保育士資格を生かして就職・転職を目指す上で、履歴書の作成は非常に重要なステップです。心を込めて作成する履歴書だからこそ「これで本当に正しい書き方なのだろうか?」と、作成中に不安を感じることもあるかもしれません。特に、努力して取得した資格を記入する欄は、正式名称で正確に記載する必要があり、どのように書くべきかを迷いやすいポイントの一つといえるでしょう。
本記事では、保育士資格を履歴書へ記載する際の正式名称や、注意しておきたい点などを詳しく解説します。保育士資格を自信を持ってアピールするために、ぜひ本記事を参考にして、履歴書作成に役立ててください。
【この記事で分かること】
- 保育士が資格欄を書く際の正式名称・書き方
- 保育士資格と間違いやすい資格との違い
- 資格以外の項目で注意すべきこと
- 保育士資格を生かせる職場
もくじ
履歴書に書く際の正式名称は「保育士資格」

所有している資格を履歴書に書くときは、正式名称での記載が必要です。そのため、保育士の場合は「保育士資格」と記載しましょう。
保育士は、2003年の児童福祉法の改正がきっかけで国家資格化されました。国家資格には業務独占資格・名称独占資格・設置義務資格・技能検定の4つの分類があり、保育士は名称独占資格に当たります。有資格者のみが「保育士」と名乗ることが認められており、無資格者が人を誤解させるような名称を用いることは禁止されています。
保育士として働くには、各都道府県知事に対して登録申請手続きを行い、保育士証の交付を受けなければなりません。登録に関わる事務処理は、社会福祉法人日本保育協会の登録事務処理センターを通して行われており、書類の不備がない場合で約2カ月かかります。保育士として働く予定のある方で、保育士証が手元にない場合は、登録ができているかを確認しておきましょう。
保育士資格と間違いやすい資格との違い
子ども関連の資格は、保育士だけではありません。特に幼稚園教諭免許や保母資格は保育士資格と混同されやすく、勘違いしたまま覚えてしまっている人もいます。
資格の違いを理解していないと希望する職種に就けない可能性があるため、保育士資格との違いをきちんと理解しておくことが大切です。
<保育士資格と間違いやすい資格との違い>
- 幼稚園教諭免許との違い
- 保母資格との違い
幼稚園教諭免許との違い
保育士と幼稚園教諭で大きく異なる点は、管轄している機関と働く場所、求められる役割です。保育士は厚生労働省の管轄で、保育園や児童養護施設などで子どもの生活全般の支援を担います。
一方で、幼稚園教諭は文部科学省の管轄で、幼稚園で学習や生活の基礎となる知識や表現力などを育む役割を担います。また幼稚園教諭二種免許状・幼稚園教諭一種免許状・幼稚園教諭専修免許状の3種類があり、上位の資格ほど高い専門性を有します。これらの3種類はそれぞれ取得方法が異なるため、自分のキャリアプランに合わせて適切な資格を取得しましょう。
保母資格との違い
保母資格は、1999年の児童福祉法施行令の改正前まで保育士資格の位置付けにあった資格です。保育に関わる職業の方は「保母」あるいは「保父」と呼ばれていましたが、保育士資格が定められたのを機に、「保育士」といわれるようになりました。現在は、保母資格を持っていても保育士として働けません。
ただし、登録事務処理センターを通して登録を行えば、保母資格を保育士資格に変更できます。登録の際に費用はかかりますが、特別な試験はありません。保母資格を持っており、保育現場への復帰を考えている方は、資格変更の手続きをしておきましょう。
保育士資格の履歴書への書き方
保育士資格を履歴書に書くときは、資格名だけではなく取得年月や取得状況についても記載が必要です。正しく記載できるよう、書き方を事前に確認しておきましょう。
<保育士資格の履歴書への書き方>
- 資格取得年月欄
- 免許・資格欄
- 必要に応じて認定機関も記載
資格取得年月欄
資格取得年月欄には、保育士資格を取得した年月を記載します。指定保育士養成施設で取得した方は卒業した年月を、保育士試験で取得した方は合格した年月を記入しましょう。保育士証には保育士登録をした日が記載されており、実際の取得年月とは異なるため注意が必要です。
なお新卒で保育士資格をまだ取得できていない場合は、取得見込みの年月を記載してください。
免許・資格欄
履歴書の免許・資格欄には、正式名称の「保育士資格」と取得状況を記載します。例えば、すでに取得済みの方は「保育士資格 取得」、新卒でまだ取得できていない場合は「保育士資格 取得見込み」と書きます。卒業と同時に確実に取得できる資格は、取得見込みとして記載可能なので、書いてもいいのか心配する必要はありません。
必要に応じて認定機関も記載
一般的な履歴書には取得年月日と免許・資格欄を記載すれば問題ありませんが、認定機関の記載欄がある場合は、「○○県知事認定」と記載しましょう。保育士証に登録した都道府県名が記載されているため、分からない方は保育士証を確認してください。
保育士資格以外の資格も記載する際の注意点

語学に関する資格や検定、民間資格を含めたその他の資格を持っている場合は、取得年月順に記載します。仕事に関連する資格を記載するのが基本のため、保育の仕事に生かせそうなものやその職場で役立ちそうなものに絞って書くのがいいでしょう。
趣味に関する資格は、趣味・特技欄でのアピールに使うと良いかもしれません。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
就職・転職したい保育園の特色、どんな保育を実践したいかによって、記載すべき資格は変わります。例えば、英語や中国語を扱うプリスクールならTOEIC、中国語検定などの資格が有利です。私が保育園に勤めていた頃は、リトミック指導資格といった実際の保育に生かせるような資格を持つ保育士は、専門性が高い人材として保育園側から重宝されていました。
保育士が資格以外の項目で気を付けるべきこと
志望動機や自己PRの欄には、あなたなりのエピソードを盛り込みましょう。就職や転職の目的、アピールポイントは人それぞれ異なるため、あなたの人となりを表現することが大切です。
志望動機には、その保育園を選んだ理由や保育士を志した背景などの思いが伝わるように書くのがポイントです。転職の場合は、前職を辞めた理由やどのような環境で働きたいのかを前向きな言葉で書いても構いません。
自己PRや趣味・特技の欄は、保育士の仕事に生きる内容を書くのが良いでしょう。例えば、明るく人を巻き込むコミュニケーション力がある、相談しやすい人柄だと言われる、絵やピアノが得意などです。その職場に関連する内容を書くことで、あなたが活躍する姿を相手に想像してもらいやすくなります。
その他にも、さらに具体的な履歴書の書き方を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
志望動機や自己PR欄では、抽象的な表現や定型文、ネガティブな言葉は避けましょう。「子どもが好きです」「一生懸命頑張ります」など具体性に欠ける言葉ばかりを並べてしまうと、自身の人間性や具体的に頑張りたいことが伝わりません。「何を」「どうして」「どんなふうに」達成したいのか、できるだけ掘り下げて記載するのがベストです。
保育士資格を生かせる職場

保育士資格を生かせる職場はさまざまあり、就職・転職の選択肢が豊富です。職場によって働き方や環境が大きく変わるため、自分の考えに合う職場を選ぶことが長続きさせる秘訣です。
ここからは、保育士資格を生かせる職場をご紹介します。
<保育士資格を生かせる職場>
- 保育園(保育所)
- 託児所
- 病院内保育所・企業内保育所
- 児童養護施設
- 放課後児童クラブ
- インターナショナルプリスクール
- 認定こども園
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
私が保育士時代に職場選びの際に大切にしていた基準は「どんな子どもを、どんな環境で支援したいか」です。私自身、両親が共働きで幼少期に寂しさを感じた経験があったことから、働く保護者の帰りを待つ子どもを支援したいと思い、転職先には企業内保育所を選びました。企業内保育所は保護者と連絡が取りやすく、連携して子育てを行えるという環境も、職場選びの上で大きなポイントでした。こうした経験から、まずは自分の中で基準を決めてから職場を探すことをおすすめします。
保育園(保育所)
保育園(保育所)は、0〜6歳の未就学児の保育を行う施設です。仕事の都合などで日中に子育てをする時間が取れない保護者に代わって子どもを預かり、健やかな成長の手助けをします。保育士は、食事や着替え、排泄などのサポートをしたり、遊びを通して心身の発達を促したりするのが仕事です。
保育園には、国や地自体からの公費支援を受けて運営している「認可保育園」をはじめ、原則保護者からの保育料のみで運営している「無認可保育園」や、自治体が独自の基準で認証した「認証・認定保育園」などいくつか種類があり、施設によって特徴や運営方法が異なります。
保育園はいろいろな年齢の子どもと関わりたい方におすすめの施設です。また年齢が低いクラスほど複数担任となる場合が多く、他の保育士と協力しながら保育したい方に向いています。
託児所
託児所は認可外保育施設の一種で、一時的に子どもを預かる施設です。保育園のように独立した施設で保育を行っていることもあれば、商業施設や美容院、病院などに設置されていることもあります。基本的に0〜5歳の就学前の子どもを対象としている施設が多いですが、中には2歳未満を預からない方針の施設もあります。
また一度の預かりが30分〜数時間ほどと、基本的に短時間の少人数保育であることも保育園とは異なる点です。比較的ゆったりとした雰囲気の中で、子ども一人ひとりと向き合いたい方に向いています。
病院内保育所・企業内保育所
病院内保育所・企業内保育所は、病院や企業のオフィス内に設置されている保育施設です。病院内保育所は、医師や看護師など病院の職員の子どもを対象とし、夜間保育や24時間保育も実施していることが多いです。
一方で、企業内保育所はその企業の従業員を対象に設置するため、基本的に企業の就業時間に合わせた保育時間を設けています。
いずれも同じ職場で働いている人の子どもを預かるため、一般的な保育園と比べると保護者との距離が近いのが特徴です。また小規模な施設が多く、アットホームな雰囲気の中で子どもに寄り添った保育をしやすくなっています。保護者とより密な連携を取りながら、じっくり子どもと向き合いたい方に向いている職場です。
児童養護施設
児童養護施設は、さまざまな事情で家庭にいることができなくなった子どもたちが生活する施設です。保護者の経済的な理由や病気、虐待など、子どもたちが安心して暮らせない状況にある場合に、一時的または長期的に入所します。
入所しているのは、2歳からおおむね18歳までの子どもで、職員は子どもたちの日常生活や学習の支援、自立に向けたサポートなどを行います。児童養護施設にいる子どもたちは、困難な状況に置かれていることが多いです。そのため、より深く子どもたちと関わりたい方に向いています。
一般的な保育施設よりも、心理的なケアといったより専門的なスキルが必要な場面もありますが、子どもたちの未来をともに築くといった大きなやりがいがあります。
放課後児童クラブ(学童保育)
放課後児童クラブ(学童保育)は、仕事などで日中の保育が難しい保護者に代わり、小学校の空いている教室や児童館などを利用して児童を預かる施設です。対象年齢は小学校低学年までですが、状況によっては6年生まで対象としている施設もあります。特に小学生と関わる仕事がしたい方におすすめの職場です。
主に遊びや宿題の見守り、食事のサポート、環境の整備などを行います。保育士資格のみでも働けますが、施設ごとに「放課後児童支援員」の有資格者を2名以上配置する必要があるため、放課後児童支援員の資格も持っている方が就職・転職の際に有利です。
インターナショナルプリスクール
インターナショナルプリスクールは、主に英語による幼児教育を行っている施設です。異文化に触れながら、子どもたちの国際的な視野を広げることを目的としており、多くの場合、ネイティブスピーカーの教師が常駐し、歌や遊びなどを通して自然な英語の習得を促しています。
通っているのは、日本に在住している外国人の子どもや、プリスクール独自の教育を受けさせたいと考えている日本人の子どもなどです。外国語のスキルを生かして働きたい方や、多様な価値観を持つ子どもたちに合わせたサポートを行いたいと考えている方に向いています。
インターナショナルスクールと似ていますが、やや違いがあるので混同しないよう注意が必要です。インターナショナルスクールは、海外で育った子どもに対して英語で保育を行うのに対し、プリスクールは日本で育った子どもに対して英語の習得を目的とした保育を行います。
ただし、近年はプリスクールの中にもインターナショナルスクールとうたう施設もあるため、仕事内容を見て詳細を確認しておくことをおすすめします。
認定こども園
認定子ども園は、幼稚園と保育所の機能を併せ持った施設です。0〜6歳までの就学前の子どもが対象で、保護者の就労状況に関わらず、全ての子どもの成長を支援することが目的です。保育・教育の両方の専門性を磨きたい方や、地域の子育て支援に貢献したい方に向いています。
認定こども園には、下記の4つのタイプがあります。
- 幼保連携型:幼稚園と保育所の機能を一体化させた施設
- 幼稚園型:幼稚園が保育機能を強化した施設
- 保育所型:保育所が幼稚園機能を強化した施設
- 地方裁量型:地域のニーズに合わせて設置された施設
幼保連携型の園では保育教諭の配置が定められているため、幼稚園教諭の免許も求められます。
まとめ
保育士として就職・転職活動をする際は、履歴書の免許・資格欄に保育士資格を取得している旨の記載が必要です。新卒で就職活動をする場合も、取得見込みと記載しなければなりません。
取得年月の欄は、指定保育士養成施設で取得した方(あるいは取得予定の方)は卒業年月を、保育士試験で取得した方は合格した年月を記入しましょう。保育士証に記載されている日付は、実際の取得年月とは異なるため注意が必要です。
その他にも保育関連の資格や現場で役立ちそうな資格を持っている場合は、取得年月順に書いておくと有利になるかもしれません。
履歴書以外にも、保育業界での就職・転職でお悩みがある方は、ぜひ保育のお仕事にご相談ください。プロのスタッフが、あなたの職場探しをしっかりサポートします。充実した保育士生活に向けて、一緒に準備をしていきましょう。
よくある質問
保育士資格を履歴書に書く際に気を付けることはありますか?
保育士資格を履歴書に記載する際は、正式名称である「保育士資格」を記載しましょう。「保育士」とだけ書いたり、略称を用いたりするのは避けてください。
次に、資格を取得した年月を正確に記載することも重要です。指定保育士養成施設を卒業した方は卒業年月を、保育士試験に合格した方は合格年月を記載します。保育士証に記載されている登録日とは異なるため注意が必要です。
また新卒などで資格取得見込みの場合は「保育士資格 取得見込み」と書きましょう。
幼稚園教諭免許状も持っている場合、履歴書にはどのように書けば良いですか?
幼稚園教諭免許状も保有している場合は、「幼稚園教諭○種免許状 取得」のように、保育士資格とは別に正式名称で記載しましょう。複数の免許や資格を持っている場合は、取得年月順に記載するのが基本です。
保育士資格以外に、履歴書に書くと有利になる可能性のある資格はありますか?
保育士資格以外にも、就職先の保育園や施設によっては有利になる資格があります。例えば、英語や中国語などの語学に関する資格は、インターナショナルプリスクールなどで役立つ可能性があります。リトミック指導資格や音楽療法士、食育に関する資格なども、保育の専門性を高める上で評価されることがあります。
また普通自動車運転免許は、送迎業務などがある施設では必須となる場合があります。応募先の保育園の特色や求人情報をよく確認し、関連性の高い資格があれば積極的に記載しましょう。ボランティア経験や子育て支援に関する資格なども、熱意を示す上で有効な場合があります。
監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。子育て中の保護者の悩みに寄り添った情報発信を心がけている。