近年、共働き世帯の増加や核家族化により、一人で育児を担う「ワンオペ育児」が深刻な社会問題となっています。子どもが泣き止まない夜、家事に追われる毎日、休む間もなく続く育児……。保育士という専門的な立場にあっても、自身の子育てで悩み、疲れ果てている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ワンオペ育児になる原因から具体的な負担軽減の対応策まで、実践的なアイデアをご紹介します。「もう限界」と感じているあなたに、少しでも心の余裕が生まれるヒントになれば幸いです。
【この記事で分かること】
- ワンオペ育児とは何か、なぜ社会問題になっているのか
- ワンオペ育児になる5つの主な原因
- 仕事との両立がつらいと感じる3つの理由
- ワンオペ育児の負担を軽減する9つの実践的なアイデア
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育の現場で多くの保護者と接してきた経験から、ワンオペ育児の負担は想像以上に大きいことを実感しています。「頑張らなければ」と自分を追い詰めるのではなく、できることから少しずつ改善していくことが大切です。特に仕事と育児の両立では、自分の時間を確保することが長期的には子どもとの関係性にもプラスに働きます。この記事で紹介する方法を一つずつ試してみてください。
もくじ
ワンオペ育児とは?

ワンオペ育児とは、ほぼ一人で家事・育児を担っていることを指します。シングル家庭だけではなく、共働き家庭やパートナーが多忙な家庭でも起こり得る現象です。特に育児・家事の分担が偏っている場合や、パートナーの帰宅が遅い、休日も仕事がある状況で発生しやすい傾向にあります。
「ワンオペ育児」という言葉は、飲食店で一人のみで店舗運営を行う「ワンオペレーション」から派生した表現で、一人で全ての作業をこなさなければならない状況を表しています。近年では、現代の家族構造や働き方における重要な社会課題を表現する言葉として広く認知されるようになりました。
多くの方が「これって普通のことでは?」と思いながらも、実は心身ともに大きな負担がかかっているケースも少なくありません。24時間365日、休むことなく続く育児は、一人で担うにはあまりにも大きな負担です。
家事・育児時間の現状
共働き家庭が増える中でも、家事・育児の負担は依然として女性に偏っているのが日本の現状です。総務省統計局の調査結果「令和3年(2021年)社会生活基本調査の家事関連時間」からデータを見ていきましょう。
対象 | 2021年 | 2016年 | 増減 |
---|---|---|---|
夫 | 1時間54分 | 1時間23分 | +31分 |
妻 | 7時間28分 | 7時間34分 | -6分 |
2016年からの変化を具体的に見ると、夫は家事が13分増、育児が16分増となっています。一方、妻は家事が9分減って、育児は9分増えているのが現状です。
過去20年の変化を見ると、夫の家事・育児時間は徐々に増えています。妻は家事時間が減少傾向に、育児時間が増加傾向にあるものの、合計した家事関連時間としては大きな変化は見られていません。依然として妻の負担が約4倍と、圧倒的に大きいことがわかります。
※参考:総務省統計局.「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」.https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/gaiyoua.pdf,(参照 2025-03-15).
ワンオペ育児になる原因

「なぜこんなに一人で頑張らなければならないの?」と感じることはありませんか? ワンオペ育児になる原因はさまざまです。多くの家庭で見られる典型的なパターンや社会的背景を含め、なぜワンオペ育児になるのかを詳しく紹介していきます。
<ワンオペ育児になる主な原因>
- パートナーの仕事が多忙
- パートナーが単身赴任などで不在
- シングル家庭である
- 親など頼れる人が近くにいない
- パートナーが家事育児に非協力的
パートナーの仕事が多忙
パートナーから「今日も残業で帰りが遅くなる」「週末も仕事で出かけなければいけない」という連絡を受けた経験のある方もいるでしょう。パートナーが長時間労働をしていたり、勤務時間が不規則だったりする場合、育児に十分な時間を割けずに、ワンオペ育児になってしまっているケースが多く見られます。
例えば残業が当たり前である雰囲気の企業で働いている場合や、急な会議や出張が頻繁にある業務形態では、育児への参加が困難です。パートナーの帰りが深夜になり「子どもはもう寝ている」という状況が続くと、必然的に片方の親だけが育児の負担を抱え込むことになります。
問題の背景には、企業の労働環境や仕事と育児の両立に対する社会的な認識の遅れがあります。特に日本の企業では、長時間労働が評価につながる考え方が根強く残っており、育児にかける時間の確保が難しいのが現状です。
また男性の育児参加に対して消極的な企業が多く、育児休業制度はあるものの、実際の職場では取得しづらいことも大きな要因です。厚生労働省が全国6,300事業所に対して実施した「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性の育休取得率は30.1%、女性は84.1%という結果となっています。徐々に改善傾向にあるものの、まだ大きな差があり、職場における育児支援の取り組みは課題が多いといえるでしょう。
※参考:厚生労働省.「事業所調査結果概要」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r05/03.pdf,(参照 2025-03-14).
パートナーが単身赴任などで不在
パートナーが単身赴任などで長期間不在が続くと、育児の責任が一方の親に集中してしまいがちです。「距離が離れているから、なかなか頼れないと感じる方も多いのではないでしょうか。日々の子育ての負担や精神的なストレスを一人で抱え込んでしまう状況は、想像以上に心身に負担がかかります。
育児の実践的な面だけではなく、精神的なサポートも必要です。特に帰省の機会や日常的な連絡の頻度が限られている場合、孤独感や不安感が徐々に強まる可能性が高いでしょう。
子どもの成長や日々の出来事を共有する機会が減少すると、「一人で頑張っている」という思いが強くなり、家族としての一体感が薄れていく可能性もあります。特に子どもの発熱や急な体調不良など緊急時の対応は、遠距離にいるパートナーでは協力が難しく、すべて抱え込まざるを得ない状況が生じます。
シングル家庭である
離婚・死別・未婚などのさまざまな事情によってパートナーがいない状況もワンオペ育児の原因の一つです。シングル家庭は、一人で育児や家事の全ての負担を抱え込まざるを得ず、家庭運営の責任を一人で担うことになります。
シングルペアレントの方は、経済的な責任と育児の両方を担わなければならず、その負担は計り知れません。特に子どもが小さい場合、夜間の看病や緊急時の対応など、休む暇なく育児に対応する必要があります。
緊急時のバックアップ体制の欠如や、休息の機会を確保することの難しさなど、多面的な課題が生じるでしょう。「誰にも頼れない」という状況が続くと、精神的にも追い詰められてしまいがちです。
親など頼れる人が近くにいない
実家を離れて暮らしている方は「実家が遠くて頼れない」「親族が近くにいない」という悩みを抱えがちでしょう。近年では核家族化が進み、地方から都市部への移住を伴って子育てをしているケースが増加傾向にあります。このような状況だと、子育て世帯が独立して生活せざるを得ません。
実家や親族からの直接的なサポートを受けることが難しく、特に緊急時や突発的な事態が発生した際のバックアップ体制が不十分になりがちです。日常的な育児相談や精神的なサポートを得る機会も限られてしまい、仕事と育児の両立に大きな影響を及ぼす可能性があります。
子どもの病気や親自身の体調不良など、予期せぬ事態に対応するためのセーフティネットが乏しい状況は、常に気が休まらない状態を引き起こしやすいでしょう。
パートナーが家事育児に非協力的
「なぜ手伝ってくれないの?」「どうして気づいてくれないの?」と感じることはありませんか? パートナーと家事・育児の役割分担の認識がずれていたり、家庭生活における意識や価値観の違いが表面化したりすると、ワンオペ育児になりがちです。
パートナーが家事や育児に対して消極的だったり、「子育ては女性の仕事」という固定観念を持っていたりすると、協力を得ることが難しくなります。特に自発的な参加が少なく、指示がないと行動できないタイプのパートナーの場合、「指示をするのも疲れる」という二重の負担が生じることも少なくありません。
ときには「仕事で疲れている」という理由で家事育児への参加を避けるケースもありますが、家庭内での役割分担がバランスを欠くと、一方だけが過度な負担を強いられることになります。こうした状況が長く続くと、パートナーとの関係性にも影響を及ぼす可能性があります。
ワンオペ育児によって起こり得る問題点
ワンオペ育児は、一時的なものであれば乗り越えられるかもしれませんが、長期間続くと様々な問題を引き起こす可能性があります。これらの問題は心身の健康に大きな影響を及ぼすため、早期の対策や支援が必要です。
<ワンオペ育児による主な問題点>
- 心身の疲労やストレスの蓄積
- 育児ノイローゼや産後うつのリスク
- 子どもとの関わり方への影響
- キャリアや社会生活への制約
- 家族関係の悪化
特に深刻なのは、疲労やストレスの問題です。十分な睡眠が取れないことによる慢性的な疲労の蓄積や産後うつ、育児ノイローゼといった精神的な負担、そして日常的な育児による身体的な疲労などが重なると、自分自身のケアが後回しになりがちです。
「もう限界」と感じながらも誰にも相談できず、孤立感が強まることで、より状況が悪化するケースも少なくありません。自分の趣味や社会との接点が減ることで、自己肯定感の低下や将来への不安も生じやすくなります。
また子どもとの関係性にも影響が出る可能性があります。疲労やストレスがたまった状態では、どうしても子どもへのイライラが増え、理想とする関わり方ができなくなることもあるでしょ。う。「こんな親で申し訳ない」と自分を責めてしまうことで、さらに精神的な負担が増えるという悪循環に陥りやすくなります。
【監修者・礒部はるかのポイント】
ワンオペ育児によるストレスは、決して親の資質や努力不足が原因ではありません。一人で全てを担うことは、単純に物理的・心理的に限界があるのです。自分を責めるのではなく「この状況をどう改善できるか」という視点で考えることが重要です。
ワンオペ育児と仕事の両立がつらい理由

ワンオペ育児と仕事の両立は、多くの親にとって大変な状況といえるでしょう。「なぜこんなにつらいのか」と自分でも理解できないほど疲れ果てていることもあるかもしれません。この章では、なぜ両立が困難なのかを詳しく解説していきます。
<ワンオペ育児と仕事の両立がつらい主な理由>
- 時間的な制約があるから
- 精神的な負担があるから
- 体力的に限界だから
時間的な制約があるから
日々の仕事や家事、育児をしていると「24時間では足りない!」と感じることはありませんか。仕事をしていると時間的な制約があり、仕事の拘束時間と日々の家事・育児の量を限られた一日の中でこなしていくのは、限界があります。特に共働き世帯では、時間に追われることが当然の日常となっています。
通勤時間や予期せぬ残業により、保育園や学童保育での子どものお迎え時間が遅くなってしまい、子どもの生活リズムにも影響を及ぼすことがあります。「もう少し早く迎えに行ってあげたい」という気持ちと現実のギャップに苦しむ方も多いでしょう。
また子どもとの時間を十分に確保することが難しく、コミュニケーションや共有体験の機会が減りがちです。「子どもの成長を見逃してしまう」という不安や罪悪感を抱くこともあるかもしれません。
結果、毎日の生活がやるべきタスクをこなすことだけに意識が向いてしまい、家族との大切な時間や自身の心の余裕を失ってしまう悪循環に陥りやすいです。「明日の準備」「今日の片付け」に追われ、「今」を楽しむ余裕がないという状態は、精神的にも大きな負担となります。
精神的な負担があるから
育児ストレスや睡眠不足、孤独感といったメンタルの問題は、特にワンオペ育児をしている親にとって大きな負担です。「誰も私の大変さを分かってくれない」と感じることで、孤立感がさらに深まることもあるでしょう。
日々の仕事と育児の両立で、体力的な疲労だけではなく、精神的な疲れも蓄積され、次第に両立が厳しい状況に追い込まれます。周囲のサポートを得られず、誰にも相談できない状態が続くと、心身ともに追い詰められ、深刻なうつ症状を引き起こすケースも少なくありません。「頑張っているのに報われない」という感覚が強まると、自己肯定感が低下し、さらに精神状態が悪化する可能性があります。
体力的に限界だから
仕事が忙しくて疲れている中でも、毎日欠かせない食事の準備や入浴時間の確保、寝かしつけ、夜泣きへの対応など日々の育児は絶え間なく続きます。「休む暇がない」「寝る時間も十分に取れない」という状況は、想像以上に体力を消耗します。
特に仕事との両立は想像以上の体力が必要です。朝早くから夜遅くまで、常に誰かのために動き続ける生活は、どんなに健康な人でも次第に疲労が蓄積していきます。
しかし、自分自身が体調を崩して休養が必要な状況でも、育児の責任から完全に解放されることは難しく、十分な休息を取れないのが実状です。「熱があっても子どものお迎えに行かなければ」「具合が悪くても夕飯を作らなければ」という状況は、回復を遅らせる原因にもなります。
当サイトのアンケートでも、38%の方が子育てと仕事の両立は難しいと回答しています。詳しい回答内容は以下よりお読みください。
関連情報:子育てしながら保育士は続けられる?100人に聞いたホンネ

ワンオペ育児の負担を減らすアイデア
日々の育児に追われる中でも、少しの工夫で心と体の負担を軽くできる場合があります。一人で頑張りすぎず、できることから少しずつ変えていくことが大切です。ストレスをため込み過ぎないように育児を進めていきましょう。
<ワンオペ育児の負担を減らすアイデア>
- 完璧を目指さない
- 時短家電を取り入れる
- 食材宅配サービスやネットスーパーを利用する
- 一時保育やベビーシッターサービスなどに頼る
- 子育てのコミュニティに参加する
- 育児相談を利用する
- 息抜きの時間を作る
- 親などに協力を依頼する
- パートナーと役割分担や働き方について話し合う
完璧を目指さない
「全部きちんとやらなきゃいけない」と思い込み、頑張り過ぎてしまう方もいるでしょう。しかし、家事や育児の全てを完璧にこなそうとするのは現実的には不可能です。完璧を求めることでストレスの原因となり、心身の健康を損なう可能性があります。
できることとできないことを見極め、優先順位を付けることが大切です。例えば、食事は簡単なものでよい日を作る、部屋の掃除は週末だけにするなど、負担を減らせる部分から始めてみましょう。子どもにとって大切なのは、親が心に余裕を持って接することです。
適度にリフレッシュの時間を取ることは、心身の健康を維持するために必要不可欠です。自分なりのストレス解消法を見つけ、自分を追い詰め過ぎないように工夫してみてください。
時短家電を取り入れる
「家事に時間を取られすぎる」と感じる方には、時短家電の導入がおすすめです。ワンオペ育児の負担を軽減するために、毎日の家事負担を大幅に軽減できる食洗機や洗濯乾燥機などを使用してみましょう。
<特に効果的な時短家電>
- 食洗機:洗い物の手間が大幅に省ける
- 洗濯乾燥機:洗濯から乾燥までワンステップで完了
- ロボット掃除機:留守中に掃除ができる
- 電気圧力鍋:調理時間の短縮に効果的
- 炊飯器の予約機能:朝の忙しい時間の負担軽減
時短家電を導入すると、家事にかかる時間と体力的な負担を大きく削減できます。活用すれば、子どもとの時間や自分の休息時間をより多く確保でき、精神的なゆとりも生まれるでしょう。日々の生活にゆとりができると、より充実した毎日を送れます。
初期費用はかかりますが、長い目で見れば「時間」という貴重な資源を買うための投資と考えると、十分に価値があるといえるでしょう。
食材宅配サービスやネットスーパーを利用する
「買い物に行く時間がない」「子連れで買い物をするのが大変」と感じる方は多いのではないでしょうか。食材宅配サービスやネットスーパーを利用して買い物の手間を省き、重い荷物の持ち運びを回避すると、日々の家事にかかる時間や身体的な負担を大幅に軽減することが可能です。
<活用のポイント>
- 毎週決まった曜日に配送されるサービスを選ぶ
- ミールキットを利用し調理の手間を省く
- まとめ買いで配送料を抑える
- 定期的に購入するものは「お気に入り」登録しておく
食材や日用品の買い物に費やす時間と労力を削減すれば、子どもと過ごす時間や自分のリラックスタイムなど、他の重要な活動に時間を使えます。
コストや初期設定などのデメリットはありますが、時間と労力の節約による効率化のメリットの方が大きいでしょう。特に乳幼児を抱えるご家庭では、外出の負担を減らせる点も大きなメリットです。
一時保育やベビーシッターサービスなどに頼る
日々の家事・育児に追われる中で「少しでも自分の時間が欲しい」「一息つきたい」と感じるときは、自治体が運営する一時保育施設や、信頼できる民間のベビーシッターサービスなどを上手に活用すると、必要なサポートを受けられます。
<サービス活用のポイント>
- 一時保育:保育所で提供される短時間の保育サービス(急な用事や育児疲れの解消に)
- ファミリーサポート:地域の支援会員による子育て支援サービス
- ベビーシッター:自宅での個別対応が可能(より柔軟な時間帯に対応可能)
- ショートステイ:児童養護施設などで数日間子どもを預かってもらえるサービス
たまには、子どもと離れる時間を作ることも大切です。育児に没頭すると自分自身のケアが後回しになりがちですが、定期的に自分の時間を確保すれば、心にゆとりを持って子育てに向き合えます。「自分の時間を持つこと」は、リフレッシュだけでなく、子どもとの関係性を良好に保つためにも必要なことです。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育の現場では、「子どもと少し離れる時間があると、また元気に向き合える」という保護者の声をよく聞きます。一時保育などのサービスは「子どもを預けることに罪悪感がある」と感じる方もいますが、親のメンタルケアは子どもの幸せにも直結します。上手に活用して、ご自身を大切にしてください。
子育てのコミュニティに参加する
「同じ悩みを持つ人と話したい」「子育ての情報を交換したい」という方は、子育て支援サークルや保育園・幼稚園の保護者会など、さまざまなコミュニティに積極的に参加することがおすすめです。
<参加できるコミュニティの例>
- 地域の子育て支援センター
- SNSの子育てグループ
- ママ友や同じ年齢の子を持つ保護者の集まり
- 子育てサークル
- 趣味を通じた親子の交流グループ
定期的な情報交換や育児の悩みの共有を通じて、子育ての孤立感を解消できます。経験豊富な先輩パパ・ママからの実践的なアドバイスや、同じ年齢の子どもを持つ保護者との交流により、新しい育児のアイデアやヒントを得ることも可能です。「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」と感じられるだけでも、精神的な支えになるでしょう。
子ども同士の交流の機会も増えれば、子どもの社会性の発達にも良い影響を与えることが期待できます。また親同士のつながりができると、緊急時の助け合いも生まれやすくなります。例えば、急な残業で保育園のお迎えが間に合わない場合など、保育園への事前申請は必要ですが、互いにサポートし合える関係が築ければ、心強いでしょう。
最近ではオンラインのコミュニティも充実しており、時間や場所に制約がある方でも参加しやすくなっています。まずは気軽に参加できるものから始めてみてはいかがでしょうか。
育児相談を利用する
「もしかして、うちの子の発達はゆっくりなのかな?」「この方法で、ちゃんと子どものためになっているのかな?」など、育児の中で生じる不安や疑問は尽きないものです。そんなときは、専門家のアドバイスを受けられる育児相談サービスを活用してみましょう。
<活用できる育児相談サービス>
- 保健センターの育児相談
- 育児支援センターの専門相談
- 子育て広場や地域の子育てサロン
- オンライン相談サービス
- 小児科医や保健師への相談
保健師や助産師、保育士、心理カウンセラーなどに育児の不安や悩みを共有し、アドバイスを受けることで、具体的な解決策を見つけられます。中には子育ての経験のある相談員もいるため、経験談を聞いて参考にすることもできるでしょう。
対面での相談だけではなく、電話やビデオ通話を通じた相談も増えているため、外出が難しい方でも気軽に利用できます。「こんな小さなことで相談していいのかな」と躊躇せず、気になることがあれば早めに相談することで、小さな不安が大きなストレスに発展する前に解決できることも多いです。
相談員との交流を通じて心理的な負担を軽減し、前向きな気持ちで育児に取り組めるはずです。定期的に専門家と話すことで、子どもの成長を客観的に見る視点も養われます。
息抜きの時間を作る
「24時間、常に母親・父親でいなければならない」と責任感を強く持っていると、心身共に負担がかかってしまいます。そのため息抜きとして、自分の好きなことに没頭できる時間を確保することは、心身のリフレッシュとストレス解消のために欠かせません。たとえ15分や30分といった短い時間でも、定期的に自分のための時間を作ると、より充実した日々を過ごせます。
<息抜きの時間の作り方>
- 子どもが昼寝している間に好きな本を読む
- 子どもが寝た後に入浴タイムを楽しむ
- 週末のどこかで1時間だけ「自分時間」を確保する
- 子どもが遊んでいる隙に好きな音楽を聴く
- 夫婦交代で自由時間を持つようにする
趣味の時間を作ったり、近所を散歩したり静かなカフェで一人の時間を過ごしたりなど、自分に合った息抜き方法を見つけることが大切です。息抜きをすると、日常生活のバランスを保て、心身ともに健康的な状態を維持できます。
「自分の時間を持つことは自分勝手なこと」と罪悪感を抱く必要はありません。むしろ自分をケアすることで、心に余裕が生まれ、穏やかな気持ちになります。余裕がある状態で子どもと接することで、イライラする場面も減るでしょう。
ワンオペ育児でなかなか一人の時間が取れない場合は、前述した一時保育やベビーシッターなどを活用するのがおすすめです。たとえ数時間でも心からリラックスできる時間を持つ価値は十分にあります。
親などに協力を依頼する
実家や親族が近距離に住んでいる場合は、週末の訪問や平日の夕食サポートなど、定期的な支援をお願いしてみましょう。親に頼ることに罪悪感をおぼえる方もいるかもしれませんが、子育ては決して一人で抱え込むものではありません。特に子どもにとっても祖父母との時間は貴重な経験となります。
<協力を依頼する際のポイント>
- 具体的な支援内容を明確に伝える
- 事前に相談し、無理のない範囲で依頼する
- 感謝の気持ちを伝える
- 一方的な依頼にならないよう配慮する
- 相手にもメリットがある方法を考える
実家が遠方にある場合でも、長期休暇や連休を利用して年に数回程度でも頼ってみてください。短期間でも、育児の負担から解放される時間があることで、精神的な余裕が生まれます。
ただし親の年齢や体力、健康状態などを考慮しながら、無理のない範囲でサポートを依頼することが重要です。相手の状況に合わせた依頼を心掛けましょう。
支援を受ける側も提供する側も、お互いの状況を理解し合いながら、バランスの取れた関係を保つことが望ましいでしょう。感謝の気持ちをしっかり伝え、相手に負担をかけ過ぎないよう配慮することも大切です。
パートナーと役割分担や働き方について話し合う
「なんで分かってくれないのだろう」と思うだけでは状況は変わりません。パートナーがいる場合にワンオペ育児の負担を減らすには、まずは率直な対話が必要です。家事育児のリスト化や分担表の作成、定期的な話し合いの実施など、日常生活を効率的に管理するための具体的な対策を立てましょう。
<話し合いのポイント>
- 感情的にならず、具体的な課題と解決策を話し合う
- 「~してくれない」という批判ではなく「~してほしい」という要望を伝える
- 家事や育児の「見える化」を行い、全体像を共有する
- 互いの働き方や価値観を尊重する
- できたことは積極的に認め、感謝を伝える
時短勤務やフレックスタイム制度、在宅勤務制度などの柔軟な働き方を導入している職場を互いに探すことも一つの選択肢です。特に小さな子どもがいる時期は、キャリアと育児のバランスを考え直す良い機会かもしれません。
またどうしてもパートナーが平日に育児の時間を確保できない場合は、休日に育児をお願いする方法が考えられます。「土日はパパ/ママの日」など、決まった時間を設けると、子どもとパートナーの関係性も深まるでしょう。
ワンオペ育児の負担をどう減らすのかをパートナーと共に考え、工夫する姿勢が大切です。対話を通じて互いの状況や気持ちを理解し合えれば、より協力的な家庭環境を築けるはずです。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
パートナーに伝える際は「子どもの成長にとって両親の関わりがいかに大切か」という視点を共有するのが効果的です。育児は単なる「作業」ではなく、子どもとの貴重な時間であることを理解してもらえると、前向きな協力が得られやすくなるでしょう。
まとめ
ワンオペ育児は決して望ましい状況ではありませんが、現代社会においてさまざまな事情により発生してしまっているのが現実です。一人で育児の全てを担うことによる身体的・精神的な負担は計り知れないものがあります。
ワンオペ育児になる原因は、パートナーの仕事の多忙さ、単身赴任、シングル家庭、頼れる人の不在、パートナーの非協力的な姿勢などさまざまですが、いずれの場合も「完璧を目指さない」という心構えが大切です。また時短家電や食材宅配サービスを活用し、一時保育や子育てコミュニティなど外部の支援も積極的に取り入れましょう。
問題に対処するためには、行政サービスや子育て支援の充実などの社会全体での体制作りと、家事の簡略化や自分自身のケアを優先する時間の確保、パートナーとの役割分担などの工夫が重要です。また負担を軽減するには、働き方を変えるのも一つの手です。
「保育のお仕事」では、保育士や幼稚園教諭などの求人を取り扱っています。雇用形態もさまざまで、時短勤務や週の勤務日数の調整が可能な求人も探せます。働き方に悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。
よくある質問
ワンオペ育児は避けられないものなのでしょうか?
必ずしもすべての家庭でワンオペ育児が避けられないわけではありませんが、現代社会の働き方や家族形態を考えると、多くの家庭で部分的にワンオペ状態になってしまうことはあるでしょう。しかし、社会全体の意識改革や職場環境の改善、パートナーとの協力関係の構築などによって、その負担を軽減することは可能です。まずは「一人で抱え込まない」という意識を持ち、利用できる支援やサービスを積極的に活用することが大切です。
ワンオペ育児による心身の疲れを軽減するには何が効果的ですか?
心身の疲れを軽減するには「完璧を目指さない」ことが重要です。また短時間でも自分のための時間を確保し、定期的にリフレッシュする機会を作りましょう。時短家電の活用やネットスーパーの利用、一時保育サービスの活用なども効果的です。同じ悩みを持つ親との交流も、精神的な支えになります。身体的な疲労に対しては、十分な睡眠を優先し、可能であれば軽い運動を取り入れることも有効です。
シングルペアレントでワンオペ育児をしている場合、特に注意すべき点はありますか?
シングルペアレントの場合、経済的な負担と育児の両方を一人で担うことになるため、行政の支援サービスを積極的に活用することが重要です。児童扶養手当などの経済的支援や、ひとり親家庭向けの各種サポート制度について情報を収集しましょう。また緊急時のバックアップ体制を事前に構築しておくことも大切です。信頼できる友人や地域のサポートネットワークを作り、孤立しないよう心掛けてください。自分の健康管理も最優先事項として意識することが、長期的に子育てを続けるために不可欠です。
監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。子育て中の保護者の悩みに寄り添った情報発信を心がけている。