取材・インタビュー

子どもを中心にヒト・モノ・コトが交わるこども園~渋谷東しぜんの国こども園 small alley 訪問レポート~

渋谷東しぜんの国こども園 small alley(スモール・アレー) は、2018年10月に開園したばかりの保育所型認定こども園。その園舎は、渋谷と代官山の間、商業施設やオフィスが立ち並び、人々が行き交う街のなかにあります。

そのコンセプトはsmall alley。そのことばには、園をさまざまな人やものが交わる「小さな路地裏」のような場とし、子ども達が、多くの体験や人とのかかわりを通じて成長できるように……そんな思いが込められています。

「すべてこども中心」という理念を掲げ、渋谷という街で、子どもを中心としたひとつのコミュニティづくりを目指す。今回は、そんな渋谷東しぜんの国こども園 small alley の魅力について、お話をうかがいました。

「一人ひとりが、かけがえのない存在」 ~齋藤紘良理事長が語る「職員を大切に思うということ」~渋谷と代官山の間、まさに都会の真ん中にある、渋谷東しぜんの国こども園 small alley は、2018年10月に開園した保育所型認定...
「完璧じゃなくていい。ひとりの人間であっていい」 ~渋谷東しぜんの国こども園の保育士さんに聞く、いきいきと働くための原動力~渋谷の再開発地区、新旧が融合する街の一角に、2018年10月オープンした「渋谷東しぜんの国こども園 small alley(スモール・ア...
    *シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。
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渋谷東しぜんの国こども園 small alley ってどんなところ?

渋谷東しぜんの国こども園 small alley は、東京都と神奈川県で児童福祉事業を展開する社会福祉法人 東香会が運営する、保育所型認定こども園。

2018年10月にオープンしたばかりの真新しい園舎は、渋谷川沿いの遊歩道の先にある複合施設、「渋谷ブリッジ」のなかにあります。

渋谷東しぜんの国こども園▲渋谷東しぜんの国こども園のガラス張りのエントランス。シンプルながら開放感がある

渋谷東しぜんの国こども園は、1979年開園の町田しぜんの国保育園に続く、ふたつめの「しぜんの国」の保育施設。

町田しぜんの国保育園は、周辺の豊かな自然環境を活かした里山保育が特徴なのに対し、渋谷東しぜんの国こども園は、周辺におしゃれなカフェや商業施設、オフィスなどが立ち並ぶ、まさに「都会のなかの園」

いったい、どのような保育を実践しているのか……まずは、園内を見学させていただきました。

自然の光あふれる、穏やかな園内

渋谷東しぜんの国こども園園内
まず、視界に飛び込んでくるのは、大きく開放的な窓から降り注ぐやわらかな陽射し。緩やかなカーブを描く園舎全体が明るく照らされ、穏やかで心安らぐ空間が広がっていました。

園舎は3階建てで、保育スペースとして使用されているのは2階・3階のフロア。2階には0~2歳児の保育スペースと職員のためのオフィス、3階には3~5歳児の保育スペースとキッチンがあります。

園内の様子▲ラワン材などを使用した、あたたかみのあるインテリア。天井には色とりどりの布が渡され、個性的で変化のある空間づくりがされている
窓辺の植物▲さまざまな植物が葉を広げる光景に、ここが都会の真ん中にあることを忘れてしまいそう

いっぽう、1階にはエントランスのほか、一般の方も利用できるカフェ、small alley cafe(スモール・アレー・カフェ/2019年4月グランドオープン予定)や、情報発信と子育て支援のためのスペース、BUTTER(バター)があります。

カフェ▲1階のこども園エントランスの隣に設けられたカフェ
カフェ店内の様子▲園の関係者以外も利用できるカフェ(2019年4月グランドオープン)。奥には子育て支援施設 BUTTERへ続く扉が設けられている

渋谷全体が「園庭」!?

渋谷東しぜんの国こども園には、園庭がありません。そのため子ども達は、保育士さんといっしょに、さまざまな場所に散歩に出かけるのだそう。

渋谷川▲園のすぐ近くには渋谷川が流れ、遊歩道も整備されている。

園の環境における魅力を教えてもらいました!

そんな園の特徴について、渋谷東しぜんの国こども園で働く二人の保育士さんに、魅力を語っていただきました。

篠原さん

【篠原さん】
僕は3・4歳児を担当しています。なにか目的を持って「移動」することもありますし、目的は定めずに「散歩」することもありますよ。

移動だと「電車に乗りたい!」ということで、恵比寿ガーデンプレイスに電車で行って、屋上でおやつを食べたのが楽しかったですね。

散歩はどんなルートでもおもしろい。草花をじっと観察したり、美味しそうなカレー屋さんを見つけて「こんど食べたいね~」なんて話をしたり……。毎日いろいろな出会いや発見があります。
 

野沢さん

【野沢さん】
子ども達主導で散歩をすることもあるんですよ。私は2歳児担当なのですが、2歳の子でも、一度通ったことのある道はよく覚えています。

「〇〇が見たい!」「こっちに行くと〇〇があるよ!」と提案してくれたり、小さな路地でクモを見つけては「前もいたよー」「浮いてるみたい!」「ここに住んでるのかなぁ」とおしゃべりし合ったり……。みんな、とてもいきいきした姿を見せてくれますね!

「しぜん」という言葉に込められた思い

ここからは、社会福祉法人 東香会の理事長であり、渋谷東しぜんの国こども園の園長も兼任されている、齋藤 紘良(さいとう こうりょう)さんに、園の特徴や魅力について、詳しくお話をうかがいます。

齋藤 紘良さん

――渋谷東しぜんの国こども園は、一園目である町田の保育園とは、かなり環境が異なりますね。なぜ都会の真ん中にあるこの園を「しぜんの国」と名付けたのですか?

「しぜんの国」という名称は、町田の緑豊かな里山の原風景が由来になっています。しかし、「しぜん」というのは、なにも山や森があって、草木が生い茂っている光景だけを示すわけではないと思うんです。

「しぜん」というのは、「おのずと生まれ、出てくるもの」のこと。

それは空気の流れであったり、窓辺から差し込む光であったり、あるいは人の動きであったり、交流であったり……。都会のビルの中でも十分に感じられるものなんです。

それらの「しぜん」を意図的に感じ取ることを大切にしたい。そんな思いから、ここにも「しぜんの国」を園名に付けました。

3つの「しぜんの国」の園それぞれにオリジナリティがあっていい

――世田谷にも「しぜんの国」の保育園がオープンするとうかがいました

2019年4月には、世田谷区上町にも、しぜんの国保育園が開園予定です。

緑豊かな町田、都会の真ん中の渋谷、そして閑静な住宅街のある上町……。3園はそれぞれ異なった環境にあり、それぞれコンセプトも「small village(スモール・ヴィレッジ)」「small alley(スモール・アレー)」「small pond(スモール・ポンド)」と異なっています。

同じ「しぜんの国」という名前ですが、同じコンセプト、同じ取り組みをただ別の場所に展開するのではなく、それぞれにオリジナリティがあっていい。そう考えています。

異なる環境だからこそ、園での取り組みも、集まる子どもも、かかえる悩みも違ってくるはず。

3つの園それぞれに「しぜんの国」という名称を付けたことには、互いに情報共有をして、よい影響を与え合う、そして悩みを共有し合う……そんな「つながり」を作っていきたいという思いも込められているんです。

齋藤 紘良さん▲「同じ名称でも別の園。別の園でも運営主体は同じ。よい影響を与え合いたい」と語る齋藤理事長

「small alley(スモール・アレー)」=小さな路地裏

――small alley(スモール・アレー)というコンセプトには、どのような思いが込められているのですか?

small alley(スモール・アレー)というのは「小さな路地裏」という意味です。さまざまな人・もの・ことが交わる路地をイメージしています。

――路地裏と聞くと、どこか懐かしげなイメージがありますね……

昔は、街のなかでさまざまな人が交わっていました。路地には子ども達の遊ぶ、にぎやかな声が響き、近隣住民が道端で井戸端会議をする様子も、よく見られました。

路地は、いわば地域における社交の場だったんです。

しかし、今では、人と人とが交わるのは、街なかの路地ではなく、より閉鎖的な空間へと変わっていってしまいました。交流する目的を持った者同士は交わることができても、交わるつもりのなかった人が、自然と交流に参加するということが、なくなってしまったんですね。

――あったはずの自然なコミュニケーションの機会が失われてしまったんですね

渋谷東しぜんの国こども園では、そんなコミュニケーションを増やして、積極的にいろいろなヒト・モノ・コトが交わり、共存できるような機会を作っていきたい。そんな思いからsmall alley(スモール・アレー)というコンセプトが生まれました。

園内の様子▲子ども達の遊び場となっている園の廊下。ガムテープで遊んだ跡が、どこか暖かく懐かしい路地の風景を思わせる。

「すべて子ども中心」のひとつのコミュニティを作る

また、「園庭がない」ということも、ひとつの長所にしたいと考えています。

園庭がないからこそ、外に出て路地でさまざまな人と交わっていく、街と積極的にかかわっていく。そうして、子どもを真ん中にして考えられるような人達と、どんどんつながっていきたいと思いますね。

――「すべて子ども中心」という、しぜんの国の基本理念が、そこで生きてくるのですね

しぜんの国が掲げる理念である「すべて子ども中心」は、子どもがいるということを前提に、生活を組み立てていこうという考え方です。

渋谷東しぜんの国こども園は、閉鎖的な保育施設ではなく、「子どもが真ん中におかれた、ひとつのコミュニティ」にしていきたいと思っています。

――保育士ではないけれど、見守り、かかわってくれる……そんな大人がたくさんいれば、子ども達の世界がより広がりますね

保育士さんは、子どもの命を守るという大切な役割を担っていますが、子どもとかかわるのは、なにも保育士さんだけでなくてもいいと思うんです。

いろいろな交流を持ちながら、子どもも、かかわる大人も、ともに生活を楽しんでいければいいなと思いますね。

境界を設けない環境づくり

――園内を見学させていただいて、保育室と廊下との間に、壁や扉がないことが印象的でした

渋谷東しぜんの国こども園では、仕切りをなるべく設けない環境づくりをしています。

たとえば、保育スペースに関して、床の色の薄い部分は、なにかにじっくり取り組みたい時に、閉じこもって集中できるスペースになっています。

いっぽう、色の濃い部分は、いわば室内の「路地」。友だちや保育士さん、他の大人達など、人と交わりたい時に使うスペースとして設けています。

園内の路地▲床の色の濃い部分が園内の「路地」。路地では子ども達の活発なコミュニケーションが生まれる

――壁を設けないことで、子ども達が自然と人と交わることができる……そんな工夫がされているのですね

また、大人と子どもとの間にも、境界をあまり作らないようにしています。

キッチン▲園内のキッチンには、大きな窓とガラス扉が。美味しい給食やおやつが作られる様子が、間近で見られる
職員室▲こちらは職員のためのオフィス。子どもの目線から働く大人達の様子がよく見えるよう、窓の高さも工夫されている

大人と子どものかかわりは、ともすれば「大人が子どもを“監視する”」という関係性になりがちですが、それは適切なありかたとは言えないと思っています。「子どもだって大人を見ているぞ!」と(笑)

だから、大人も子どもも、互いの存在が身近に感じられるような環境づくりをしているんです。

地域とのつながりを大切にしたい

――カフェと子育て支援スペースを併設するのは、とてもめずらしい取り組みですね

2019年3月までは、営業日を限定したプレオープンの状態ですが、2019年の4月にはグランドオープンを予定しています。

園の関係者以外の方にもご利用いただけるので、地域の子育て支援の拠点としての役割はもちろん、子どもの存在をより身近に感じられるような、地域に開かれたコミュニケーションの場として、にぎわっていけばいいなと思いますね。

カフェで淹れてくれたコーヒー▲カフェでは、バリスタが淹れる絶品のコーヒーが味わえる。近隣の手作りお菓子のお店で作ったクッキーを販売するなど、地域とのつながりの拠点にもなっているそう

渋谷東しぜんの国こども園の保育の特徴は?

――日々の保育において、特徴的な取り組みなどはあるのでしょうか

渋谷東しぜんの国こども園では、いくつかの「生活のトーン」を設けています。

【クラス】
年齢別のクラスごとに分かれて、それぞれのプログラムに取り組む
【しぜん谷】
異年齢が交わり、生活を組み立てる
【ワークショップ】
美術部・環境部・身体部などの「部活」に所属する各職員が、得意分野を活かしたプログラムを検討し、大人が子どもに対して、さまざまな気付きや発見の可能性を提示する

子ども同士で話し合う「セッション」

3・4・5歳児クラスからは、「セッション」という時間を設け、子ども同士の話し合いの場を作っています。

――子ども同士の話し合いとは、珍しい取り組みですね!

たとえば、「昨日ケンカがあったけれど、ああいうとき、どうしたらよいと思う?」など議題を投げかけて、保育士がフォローしながら子ども同士話し合ってもらうんです。

子ども達は、それぞれの思いを言語化することで、表現力を高めることができます。月齢や発達の個人差によって、ことばを使いこなす技術やボキャブラリーに差が出てしまいますので、そこは保育士が補ってあげることで、子ども達の思いをフラットな状態にして議論を進めるようにしています。

――なるほど、単なる「言い合い」にならないよう工夫されているのですね

話し合いの場では、相手を言い負かすような強い言葉をたくさん知っている子が有利になってしまいがちです。言葉の強さではなく、思いの強さをもとに議論できるよう、サポートするのが「セッション」における大人の役割なんです。

自分達の生活を自分で組み立てる

「セッション」では、「明日なにをやりたい?」というように、次の日の活動内容を自分達で検討することもあります。

篠原さん
篠原さん
家でアニメーション映画を見てきた男の子が「劇をやりたい!」と提案してくれたのをきっかけに、やってみたいという子を募って、本格的な劇を発表したこともありましたよ。

大人が主体となって生活を組み立てることもあれば、子どもが主体となることもある。それが渋谷東しぜんの国こども園の保育の特徴のひとつですね。

子どもと大人が生活を楽しむための「イベント」

――行事なども定期的に行っているのでしょうか

そうですね。開園からまだ2ヶ月ですが、子ども達の制作物で「こども美術館」を開催したり、遠足に行ったり……。この間はみんなで餅つきをしました!今後も子どもはもちろん、大人も楽しめるようなイベントを行っていきたいですね。

2月には、「small alley Festival(スモール・アレー・フェス)」を開催する予定です。子ども達の発表のほか、保護者やプロのミュージシャンなど、大人にとっても発表の場となるようなイベントにしたいと思っています。

齋藤 紘良さん▲「いっしょに楽しむ」ことを大切にする姿勢からは、子どもと大人との間に垣根を設けず、日々の生活を組み立てていることがうかがえる

開園から2ヶ月、落ち着いた生活の秘訣とは

――10月に開園したばかりとのこと、子ども達がとても落ち着いていることに驚きました

開園から2ヶ月が経ちましたが、その間、保育士さん達がいろいろと工夫してくれたおかげで、子ども達もとても落ち着いて生活ができています。

入園してすぐの時期は、子どもにとっても、周囲の大人にとっても「手探り」の状態で落ち着かないもの。

そんな心の揺らぎが大きい時期は、子どもとの距離感を適度に保ち、一人ひとりの「人との距離の取り方」を尊重することで乗り切りました。

――子ども達それぞれのペースで、園の生活になじむことができたからこそ、今の落ち着いた生活があるのですね

渋谷東しぜんの国こども園▲園には、子どもの生活をやさしく包み込むような、穏やかな時間が流れている
お昼寝▲みんなでスヤスヤお昼寝中。穏やかな表情からは、子ども達の心が満たされていることがうかがえる

「子ども達がいるから、街がおもしろくなる」

――最後に、この渋谷東しぜんの国こども園を、これからどのような園にしていきたいですか?

「渋谷東しぜんの国こども園があるから、この地域の大人の関係性におもしろみが生まれた」「子ども達がいるから、この街がおもしろくなった」と言われるような場所にしたいと思います。

子ども達を中心に、新しい地域のコミュニティづくりができればいいですね。

――これからますます素敵な場所になっていきそうですね。お話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

次回は社会福祉法人 東香会の理事長で、渋谷東しぜんの国こども園の園長も兼任される齋藤 紘良さんに、職員を大切にする職場づくりの工夫について、お話をうかがいます。

※この取材記事の内容は、2018年12月に行った取材に基づき作成しています。

◆「しぜんの国」で働きたい!◆

しぜんの国では、子ども達とともに、いきいきとした生活を作りあげてくれる職員を募集しているとのこと。保育士はもちろん、調理スタッフ、事務員なども募集中!

「すべて子ども中心」の理念に賛同し、「しぜんの国でいっしょに働きたい」と感じた方は、ぜひ社会福祉法人 東香会のホームページもチェックしてみてくださいね!

【しぜんの国採用ページはコチラ】https://sizen-no-kuni.net/recruit/#recruit

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