慢性的な保育士不足への対策として、いま日本各地の自治体では、保育士獲得のためにさまざまな保育士支援を行っています。
「毎月家賃を肩代わりしてくれる」「保育士資格を取るために受験費を出してくれる」などその支援の内容は、地域によってさまざまです。
今回の記事ではエリアを福岡県に絞って、地域に根差した補助制度について考えてみました。
※この記事は、2018年7月時点での情報を元に作成しています。支援制度や補助の最新情報については、各自治体のホームページなどをご確認ください。
福岡県の基本情報
九州の東北端に位置し、本州と九州とを繋ぐ交通の要を担っている福岡県。
九州ではもっとも人口の多い県で、特に県庁所在地である福岡市は九州最大の人口を誇る都市です。福岡市と北九州市、二つの政令指定都市を抱えています。
そんな福岡県の、保育士に関する基本的な情報を整理してみましょう。
福岡県の保育士の求人倍率
厚生労働省「第3回保育士等確保対策検討会 保育士等に関する関係資料」によれば、福岡県の保育士の有効求人倍率は平成27年度10月時点で1.20倍。
保育士の数より求人の数が多い地域ですので、求職者にとっては有利な環境であると言えます。
福岡の待機児童数
福岡県の待機児童の数は、平成30年4月の時点で、自宅近くなど特定の保育所だけを希望する「隠れ待機児童」も含めると1471人に上るといわれています。
例年に比べれば減少していますが、それでもまだまだ保育士ニーズに追いついていないのが現状です。
福岡の保育士の給料は高め
福岡の保育士の給与は、厚生労働省の発表によれば平均月給22.7万円となっています。九州の中でも高い方で、全国的にみてもそう低い金額ではありません。
福岡県が行う就職支援「保育士就職支援資金貸付制度」
福岡県では、保育士の離職防止や潜在保育士の就職支援に向けた「貸付事業」を行っています。
これは「保育士になるため」「保育士として働くため」にかかるお金の一部を、自治体が無利子で貸してくれる制度です。
さらに、保育所等で一定期間働くことによって返済が免除されます。
保育補助者雇上費貸付
保育補助者の雇上げを行う施設・事業者に対して、必要な資金を貸付けます。
詳細 | |
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対象 | 新たに保育補助者を雇用する福岡県内の施設・事業者※ |
限度額 | 年額295万3千円以内 ★貸付申請日の年度初め時点で、未就学児を持つ常勤保育士が2割以上いる場合、2人以上の保育補助者を雇い上げると年額516万8千円以内の貸付となる |
期間 | 勤務開始日から3年間以内 |
返済免除条件 | 保育補助者が貸付を受けた施設に従事し、貸付期間内に保育士資格を取得(貸付期間終了後1年以内に取得が見込まれる場合も可) |
※政令指定都市=福岡市、北九州市を除く
未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付
未就学児を持つママ保育士に対して、保育料の一部を貸付けます。出産・育児で保育業界から離ていたママさんには嬉しい制度ですね。
詳細 | |
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対象 | 福岡県内の保育所等に新たに勤務、もしくは産休・育休から復帰する、未就学児を持つ保育士※ |
限度額 | 利用している保育所等の保育料の半額で、月額2万7千円以内 |
期間 | 勤務開始日から1年間以内 |
返済免除条件 | 県内の保育所等で2年間保育業務に従事 |
※政令指定都市=福岡市、北九州市を除く
就職準備金
潜在保育士の再就職準備に必要な資金を貸付けます。
詳細 | |
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対象 | 保育士資格取得後1年を経過し、かつ保育所等を離職後1年以上経過していて、新たに県内の保育所等に勤務する保育士※ |
限度額 | 40万円以内 |
期間 | 1回のみ |
返済免除条件 | 県内の保育所等で2年間保育業務に従事 |
※政令指定都市=福岡市、北九州市を除く
未就学児を持つ保育士の子どもの預かり支援事業利用料金の一部貸付
未就学児を持ち、子どもを預けるためにベビーシッターなどの預かり支援事業を利用しているママ保育士に対し、保育料の一部を貸付けます。
詳細 | |
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対象 | 福岡県内の保育所等に新たに勤務する、預かり支援事業を利用している未就学児を持つ保育士※ |
限度額 | 利用している保育所等の保育料の半額で、年額12万3千円以内 |
期間 | 勤務開始日から2年間以内 |
返済免除条件 | 県内の保育所等で2年間保育業務に従事 |
※政令指定都市=福岡市、北九州市を除く
福岡はキャリアアップや家賃補助があるところも
さらに、福岡県では現役の保育士さんにも嬉しいさまざまな支援を行っています。
キャリアアップ研修(福岡県)
多様化する保育のニーズに応えるため、近年の保育士にはより高度な専門性が求められるようになってきました。そのためには保育現場において、キャリアパスを見据えた職位の整備・現場を取り仕切るリーダー職員の育成が重要視されています。
そうした状況で、福岡県では厚生労働省が通知した「保育士等キャリアアップ研修の実施について」にのっとり、保育士の能力向上を目指して「福岡県保育士等キャリアアップ研修」を平成30年度から実施する予定です。
キャリアアップ研修の機会を多く確保するため、子どもの保育に関する研修の実績がある非営利団体も対象に、研修機関として指定しています。
https://hoiku-shigoto.com/report/male-nurse-career/0427/
>>平成30年度福岡県保育士等キャリアアップ研修について詳しくはコチラ<<
自治体で就職支援の研修会なども行う
福岡市では「福岡市保育士・保育所支援センター」という無料の職業紹介所が開設されています。
これは保育士さんの専門性を向上させること・質の高い人材を安定的に確保することを目的としている機関で、保育士さんに対してさまざまな支援をしています。
保育士・保育所支援センターの主な業務内容は
- 福岡市内の保育所および地域型保育事業所の求人情報を提供
- 求職者のニーズに合った就職先の提案と就職あっせん
- 求職者と雇用者、双方のニーズ調整
- 保育所等で働く方の相談等
などが挙げられます。
就職希望の資格保持者はもちろん、保育所で働いている保育士さんも利用することが可能です。保育士就職相談員がさまざまな相談に応じてくれます。
市内の保育所等に就職を希望する場合には研修会も行われますので、ぜひチェックしておきましょう。
家賃補助(福岡市)
また、福岡市では市内の保育所等に勤務する正規職員の保育士に対し、1人当たり月1万円の家賃が補助されます。
個人で申請するものではなく、勤務先の施設を通して給与と共に支払われるものですので、よく確認するようにしておきましょう。
詳細はこちら:福岡市「福岡市保育士・保育所支援センター(無料職業紹介所)」
地域限定保育士も今後行われるかも!?
地域限定保育士とは、保育人材の不足に対応するために創設されたもので、特定の地域でのみ働ける保育士のことを指します。
国家戦略特区と呼ばれる一部の地域で保育士の試験回数を増やすことにより、人材不足問題を緩和する狙いがあります。
2015年から神奈川県・千葉県・大阪府・沖縄県で試験が実施され、近年では宮城県・新潟県でも行われるようになりました。
福岡県ではまだ地域限定保育士試験は行われていませんが、福岡県は国家戦略特区の中に含まれているため、今後行われる可能性は十分考えられるでしょう。
ふくおか子育てマイスター
さらに、福岡県では高齢者も子育て支援に参加できる「ふくおか子育てマイスター」制度を平成24年度から実施しています。
これは県内在住の60歳以上の人を対象に、地域の子育てを支える人材を育成するもの。
全7日間・合計30時間に及ぶ「ふくおか子育てマイスター認定研修会」を受講・修了して子育て全般を学ぶことで認定を受けられ、その後は地域の子育てをさまざまな形で支える活動に参加できるようになります。
主に挙げられる支援は以下の通りです。
- 伝える:昔遊びのことや地域の歴史など、人生で培ったさまざまな知恵を伝える
- 寄り添う:妊娠・出産の不安や子どもの悩みを抱えるママたちに寄り添い、悩み相談を受ける
- 育む:保育所での補助や一時預かりなど、子どもと関わる
- 支える:掃除、洗濯・買い物、料理・外出の付き添いなど、子育て家庭の家事を手伝う
保育のお仕事で福岡の保育士求人情報を紹介してもらう
保育士にとっても魅力的な、手厚い支援がたくさんある福岡。
他の都道府県に住む方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、保育士として働く上でさまざまなメリットがあります。
お仕事探しの際は、見知った土地や自分の行動エリアに検索範囲を絞ってしまいがち。ですが、一度視野を広げてみれば、より理想的な職場に出会えるかもしれませんよ!
参考文献・サイト
- 福岡県「保育士就職支援資金貸付制度について」(2017/03/28)
- ふくふくネット「保育士の離職防止や潜在保育士の就職支援に向けた貸付」(2018/07/30)
- 福岡県「福岡県保育士等キャリアアップ研修に係る実施状況について」(2018/07/02)
- 年収ガイド「保育士(保母・保父)の年収」(2018/07/27)
- 西日本新聞「福岡市の待機児童「隠れ」含め1471人 4年ぶり減少も需要拡大に追いつけず」(2018/04/28)
- ふくおか子育てマイスター(2018/07/30)