「保育園落ちた日本死ね」
……この匿名ブログが世間で大きく取り沙汰されてから、もうすぐ1年が経とうとしています。出産後に復帰しようとしていた母親が、保育園の入園選考に落ちてしまったことへの怒りを綴ったこのブログ。待機児童問題のリアルを衝いたものでした。
今でも多くの保護者が子供を預けられる保育園を探して、選考結果に一喜一憂しています。子どもを預けられなければ働きに出られない、という保護者の方もいらっしゃるのです。生活がかかっているのですから、必死になるのも当然のことですよね。
そんな中でやっと入れることができた保育園に、子どもをしっかり見ていてほしいと思うのはけしてワガママではないはず。
保育士が子ども達と出会うまでに、どれほどの苦労を親御さんがしていたか……配慮してあげることで、保護者理解に一歩近づけるのではないでしょうか。
そこで今回は保護者理解のために、「どういう流れで子どもは保育園に入園するのか?」流れを説明したいと思います。
保育園の入園条件
平成27年4月から始まった「子ども・子育て支援新制度」では、それぞれの家庭が暮らしている市町村の3つの区分の認定(支給認定)に応じて、利用する施設が決まります。
・2号認定:「保育の必要な事由」に該当する家庭で、満3歳以上の子どもの保育を保育所等で希望する場合。利用先は保育所・認定こども園となる
・3号認定:「保育の必要な事由」に該当する家庭で、満3歳未満の子どもの保育を保育所等で希望する場合。利用先は保育所・認定こども園・地域型保育となる
つまり子どもを保育園……特に認可保育園に預ける場合には、まずこの支給認定のうち2号もしくは3号を受ける必要があります。市町村に申請して認定証が交付されると、市町村による調整で利用先が決定します。
なお、幼稚園については希望の園に直接願書を提出して面接や手続きをするため、支給認定申請は幼稚園の入園内定後になります。幼稚園を通して申請する形ですね。
「保育の必要な事由」って?
「保育の必要な事由」とはその名の通り、保護者が子どもを保育園に預ける必要性を裏付ける理由。主に以下のものが挙げられます。
就労 | フルタイムはもちろんパートタイム・夜間・居宅内での労働すべてを含む。 就労が理由となる場合、保育の必要量は以下のように分類される。 「保育標準時間」フルタイムを想定した最長11時間の利用時間 「保育短時間」パートタイムを想定した最長8時間の利用時間 |
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妊娠・出産 | 妊娠中、もしくは出産予定月の前後2ヶ月以内である。 |
保護者の疾病・障がい | 保護者が病気や怪我、心身に障がいを有している。 |
親族の介護・看護 | 病気や心身の障がいを有する親族を、長期にわたって介護をしている。 |
災害復旧 | 震災をはじめとする災害の復旧にあたっている。 |
求職活動 | 仕事を探している最中である。(起業準備を含む) |
就学 | 学校教育法に規定された学校に在学している(職業訓練校での訓練を含む) |
その他、「育児休暇中にすでに保育を利用している子どもがおり、継続利用が必要である」など、上記に準ずる理由であれば認められます。
なお、認可外保育園の場合は保護者が直接保育園に入園申請を出すことになりますので、支給認定を取得する必要はありません。保育園によっては条件が変わることもあるため、情報集めが重要と言えるでしょう。
保育園の主な入園の流れ
それでは、保護者がどのような流れで子どもを保育園に預けるのか、認可保育園のケースを元に見てみましょう。
1.入園申し込み
認可保育園への入園申し込み手続きは、自身が住んでいる市区町村の役場で行います。電話や郵送での申し込みを受け付けていないところでは、保護者の方が直接役所まで足を運ぶことになります。
なお、申込期間は入園希望の月によって異なります。4月入園希望は毎年11月~12月上旬と定まっていますが、5月以降は入園希望月別に受付期間を設けています。自身の市区町村の情報をしっかりチェックすることが大切ですね。
入園申し込みに必要な書類には、以下のようなものがあります。
保育施設利用申込書 | 支給認定申請書と兼ねているケースが多いです。 希望の施設や子どもの状態について詳しく記入します。 ※子どもの調査書については別形式になっている自治体もあるようです |
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家庭状況申告書 | 父母の状況について記入します。 「保育の必要な事由」を具体的に提示する書類です。 |
保護者の状況を証明する書類 | 勤務証明書や在学証明書、母子手帳等、「保育の必要な事由」を証明できるものです。 | 提出書類確認表 | 提出の控えにもなるものです。 | 保育証明書 | 既に幼稚園に通っているきょうだいがいる場合などに提出します。 | 住民課税証明書 | 入園を希望する市区町村に住民登録がない、所得税や住民税が未申告の場合は必要です。 |
参考:足立区「2019年度:保育施設利用申込案内・申請書」世田谷区「入園(転園)の申込み」
そのほか、マイナンバーカードなどの本人確認書類や印鑑も申し込み時に持っておくとよいでしょう。
2.入園審査・選考
支給認定証が交付された後は、役所で申請書の内容確認が行われます。記入漏れや不備があると確認の電話や訪問調査がありますので、不備のないように記入する必要があります。
定員に空きがあれば希望の保育園に入園できますが、希望者が定員を上回る場合は役所で利用調整のための選考が行われます。
入園決定がわかるのは2月下旬~3月中旬です。冒頭で紹介したブログには、2月15日のアップロードで「昨日保育園落ちた」と綴ってあります。つまり選考に落ちてしまったことがわかったのは2月14日ということになりますね。
自治体によって前後することもありますが、おおむね2~3月の間に通知がくると思って間違いないでしょう。
3.面接・健康診断
入園することになる保育園で、面接や健康診断が行われます。
これに通過すれば晴れて入園確定、詳細な連絡がくるのを待つことになります。
抽選の基準は?
保育園入園の選考は、申込書や書類内容に基づいて保育の利用指数(利用基準指数と調整基準指数の合計)を確定し、それが高い方を優先しています。
フルタイム勤務や入院中、災害復旧など、より保育が困難であるほどに高い指数となっているよ。
たとえば母子家庭である場合には+20だけど、在園・卒園しているきょうだいの保育料が滞納されている……などの場合は-20されるホィ。
なお、こうした利用指数が同点になった場合には、所得の低い世帯や子どもを有償で預けている期間の長い世帯が優先されます。
より困っている家庭が優先される、ということです。
編集者より
保護者の方がどのように子どもを保育園に預けているか、どんな思いで自分たちの勤める保育園に辿り着いたか……少しでもそうした保護者の事情に歩み寄ることができたら、保育士としてより適切なケアができるようになると思いませんか?
誰しも、望まれて生まれてきた子どもは可愛いもの。ずっと自分で面倒を見たいし、成長の1ページをくまなく確かめていたいと思うでしょう。しかしそれでは、生活がままならない。だからこそ保護者の方は、涙を飲んで保育士さんに大切な我が子を預けているのです。
その思いに応えられる、信頼に値する保育士を目指していきたいですね。
参考文献・サイト
- mamatenna「「支給認定」ってなに?」(2017/11/20)
- 足立区「入園申込みの流れ」(2017/11/20)
- 幼稚園・保育園・こども園の入園手続きはどうするの?入園までの流れ☆(2017/11/20)