っています。
- ※サドベリー・バレー・スクールとは?
- 1968年に設立された、米マサチューセッツ州フレイミングハムの私立校です。
「子どもが自分の学びを決めている」「民主的に経営、人事を行っている」ことを原則として、4~19歳の子どもが通っています。
サドベリースクールの特徴
サドベリースクールの主な特徴をご紹介いたします。
授業がない
サドベリースクールでは子どもが学びたいと思ったものに自由に取り組めるよう、授業も時間割も設けていません。つまり、生徒が「自分から動かないと何もできない」環境です。子ども自身が興味を持ったものを、それぞれのペースで学びます。
もちろん、勉強に興味を持った子どものために、テキスト類も用意されています。
保護者やスタッフなどの大人達は子どもの選択に口出しせず、彼ら・彼女らの世界を大切にして、ゆっくりと見守る姿勢を見せることが大切です。
スクールミーティング
サドベリースクールでは、先生と生徒は対等な立場だと考えられています。そのため学校内のルールは大人だけでなく、子どももまじえた話し合いの場で民主的に決めます。
全員が同じ重さの1票を持ち、学校の運営や予算、新入生の入学許可に至るまでスクールミーティングで決定するのです。こうした経験を通じて、子ども達は社会で通じるコミュニケーションスキルを日常的に身に着けていきます。
また、子ども同士で起こりがちなちょっとした意地悪やいじめについても、スクールミーティングとは別の機会ですが話し合うことができます(=司法委員会)。何が嫌だったのか、相手はどう思ったのかをよく話し合い理解することで、子どもの感性がより豊かなものにます。
クラス編成がない
サドベリースクールにはクラス編成がないため、4~19歳という幅広い年代の生徒が一緒に生活することになります。年齢が違えども互いを対等な人間として尊重し。互いに教え合いながら成長していくのです。
さまざまな年齢の相手と接する機会があるのは、社会に出る上でもよい強みになりますね。
どのような教育をするの?
サドベリースクールで子ども達がどのように過ごすのか、一例を見てみましょう。
10:00~11:00 登校
11:15 朝ミーティング(自由参加)
15:05 帰りの準備
15:05~15:20 掃除(学校のルール上、全員参加)
15:20 夕方ミーティング(自由参加)
16:00 完全下校
出典:一般財団法人 東京サドベリースクール「教育の特徴」
このように、生徒達は多くの時間を各自自由に過ごすことになります。昼食もお弁当尾を持ってきたり、キッチンで料理したり、外食に行ったり……子ども自身の予定→お腹の好き具合にあわせて、好きにとっているようです。
サドベリースクールに通うメリット・デメリット
それでは、サドベリースクールに通うことで、子ども達にはどのような影響があるのでしょうか?
- メリット
-
□好奇心が伸びる
□自主性が育まれる
□責任感が生まれる
- デメリット
-
□普通の学校教育で培われる協調性、年功序列を意識できない恐れがある
□「やりたくないこと」にぶつかった経験をしていない
いい大学に入って大企業に就職して……といった、いわゆる世間一般的な「成功」を求める上では、学校の成績を度外視したサドベリースクールのやり方には少々不安が残ると言えます。
しかし「社会の中で自分らしく生きられればいい」とする生き方であれば、サドベリースクールの方針は有用です。
子どもが将来的に、どのような生き方をしていくかが重要となるでしょう。
サドベリースクールの卒業生は何をしているの?
一般財団法人 東京サドベリースクールのホームページによると、卒業生の多くは自分の人生に満足していて、円満に社会生活を送っているようです。
就職先は芸術関係や教育系、マネジメント(経営職・管理職)に進む傾向が強いそう。それは「自分らしさを追求し続け、独自性を発揮できる場を求めた」「ユニークな教育にかかわってきたため、自身も教育に携わろうと思った」「自主的にやりたいことを持ちかけたり、公的な話し合いに参加したりした経験を生かした」ためだと考えられます。
もちろんそうした限られた職種だけでなく、事務職や営業職に就いた卒業生もいます。
日本にあるサドベリースクール
日本にはサドベリースクールが12個あります。それぞれに特色があるので、どの学校が一番適しているのかチェックするのがいいですね。
編集者より
これからますます注目の的となっていく幼児教育。
どのようなものがあるのかしっかり把握して、親御さんからの相談など答えられるようになっておきましょう!
参考文献・サイト
- wikipedia「サドベリースクール」(2017/09/21)
- mamari「サドベリースクールってどんな学校?」(2017/09/21)
- 一般財団法人 東京サドベリースクール(2017/09/21)