特集・連載

生涯を通じて役立つ「食べものを選ぶ力」を育む ~うんちから考える食育~

「うんちは健康のバロメーター」とも言われるように、便の観察は体の状態のチェックに、非常に役立ちます。

日々子ども達の排泄をサポートしている保育士さんも、便の状態から「少し調子悪いのかな?」「この頃便秘がちだな……」など、子ども達の健康状態を把握していることでしょう。

「うんちの状態を見ることは、子ども達の食を考えることにもつながる」……そう話してくれたのは、保育のお仕事レポートでもおなじみ、mamaful代表で管理栄養士の隅 弘子(すみ ひろこ)さん。

今回は隅さんに、うんちから考える「食育」について、お話をうかがいました。

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    *シリーズ「しあわせ食育教室」は保育園における食育実践のポイントや、日々の保育に楽しく「食」を取り入れるためのヒントをご紹介する、連載企画です。
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食べものの入り口から出口までは「1本の管」でつながっている

食事中の女の子

「食育教室でうんちの話……?」読者の方のなかには、不思議に思った方もいるかもしれませんね。

しかし、ご存じのとおり、食べものは人間の口から入って、胃や腸を通過しながら、栄養素の吸収、水分の吸収が行われて、最後に残った食べもののカスが便として排出されます。

食べものは入口である口から、出口である肛門まで、長い一本道を通ってくるもの。

だからこそ、うんちの状態を見ることは、食を見直すためにも欠かせないことなのです。

「ちゃんと出る」ってすごいこと

「うんちが毎日きちんと出る」ということは、一見あたりまえのことのように思えますが、それは食べもののカスや体内の老廃物など、不要なものを外に「出す」力がきちんと働いているという証拠。

じつは、とてもすばらしいことです。

普段とは違う形状や色の便が出たということは、体内のどこかがうまく連携していないのかもしれませんし、食べたものや食べ方に問題があったのかもしれません。

ただ「うんちが出た!」で終わらせるのではなく、体の様子を観察し、食を見直すためのツールとして、活用していくとよいですね。

「よいうんち」ってどんなもの?

便を観察するうえで大切なのは、「よいうんち」がどのような便を指すのか、きちんと知っておくことです。

まずは便の状態の違いについて、しっかり把握していきましょう。

うんちチャート

【画像】
一般社団法人日本こども成育協会資料をもとに作成

うんちの形状を見てみよう

理想的な健康な便の形は、するんと出てくるようなバナナ形のうんちです。

感染症にかかることによって、下痢をする場合はありますが、便がゆるい、または下痢状の場合や、逆に固い・コロコロと少ししか出てこないといった場合には、体の状態や食べものの内容、食べ方が原因にもなります。

便の形状 状態・考えられる要因
バナナ形のうんち ・理想的な便の状態。
・消化・吸収・排泄がスムーズに行われている状態
コロコロ・カチカチのうんち (1)食べる量の不足(=便の材料不足)
(2)便を出す力が弱い(=運動不足)
(3)水分不足
(4)食物繊維不足
(5)緊張などの心理的な影響で消化・吸収機能が低下している
半練り・ドロドロのうんち (1)食べ過ぎ・水分の摂りすぎ
(2)冷たい飲みもの・アイスクリームなどによる冷え
(3)刺激物の摂取
(4)緊張などの心理的な影響で消化・吸収機能が低下している

なんらかの病気や、心理的ストレスが原因となっていることもありますが、上の表で太字になっている項目では、食べるものや食べ方が原因となって、便の状態が悪くなっている可能性があります。そのため、食事を見直し改善することが必要です。

うんちの色を見てみよう

つづいて、うんちの色についてチェックしてみましょう。

日常から穀物(ごはんなど)をしっかり食べているお子さんは、便の色が黄色寄りの傾向があります。これは腸内環境が整って、善玉菌が多いことを示しています。

いっぽう、こげ茶っぽい便は、おかずを多めにした食事のバランスによるものかもしれません。脂質が多めな食品またはお肉などをたくさん食べすぎる食事バランスで、便が腸内に溜まってしまっていた場合に見られます。

スムーズな排泄が促されないと、腸内に便が長くとどまることにより、悪臭のもととなるガスもたまりやすく、臭いもきつくなります。

悪玉菌が多く、腸内の状態が悪い結果として、便の色がより濃くなります。

また、鉄分の多いフォローアップミルクを飲んでいる赤ちゃんの場合、それが黒っぽい便のひとつの要因となる場合もあります。

葉物野菜を多く摂取した場合、緑色のうんちなど、食べものの色がうんちの色に影響を与えることもあるよ!
食べものだけでなく、場合によっては血便(赤色便)、タール便(黒色便)、ウイルス感染による乳白色の便など、病気が影響を及ぼしていることもあるホィ。その場合は、かならず適切な医療機関を受診するようにするホィ!

食を見直して健康的なうんちを出そう!

オムツと赤ちゃん
では、ここからは、食べものや食べ方を見直すことで、うんちの状態を改善する方法を、具体的に紹介していきます。

ゆるめのうんちの場合には……

便がゆるい、または下痢気味の場合には、まずは体の消化・吸収機能を正常に戻してあげることが必要です。

そのため、出ている便と同じくらいの柔らかさに調整した食べもので、体調の回復を図っていきましょう。

うんちがゆるくなる原因となりうる食べもの(刺激物や冷たいもの)の過剰な摂取がなかったか、子どもといっしょにチェックし、普段より少しやわらかめなご飯、またはおかゆなど、あたたかく、エネルギーになる食べものを摂ることを優先していきましょう。

離乳食期であれば、食事の固さをひとつ前の段階に調整してあげてもよいでしょう。

うまく会話ができる年齢の子どもであれば、「なんでゆるゆるうんち/ピーピーうんちになっちゃったのかな?」など問いかけを通じて、子ども自身に原因を考えてもらうようにするとよいでしょう。

「もしかして、冷たいジュースをたくさん飲んだり、アイスを食べすぎたりしなかったかな?」など、必要に応じて大人がフォローしてあげるとよいですね。

便秘・硬めのうんちの場合には……

一般的に、便秘には食物繊維をしっかり摂るとよいと言われていますが、いくら便秘によいとされる食材であっても「食べ方」が間違っていれば、便の状態の改善につながらないケースもあります。

食物繊維は、基本的に消化・吸収せず排出されるもの。だからこそ胃腸がきちんと動かなければ、便秘を悪化させてしまうこともあるので、注意が必要です。

しかし、「胃や腸を動きをよくしよう!」と思っても、自分の意思で動かせるものではありません。食べものの入り口から出口までで、唯一自分の意志で動かせる部分は「口」のみです。

噛むというお口まわりの運動がきっかけで、胃や腸が活発に動くようになるので、日ごろから食事の際にはよく噛んで食べる習慣を育むことが大切ですね。

うんちにつぶつぶが混ざるときにも「噛む」ことが大切!

大人でも便にコーンなどがそのまま混ざって出てくることはありませんか?便中に混ざっている食材のつぶつぶが多すぎる場合や、ニンジンなど本来はつぶつぶとして出てこないはずの食材が、うんちにそのまま出てきている場合も、「うまく噛めていない」ことが原因となっていることが多くあります。

この場合にも、きちんと食べものを「噛む」ということを習慣づける支援を、ぜひ行ってあげたいものです。

離乳食期では、月齢をめやすに固さを整えて与えますが、口腔機能の発達には個人差があります。

子どもが食べものを口に入れたあとも、お口を動かす様子をよく観察し、丸のみにしていないか、見守ってあげましょう。

「よく噛む」ことをすすめるのはいつから?

しっかりと食べものを噛むためには、ひととおり乳歯が生えそろっていることが必要です。

そのため、乳歯が生えそろうまでは、あくまで「食べ方の支援」として助言を行い、ある程度歯列が揃ってきたら、実際にうんちを見て「もっとよいうんちを出すためにはモグモグしっかり噛む」ということを意識づけていくとよいでしょう。

上手に「噛む」ことを習慣づけるコツ

まだ言葉が十分に発達していない低年齢児の場合、「よく噛んで食べようね」と言っても、言葉と行動がうまく結びつかず、うまくいかないことも多いでしょう。

そのようなときには、ぜひ、保育士さんや保護者の方が、もぐもぐと「噛む」仕草をして、子どもにたくさん「真似」をさせるシーンを見せてあげてください。

「みて!みて!」と注視させたうえで、「先生/ママ・パパのまねしてカミカミしてね」と伝えることで、言葉だけで伝えるよりもずっと子ども達に伝わりやすくなるでしょう。

また、年齢が上がってきたら「何回噛めるか競争してみよう!」など、ゲームの要素を取り入れて、「口に食べものを溜める」練習をするとよいでしょう。

もしかしたら、大人よりも多く噛むことができる子もいるかもしれませんね。

きちんと噛めていたら「すごいね!〇回も噛めたんだね!」としっかり褒めてあげましょう。

隅弘子さん▲お嬢さんに「ママ、食べるの早くない?」と諭されることもあるという隅さん。子どもに「きちんと噛む習慣」が身に付いていると、大人にもよい影響を与えてくれる

うんちの観察から元気な食生活のPDCAサイクルを回そう

家族

ここまでご紹介してきたように、便の観察をすることは、子どもが自分の体の状態を確認し、食生活を振り返ることに役立ちます。

うんちを観察する→評価する→改善するための行動をする→ふたたび見て評価する
というPDCAサイクルを回して「よいうんち」が出せるようにサポートしていきましょう!

うんちをネガティブに捉えないために……

うんちは、どうしても「汚い」「臭い」「嫌なもの」といったマイナスイメージを持たれてしまいがち。

それは子ども達にも言えることで、とくにトイレトレーニング中などの場合には、うんちに対してネガティブに捉えてしまいがちです。

そのため「うんちが出てスッキリしたね!」「気持ちよかったね」「いいうんちが出たね」といった声掛けで、ネガティブなイメージを払拭するように心がけましょう。

うんちに対してポジティブに捉えられるようにすることで、便の観察や、その状態を保育士や保護者に共有することが、スムーズにできるようになるよ!

うんちの状態を子ども達からうまく聞き出すコツ

親子
オムツをしているうちは、保育士や保護者が便の状態を観察できますが、オムツがはずれたあとは、なかなかその状態を観察できないという場合もあるでしょう。

子ども達からの大切なおたよりである便の状態を知るためには、子ども達からうんちの状態をうまく伝えてもらう必要があります。

【ポイント1】「出た」ときにはママや保育士といっしょに観察してみる

うんちの状態をチェックするには、やはり「見る」ことが一番。大人が実際に見ることで、より的確な評価ができるでしょう。

うんちを見せることに対してマイナスなイメージを抱かないよう、「おうちでうんちが出たときには、ママやパパに見せてね!」と声かけをしたり、うんちをチェックして「すごいね、ちゃんと出たね」「いいうんちが出たね!」と褒めたりするなど、工夫するとよいでしょう。

【ポイント2】うんちの状態を子ども達が伝えやすい表現にする

たとえば、よいうんちは「バナナうんち」、固いうんちは「石のうんち」、コロコロとしたうんちは「ウサギさんのうんち」、軟便は「ゆるゆるうんち」、下痢は「ピーピーうんち」など、子どもにとってわかりやすいように分類し、「今日はどんなうんちだった?」と聞くのもよいでしょう。

あわせて、数を数えられるお子さんであれば、「何個出た?」と聞くことで、子どもからの情報共有で、ある程度便の様子がわかるはずです。

【ポイント3】絵本を活用する

うんちの状態を子ども達に伝え、共有してもらうために、ふだん活用させていただいている御本を紹介させていただきます。

村上 八千世さん作・せべ まさゆきさん絵の絵本『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』(ほるぷ出版)です。

この絵本では、うんちの状態が「うんぴ・うんにょ・うんち・うんご」という、子ども達にとって理解しやすく、言いやすい言葉で表現されるとともに、絵によってその状態がわかるようになっています。

この絵本を通じて、「きょうはうんちだった?それともうんにょだった?」などとコミュニケーションを取るのもよいでしょう。

保育園と家庭との情報共有が大切

保育士と子ども
日中の多くの時間を保育園で過ごす園児達。排便を園で済ませてしまうため、平日は家庭でうんちをすることが少ないというケースもあるでしょう。

いっぽう、園ではせずに必ず帰宅後に排便する、という子もいるかもしれません。

そこで重要なのが、保育士さんと家庭との情報共有です。

【園と家庭とで共有したい情報】
  • 便の有無と回数
  • 便の形状と色
  • においなど異常がなかったか
  • 保育園あるいは家庭で実践していること
  • 簡単にうんちの形や色がチェックできるよう、チェックシートを作っておくと便利です。チェックシートの記入なら、パパにもお願いできる育児ですね。

    うんちチェックシート

    保育園からは、今回紹介した「よいうんち」の定義や便に異常があったときの対処法などを発信しましょう。おたよりを通じて保護者に伝えたり、園で取り組んでいることを共有したりすることで、おうちでも取り組んでもらえるきっかけが作れるのではないでしょうか?

    保育園と家庭とで連携を取りながら、子ども達の食生活を整え、「よいうんち」が出せるように働きかけていくことが子どもの元気を支える支援となるでしょう。

    便の観察が「自分で食べものを選ぶ力」を育む

    おにぎりを食べる子ども
    うんちを観察し、自分自身の食を見直すことは、子ども達の「自ら食べものを選ぶ力」を育みます。

    たとえば、

    冷たいものばかり食べて、おなかが痛くなり、便がゆるくなってしまった

    →「うんちがゆるめだったから、冷たいものは控えよう」

    好き嫌いをして大好きなハンバーグばかり食べていたら、くさいうんちが出た、便秘になってしまった……

    →「うんちがしっかり出るように、野菜もしっかり食べよう」

    というように、経験を通じて自ら食べものを考えることができるようになっていきます。

    実際に下痢などで「おながが痛い」という経験をすることは、子どもにとってもつらいもの。「また嫌な思いをするのは嫌だな」と感じることで、次の食を考えることができるようになるのです。

    経験から得られた「自ら食べものを選ぶ力」は、子ども達の生涯にわたって役立っていくことでしょう。

    編集者より

    ドーナツを食べる子
    今回ご紹介したように、便の観察は子どもの体調チェックはもちろん、食べものや食べ方を見直し「自ら食べものを選択する力」を養うことにつながります。

    これこそ、まさに、食べる力=生きる力を身につけるという「食育」の本質なのではないでしょうか。

    「食育」と聞くと、なにか特別なことをしなくてはいけないように感じてしまいがちですが、便の観察という日常的で身近な部分から取り組むこともできるのです。

    保護者のなかには、うんちをネガティブなものとして捉え、子どもとの話題では避けてきたという方も多いかもしれません。

    また、保育園で排便を済ませてしまうことが多いため、子どものうんちを見る機会そのものが少ないという方もいることでしょう。

    日中の多くの時間を子ども達とともに過ごす保育士さんには、ぜひ保護者と情報を共有し、連携をとりながら、家庭と保育園、双方で食育に取り組んでいただければと思います。

    今回の記事が、保育園と家庭の双方で、うんちの大切さを見直し、子ども達の食を見直すきっかけになることを願っています。

    隅 弘子(すみ ひろこ)さんについて

    隅弘子さん

    ◆隅 弘子(すみ ひろこ)◆
    ・管理栄養士/こども成育インストラクター食専科ディレクター
    ・母子栄養指導士

    相模女子大学学芸学部食物学科管理栄養士専攻を卒業後、集団給食・FC展開支援・外食産業、グルメ探訪などの業務に携わる。30才を前に、より食のことを本質的に学びたいと本格的に学び直す。

    その後、自身の妊娠・出産を機に「子育てを自己のキャリアとして積むことができる」と確信。2013年より、「ママの笑顔がいっぱい(ful)な世の中になりますように」という思いから、mamaful(ママフル)を立ち上げる。

    mamaful▲mamaful(ママフル)ウェブサイトはこちら!

    現在はフリーランスの管理栄養士として、セミナーでの講演や、子育て支援施設での栄養相談を担当するほか、母と子の食事に関して、アドバイスできる人材を養成するための講座において、講師を務めている。

    【主な講座】
    一般社団法人 日本こども成育協会
    ・こども成育インストラクター
    一般社団法人 母子栄養協会
    ・妊産婦食アドバイザー
    ・幼児食アドバイザー
    ・学童食アドバイザー 他

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