宿泊場所をはじめ準備も決まり、保護者と子ども達への対応ができたら、あと決めるのは当日プログラムです!
「お泊まり保育」特集の第3回は、定番からユニークな取り組みまで全15種類のアクティビティをご紹介します。
●第1回「準備編」はこちら
●第2回「保護者と子どもの不安解消編」はこちら
バスレクで移動から気分を盛り上げよう!
園外で行う場合は、バスに乗って移動することが多いでしょう。
楽しいバスレクはお泊まり保育の導入になるだけでなく、子ども達がレクに夢中になれば乗り物酔いの予防にもつながります。
おなじみのクイズでもお出かけ先にまつわるものを題材にすればどんどんと気分も盛り上がります。
バスレクのアイデアや移動中の言葉かけの詳細はこちらをご参考に
https://hoiku-shigoto.com/report/archives/20503/
準備でしっかり乗り物酔い対策
まず乗車前に、乗り物の窓を空けて空気を入れ替えておくことが必要です。
その後、冷房を入れて車内が暑くなりすぎないように調節していきましょう。
嘔吐処理用のグッズはバケツなどにまとめ、予備も含めて2セット以上用意しておきましょう。
【嘔吐処理用グッズの例】
☑ビニール袋
☑ティッシュ
☑マスク
☑ビニール手袋
☑袖付きエプロン
☑雑巾
☑ペットボトルの水
☑コップ
☑着替え・タオル
☑消毒液+消毒容器
子どもが戻してしまった場合は、窓を開けて臭いがこもらないようにします。
嘔吐処理に使用した物は処理後はぞうきんなども全て捨てるようにしましょう。
【定番のアクティビティ】迷ったらこれ!
まず、プログラム作りで意識したいのは、連続性。
どのような意図をもってそのアクティビティをするのか?
どんなプログラム配置にすればその意図は達成されるのか?
このような意識でプログラムを組むことが望ましいです。
1.宝探し
園内でも園外でも楽しめるスタンダードですが奥の深いアクティビティです。
ストーリー性をもたせ、物語の世界観を出す装飾や宝物を準備できると子ども達もなお引き込まれることでしょう。
宝の地図、虫めがね、ライトなどの小道具を用意すると宝探しの雰囲気が出せます。
みんなで仲良く探しにいっても、グループ対抗で見つけた宝の数を競っても楽しめます。
人気の謎解き要素やクイズ、肝試しの要素をプラスしても良いですね。
2.オリエンテーリング
ポイントを設けて、順路に沿って課題を解いていくアクティビティです。
お題の例は「お友達とハイタッチ」「丘でみんなと『ヤッホー』と言う」「草笛を吹いてみよう」など人数や場所にあわせて工夫してみてください。
矢印や足跡をつけると、追いかけていくワクワク感が高まります。
夜の散策に取り入れても良いでしょう。
応用編でビンゴ形式にしても◎
また、応用型として「3×3」のマス目に見つけてほしい物(「すてきなおはな」、「きれいなちょうちょ」など)の絵や文字を描き、見つけられたらチェックをしていくビンゴ形式にしても盛り上がります。
目に見えるものだけでなく「セミのなきごえ」、「つるつるのいし」など五感を使って探す要素を入れるのがポイントです。
3.スイカ割り
夏なら旬のスイカをいただきましょう。
屋外で行う場合は地面や周囲に危ない物がないかよく確認してから、実施してくださいね。
目隠しをして、棒を持ったらスタート!
4歳頃から右や左が分かるようになります。
周りのお友達が「まっすぐ進んで!」「あと1歩右だよ」などとかけ声で応援できると良いですね。
4.屋外調理に挑戦
屋外で調理するのも「お泊まり保育」ならではの経験です。
子ども達の力で準備から後片付けまでしっかりすれば、おにいさん・おねえさんになった気分です。
調理内容では以下のようなメニューが実施されています。
・かき氷
・アイスキャンデー
・カレー
・ピザ
・バター など……
夏であれば冷たい食品は屋外活動で火照った体をクールダウンさせる効果もあります。
しっかり手洗い、消毒をして、生ものの使用は避けるなど食中毒には注意しましょう。
また、アレルギーをもっている子どもがいる場合は、栄養士さんなどとよく相談して材料なども選び、ミスが起こらないようにしましょう。
5.キャンプファイヤー
炎の温かさや明るさ、そしてみんなで火を囲む楽しさを味わいましょう。
雨天や室内で行う場合はキャンドルで代替も可能です。
お泊まり保育の目玉になるアクティビティです。
歌や踊りで盛り上がり、神様が出てくる演出をする園もあるようです。
♪燃えろよ燃えろ
♪キャンプだホィ
♪やまびこごっこ
♪マイムマイム
♪パプリカ(その時の流行の歌)
【山・森編】自然との出会いが子どもの成長に
活動場所が「山や森」の場合は、自然を思い切り楽しみましょう!
都会の園であればなかなか出会うことができない風景や生き物・植物との出会いが期待できそうですね。
体質によっては酷く腫れる場合があるので、虫刺されにも注意しましょう。詳しくはこちらから。
https://hoiku-shigoto.com/report/archives/16445/
市販の虫よけスプレーを子どもにも使用していいかは、事前に保護者の方に確認しておくことが望ましいです。
6.虫捕り
10の姿でも「自然との関わり・生命尊重」は挙げられています。自然と楽しく触れあいながら、命の大切さや循環にも子ども達が気づく機会となるでしょう。
採った生き物を持ち帰って良いかはあらかじめ施設や管理者に確認しておきましょう。
持ち帰りNGの場合は「観察したらおうちに返してあげようね」といった声掛けを子ども達にしておくことも忘れずに。
・熟したバナナ
・リンゴ
・はちみつ
・黒砂糖
・日本酒、焼酎
・ヨーグルト
・酢 など……
これらを混ぜてガーゼにしみこませたものをストッキングに入れて木に結べば虫捕りトラップの完成!
材料をそれぞれ別のお皿に入れて、「どれが一番人気かな?」と比較実験のようにしても面白そうです。
ここで挙げた食材以外にも、子ども達からアイデアを募るのも良いですね。
1日目の昼に仕掛けて翌日の朝にお散歩をかねて確認しに行く流れにすると、次の日への楽しみができてホームシック対策にもなります。
7.お面作り
葉っぱや花を摘んでオリジナルのお面を作りましょう。
園の近くでは見つからないような大きな葉っぱが見つかるかもしれませんね。
手触り、匂い、色や形など五感をフルに使って植物とのふれあいを楽しめます。
ヤツデの葉っぱは形も独特で、ちぎってみたらウサギのようにもなりますよ。
テープやホチキス、絵の具などを用意するとより想像も広がります。
完成したら、みんなでハイチーズ!
紅葉シーズンの遠足でも楽しめるアクティビティです。
8.自然の物を使ってお土産づくり
虫の抜け殻や木の実、きれいな貝殻など拾ったものをお土産に持ち帰りましょう。
標本のようで、子ども達は科学者になった気分を味わえるかも?
帰った後に調べ学習につながるかもしれません。
「荷物がかさばる……」という場合は、スケッチブックなどにセロテープやボンドで植物を貼っていく方法もあります。
また、フロッタージュ(こすりだし)という技法を使えば、葉っぱや木の幹の模様を写しとることもできますね。
でこぼこした物の上に薄い紙を載せ、画材(色鉛筆やクレヨン)で塗ってその模様を写し取る技法。自然物だけでなく、コインやマンホールの蓋といった人工物を対象としても面白いです。
【川・海の水辺編】園では味わえない水体験
川や海、自然の中の水辺はひんやり冷たく、流れや波があるのが普段の水遊びとは一味違って、子ども達にとってはまたとない経験になります。
9.川で葉っぱの舟レース
葉っぱを流すだけでも面白いですが、割いたり折り込んだりして舟の形にしてレースをしても楽しくなります。
【カンタンな舟の作り方】
わかりやすいように葉っぱの代わりに色画用紙を用いて説明します
ようじなどを用いて帆を作ったり様々な形へと展開もできます。
ちなみに、笹舟遊びは鎌倉時代から親しまれてきた遊びで和服のモチーフにもなっているそうですよ。
また、舟作りだけでなく、川の流れも大事な遊びの要素です。
「石を積んで流れを変えてみたら?」「川の手前側と奥側、どちらが舟が流れるかな?」と問いかけをしてみたり、子ども達が自ら流れの不思議に気づいたらその発見をほめ、より関心を伸ばせるといいですね。
10.イカダあそび
こちらも自然の中で波や流れを身体全体で感じ、プカプカとする感覚を楽しむアクティビティです。
牛乳パックやペットボトルを布製ガムテープで繋げれば水に浮き、子どもが何人か乗ることができます。
大量の材料が必要となり、完成後も安全性のチェック(プールなどで試してみましょう)をするので、早い時期から準備を始めましょう。
牛乳パックなら28本以上を目安に準備すると十分な大きさになります。
「うまくバランスとれるかな?」と先生が声掛けしてイカダを揺らしても盛り上がります。
準備は少し大変ですが、子ども達が大興奮するアクティビティです。
乗っていた子どもがイカダから落ち、岩にぶつかり怪我をするようなことがないように遊ぶ際は広く流れの穏やかな場所で、必ず手の届く範囲に保育者がいるようにしてください。
リスクが伴う水辺の安全対策は万全に
川や海など水辺での遊びは子どもの貴重な成長機会である一方で、それがリスクにもなります。
幼稚園のお泊まり会で、川遊び中に起きた死亡事故をご紹介します。
愛媛県・幼稚園で起きた事故事例
2012年7月、幼稚園年長クラスの宿泊保育(園外)。晴れた午後に川遊びを実行。川の水が急に増水し、園児が流される事故が起こった。流された園児2名は怪我を負い、1名は死亡した。
裁判において園側は「晴れていて増水の予想ができたなった」と主張した。しかしライフジャケットの用意不足といった安全対策の欠如や、水の濁りに気づかなかった注意不足などを理由に園長・主任教諭らが求刑された。
(参考)産経WEST
その場所は20年にわたり園外保育で慣れ親しんでいたといいますが、自然を相手に油断は禁物です。
天候や環境ををしっかり確認する、活動範囲をテープで囲う、ライフジャケットを人数分用意するなど十分な備えをして、事故がないように楽しみましょう。
川遊びのチェックポイントは水辺の安全対策をする団体のパンフレットなどが役立ちます。
遊びに出かける前にぜひ一読を!
【保育所内(屋内)編】「特別感」の演出が肝心
保育所内でお泊まりでも、いつもの保育とはちょっぴり違った「特別感」が出せると良いですね。
この「特別感」を出すためには、普段使わない道具を使ってみたり、環境(照明や音)に変化を出すことがポイントです。
たとえば、夜に「ゆったりしつつアニメ映画を見る」という場合でも、「ホールでスクリーンと映写機を使って上映する」というだけで、特別感がでますね。
定番は先生たちによる出し物(劇やマジックなど)をしたり、夏を楽しむ縁日ごっこをする園もあるようです。
縁日アイデアはこちらから
また、雨天時の代替プログラムとしてもおすすめです。
11.大きなバルーンレク
日常的な保育ではなかなかお目にかかれないおもちゃ「風船」。
たとえば、ホールなどで「風船をうちわに乗せて競争」はスタンダードですがバランスをとるのが難しく、応援側も力が入ります。
さらに大きなバルーンを使えば、子ども達も一層テンションが上がるでしょう。
2グループに分かれて列になり、風船をゴールまで運ぶといったレースもできますね。
風船をスイカ柄に装飾したり、部屋全体をバルーンで飾ったりすると一味違った楽しさが出せます。
12.シルエットクイズ
特に夜のアクティビティとして盛り上がるのが「影」を使ったお楽しみです。
暗くした空間で、スクリーン(または白い布)の後ろに物を置いたり、先生が様々な格好をして立ってみたりして、何の形か子ども達に当ててもらいます。
問いかけや会話を通して、子どもの想像力を育みます。
ライトの色もカラーセロハンを使って変えてみても幻想的な雰囲気が出ますね。
暗闇に恐怖を感じる子どもには近くにいて声掛けをするなどの配慮をしましょう。
応用編は影絵のシアターです。
劇団を招いて演じてもらっても、子ども達は夢中になりますよ。
【ユニークな取り組み】年長クラスにおすすめしたい保育の集大成⁉
毎年「お泊まり保育」を順調に開催でき、「子ども達のために、もう一歩踏み込んだ企画をしたい……」と考えている先生向けに、ベテランの先生も納得の実践例を集めました!
言葉の理解や表現が豊かになり、他者との交流もどんどんとひろげていきたい年長クラスにおすすめのアクティビティです。
企画の意図も含め参考にしてみてください。
13.歌作り・振り付け
子ども達と一緒にオリジナルソングやダンスを作りましょう!
こちらはお泊まり保育の1か月程前からの長期的な準備が必要です。
★認定こども園での事例★
音楽が得意な先生が曲を作り、それに合わせて子ども達が宿泊先のことを調べつつ、歌を作り上げました。子ども達の意見で手拍子やジャンプなどの振り付けも加わっていきました。
できた歌とダンスは練習を重ね、お泊まり1日目「キャンプファイヤー」の時間にお披露目となりました。先生達はギターやウクレレを持ってきて伴奏をしました。
言葉を考える(作詞)がまだ難しいようであれば単語カードを用意して組み合わせてみたり、0から音楽を作るのが大変であれば既存の曲にふりつけを考えたり替え歌にしてみたりと、クラスの様子・子ども達の得意なことに合わせてアレンジしてみてください。
ことばや音楽に慣れ親しみ、クラスの団結力も高まります。
14.外部の人達との交流
関係園(同じ法人の系列園や提携園)や、近隣の小中高校そして大学のサークルなどと交流して、さまざまな人との交流を楽しみます。
★認可保育園での事例★
古くから付き合いのある交流園と合同で開催し、少し遠くまでお出かけして雪遊びなどを楽しみました。
仲間を増やしつつ、自分もしっかり自立していくこと。そして園の保育方針も踏まえながら、たくさんの交流から自分を知り、自分を信じる力を養い、自信をもって小学校へ進めるように考えていました。
この他にも、川遊びの際に近隣の高校生と一緒に川魚を捕ったり、小学生と一緒にピザづくりをしたりする園もあるようです。
大学のサークルはこのようなサイトから探すこともできます。障害児の支援をしている団体や環境やプログラミングを子ども達に向けて教えているサークルなど特色も様々です。
人と地域の資源を組み合わせながら「地域に根ざした開かれた保育」をしたいと考えている園にオススメです。
子ども達にとってもヨコのつながりだけでなくタテやナナメの豊かな人間関係構築の機会を与えることができ、将来を思い描くステップになりそうです。
15.絵葉書を書く
10の姿で「数量・図形、文字等への関心・感覚」が明示されたことにより、小学校への準備段階として「文字に親しむ」ことがより意識されるようになったのではないでしょうか。
4月から学んできた文字がどれくらいかけるようになったか、自分の思いを表現できるかといった振り返りポイントとしても、「絵葉書(お手紙)を書く」というアクテビティは適していますね。
★幼稚園の事例★
1日目の終わりに、子ども達に楽しかったことなどを自分に宛てる絵葉書として描いてもらいました。翌日には朝のお散歩をかねて近くのポストまで手紙を出しにいきます。
連絡はSNSでのやり取りがメインになった現在、「子ども達がハガキを書く、ポストに手紙を出す、郵便受けに手紙が届く」という体験は貴重なものになりそうです。
また、白いクレヨンで書いて「はじき絵」にしたり、フルーツや野菜の汁を使って「あぶり出し」にしたりと暗号風にすると、届いた後の楽しみが増えますよ。
お泊まりの終わりは「感謝」と「喜びを分かち合う」
お泊まり会のフィナーレには「解団式」や宿泊施設からの「退村式」を行うと、子ども達の中でも「ひと区切り」となりそうです。関係者には子ども達と一緒に感謝の気持ちを伝えましょう。
普段できない経験をした様々な思いや家族と離れて少し成長した実感を、子ども達ももっているはずです。その思いやつぶやきにきちんと耳を傾け、応答していきましょう。
楽しかった余韻を残し新学期に向かっていきましょう。
また、お世話になった施設や団体にお礼のお手紙や制作をする園もありますね。
そして、子ども達の様子を保護者にも詳しく伝えることも忘れずに。
子ども達と離れてハラハラしていた保護者の方も、子どもの成長した姿を喜んでくれるでしょう。ぜひその成長を一緒になって喜びたいものです。
編集者より
日常の保育から離れ、異なる条件や環境下で行うプログラム。
危険のリスクや慣れない企画に四苦八苦するかもしれません。
しかし、だからこそ普段のみなさんの子どもへの観察眼や自由で豊かな発想を活かせるのです。
お泊まり保育が保育者としてのステップアップの機会となるはずです。
ぜひ色んな人と助け合い、楽しみながら考えてみてくださいね。
参考文献・サイト
- 厚生労働省「保育所保育指針」(2019/07/05)
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」(2019/07/05)
- 香川県「葉っぱでおもちゃを作ろう」
- 子どもの水辺サポートセンター(2019/07/05)
- 産経WEST「川遊び事故死、元幼稚園園長ら3人に罰金求刑 松山地裁」(2019/07/05)
- 「吉野天使幼稚園のホームページ(福岡県大牟田市)」(2019/07/05)
- 山本克彦(監修),2003,『行事別保育のアイデアシリーズ1 元気がいっぱい夏期保育』フレーベル館
- 『PriPri 2013年7月号』世界文化社
- 『Piccolo 2015年7月号』学研
- 『PriPri 2018年6月号』「指導計画のヒント 7~9月の月間計画」世界文化社
- 猪熊弘子・寺町東子,2018,『教育・環境・安全の見方や選び方、付き合い方まで 子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』内外出版社
- 阿部直美・浅野ななみ,2018,『砂・泥あそび 雨の日あそび 水あそび プールあそび アイデア101: 0~5歳児 春~夏のあそび』学研プラス
- 『PriPri 2019年7月号』世界文化社