深刻化する待機児童問題。その対策のひとつとして設けられているのが「認定こども園」。あなたはこの「認定こども園」についてどのくらいご存じですか?
近年では認知度こそ上がってきていますが、きちんと説明できる!という方はさほど多くはないのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では「認定こども園」について詳しく解説します。子どもを預ける保護者さんや就職・転職を検討している保育士さんも要チェックです!
◆「保育のお仕事」では認定こども園に実際に取材に伺いました!
認定こども園とは?
認定こども園とは、「幼児教育」と「保育」を一体的に行う施設のこと。幼稚園と保育園を合体させたような施設、というとイメージしやすいですね。
幼稚園は文部科学省・保育所は厚生労働省の管轄ですが、認定こども園は内閣府の管轄。文部科学省も厚生労働省も関わっているため、双方の機能を兼ね備えることが可能となっています。
以下の機能を備えた施設で認定基準を満たしている場合、都道府県から認定を受けることができます。
- 就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する(保護者の労働状況にかかわらず、子どもを受け入れて教育・保育を一体的に行う)
- 地域における子育て支援を行う(すべての家庭を対象に、子育ての相談活動や親子の集いの場を提供する)
認定こども園は待機児童問題の解決や柔軟な保育サービスの提供のため、2006年に認定こども園法によって設置されるようになりました。
地域の状況や保護者のニーズに応じて選べるよう、さまざまなタイプの認定こども園があります。
幼保連携型
幼稚園の機能と保育所の機能を併せ持つ単一の施設。文部科学省・厚生労働省の認可を受けています。
小学校との交流・連携などを図り、子ども達が円滑に小学校へ進めるように考えられています。
幼稚園型
公立・私立の認可幼稚園が、保育所的な役割も担うタイプです。
保育を必要としている子どものために保育時間を確保して預かったり、0歳の子どもから預かったりするなどして認定こども園の機能を果たします。
保育所型
公立・私立の認可保育所が、幼稚園的な役割も担うタイプです。
保育が必要でない子どもなど、就労していない保護者でも受け入れるなどして、認定こども園の機能を果たします。
地方裁量型
その地域の認可を受けていない教育・保育施設が、認定こども園の認定条件を満たし、新たに認定こども園として必要な機能を果たすタイプです。
認定基準
認定こども園の主な認定基準は以下の通りです。
職員資格 | |
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幼保連携型 | 幼稚園教諭免許と保育士資格を併有した保育教諭を配置すること |
その他 | 満3歳以上の担当は両資格の併有が望ましい。満3歳未満の担当は保育士資格が必須 |
学級編成・教育内容 | |
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学級編成 | 満3歳以上の短時間利用児・長時間利用児で共通している4時間程度の利用時間は、学級を編制しなければならない |
教育内容 | 小学校での教育と円滑に接続できることを考慮した上で、幼保連携型認定こども園教育・保育要領を踏まえて教育・保育を実施する 幼稚園型は幼稚園教育要領、保育所型は保育指針に基づくことが前提 |
認定こども園で働くには
認定こども園で働く場合、基本的には「保育士資格」と「幼稚園教諭免許」を併有していることが望ましいです。
特に単一の施設となる「幼保連携型」の認定こども園の場合、両資格の取得が必須となります。
片方の資格しかない場合は「特例制度」で取得しよう!
保育士資格・幼稚園教諭免許のどちらか片方を取得している場合、通常よりも簡易的に資格を取れる「特例制度」があります。
これは大学や専門学校ほかオンラインでの講座を受講し、8単位を取得することで筆記試験を免除することができるというもの。
ぜひ利用して、両資格の併有を目指したいですね。
特例制度を利用できるのは、現在持っている資格の職務で3年かつ4320時間の勤務経験がある人になります。
これは1日6時間・週5日以上の勤務の場合、3年で満たすことができます。
内閣府が発表した「認定こども園に関する状況について(平成30年4月1日時点)」によれば、全国の認定こども園の数は平成23年~平成28年の5年間でおよそ3300園も増加しています。
年々求人数も増加しているので、「認定こども園で働いてみたい!」という方はぜひ一度探してみてはいかがでしょうか。
利用手続きについて
認定こども園の利用手続きの際には、まず「支給認定」を受ける必要があります。
1号認定 | 満3歳以上の小学校就学前の子どもで、学校教育のみを受ける場合 |
2号認定 | 満3歳以上の小学校就学前の子どもで、保育を必要とする場合 |
3号認定 | 満3歳未満の子どもで、保育を必要とする場合 |
参考:神戸市「支給認定」
幼稚園に申し込むときは1号認定、保育所に申し込むときは2.3号認定が必要になりますが、認定こども園の場合はいずれの認定でも利用することができます。子どもの教育・保育について何を希望するのかによって、受ける認定は変わってきます。
利用手続きは以下のような流れになります。1号と2.3号ではそれぞれ異なるため、よく確認しておきましょう。
保育料
認定こども園の保育料は、国の定めた基準に基づいて市町村が決めます。
以下は、国の定めた基準(=上限)です。
- 国の定めた基準(上限)
-
□1号認定:0円~25,700円/月
□2号認定:0円~101,000円/月
□3号認定:0円~104,000円/月
住民税と家族の職、認定区分、子どもの年齢、きょうだいの同時入園――など、さまざまな要素によって保育料は異なってきます。地域によっても設定は変わってくるため、自身の住んでいる自治体に確認するのがもっとも確実です。
ちなみに、従来の幼稚園が認定こども園に移行する場合は、移行前後で保護者の負担に差が出ないよう指導されています。
保育園、幼稚園との違い
認定こども園と保育園、幼稚園との違いをまとめると、主に以下のようになります。
そのほかにも保育時間や保育料などさまざまな違いがありますが、各園によって差がありますので、希望する園がどのようになっているのかは直接問い合わせるのがよいでしょう。
認定こども園に通うメリット・デメリット
メリット
認定こども園に通うメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 異年齢保育に取り組んでいる
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園によっては縦割り保育を行ったり、年長児と低月齢児を交流させたりしているところがあります。
こうした園であれば幼児教育を受けながら、小さい子どもとも交流してよい影響を受けられるでしょう。
- 転園の負担が減る
-
幼稚園で幼児教育を受けさせたい、という家庭の場合、年少児になるまで別の保育所に通わせなければならないというケースがありえます。
しかし、認定こども園であれば保育も幼児教育も両立できるため、転園せずに通い慣れた園で幼児教育を受けさせることが可能です。
- 給食が出る
- 2・3号認定の場合は給食が出ます。園によっては1号認定でも食べられる場合があるので、希望の園がどうなっているか確認しておきましょう。
デメリット
認定こども園に子どもを通わせる際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 認定こども園にも優先順位がある
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認定こども園は誰でも利用できる施設ではありますが、両親が共働きであったり、ひとり親の世帯が優先される傾向にあります。そのため、もしかしたら入園できないこともあるかもしれません。
地域によってどの程度空きがあるのか異なるため、入園前にはしっかり情報収集しておくとよいでしょう。
編集者より
保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要なことから、保育士さんにとっては「職場にするにはちょっとハードルが高いかも……」と思われがちな認定こども園。
もちろんご自身のスキルアップにも繋がりますし、将来のキャリアの選択肢が広がるという点からしても、特例制度を利用して免許を取得するに越したことはありません。
しかし、認定こども園の形態はさまざまですし、中には保育所をメインに幼稚園の教育も行う、といったスタイルの施設もあります。その場合は、担当するクラスにもよりますが保育士免許だけで働くことも可能です。
さまざまな家庭環境の子どもに出会える、保育所にいるときとはまた違った魅力のある認定こども園。ぜひ一度、新たな職場の選択肢として考えてみてはいかがでしょうか?
参考文献・サイト
- 内閣府「認定こども園概要」(2018/07/23)
- ベネッセ教育情報サイト「「認定こども園」ってどんな施設?疑問に丸ごとお答えします!」(2017/07/12)
- 保育士くらぶ「必要な資格は保育士?幼稚園教諭?認定こども園の知っておくべきポイントまとめ」(2018/02/21)
- 内閣府「子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK(平成26年9月改訂版)」(2014/09)