皆さまは今後、どのような働き方をしていきたいですか?「将来は主任や園長を目指したい」「ずっと担任として子どもと関わっていたい」など……キャリア観は人それぞれですよね。
役職が少ないためにポストが限られる、保育士のキャリアパス。今回の記事では役職を目指すために必要なポイントをまとめました!ぜひ、ご自身のキャリアについてじっくり考えてみましょう。
キャリアパスって?
キャリアパスとは、仕事の経験などを通じて昇進や昇格へ進む経路・あるいは長期的な職務の展望を指します。つまり、今後どのような職務にどんな立場で就くか?そのためにどのような経験を積むのか?といった道筋のことです。
自分が仕事の上でどのようになりたいのかをよく考えて構築するのがいいでしょう。
保育士のキャリアパスはどうなっているの?
保育士のキャリアパスの大きな特徴は、役職が非常に限られているという点です。
たとえば事務職であれば人事や総務、係長など多くの部署や役職があります。しかし保育士にはそのような細かいポジションが少ないため、希望のポストに就きづらいケースがあるのです。
保育士さんの組織図
施設や運営主体によって異なりますが、おおむね保育士の組織図は以下のようになっています。
リーダー職は制度化されておらず、小規模の場合には設けないケースもあります。また大規模な園では、副園長、副主任保育士など補佐的ポジションを設けているところもあるようです。
いずれにしても、1つの施設における役職者の数は少数です。
保育士の主な職位
それでは、保育士にはどのような役職があるのか、その概要やなる上で必要な経験の目安を見ていきましょう。
園長
経験年数 | 10年以上 |
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必要な経験 | ・施設内のあらゆる調整 ・保育士の管理・指導責任 ・運営・経営責任 ・事務や出納の管理・資金計画 ・保育に対する深い理解と経験 |
主任保育士
経験年数 | 8年以上 (副主任は5年以上) |
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必要な経験 | ・業務遂行責任 ・研修プログラムの企画・実施 ・他部門や地域関連機関との連携 ・経営状態の把握・園長補佐 ・提供サービスの質向上 ・組織の強化とリーダー以下の育成 |
リーダー
経験年数 | 3年以上 |
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必要な経験 | ・クラス業務責任 ・メンバー間の信頼関係構築 ・上位者の職務補佐・支援 ・担任・初任者の指導・育成 ・知識・技術の向上 |
クラス担任
経験年数 | 1年以上 |
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必要な経験 | ・初任者の保育指導 ・園務や会計業務の補佐 ・専門知識と技術の向上 ・保育指導計画の立案・評価(一部) |
初任者
経験年数 | 初任~1年程度 |
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必要な経験 | ・日常保育業務 ・職場理念や必要制度の理解 ・ルール・マナーの遵守 ・保育指導計画の理解 |
役職を目指す場合には、経験を積むと共に、今の勤務先で実現できるのかも含めた検討が必要になります。また昇格を希望しない場合でも、今後どのようなスキルを身につけて活躍していきたいか、といったキャリアパスは考えておく必要があるでしょう。
保育士のキャリアアップ研修
2017年より、厚生労働省によって「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」が定められました。保育士の専門性をより高め、育成するために設けられた制度で、大きく3つの研修が用意されています。
保育実践研修
保育現場における実習経験の少ない保育士試験合格者や、長いブランクのある潜在保育士などを対象に実施される研修です。
専門分野別研修
保育園などの現場において、それぞれの専門分野についてリーダー的な役割を持つ(あるいは役割を担う可能性のある)保育士が研修対象となります。
- 専門分野
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□乳児保育
□幼児教育
□障害児保育
□食育・アレルギー対応
□保健衛生・安全対策
□保護者支援・子育て支援
マネジメント研修
上記の専門分野におけるリーダー的な役割を担った経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーとしての役割を持つ(あるいはその可能性がある)保育士が対象となります。
それぞれの研修の内容は厚生労働省が2月に出した「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」に掲載されています。
研修時間 | 1分野15時間以上 |
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実施方法 | 講義形式のほか、遠州屋グループディスカッションを組み合わせる |
保育士さんのキャリアパス「チャンスがあれば昇格も視野に」が61%
以前弊社で実施したアンケートによれば、今後のキャリアについて、半数以上の保育士さんが「機会があれば役職に就くことも検討したい」と回答されていました。まずはアンケートの結果と読者の皆さまのご意見をご紹介します!
- 役職に就くことを希望しない理由
- ◆ 子どもと過ごしたい・担任が良い
現場で子どもと過ごしたいから(保育士/30代女性) - ◆ スキル・経験をもっとつけたい
ブランクがあるので現場で経験しながら勉強していき、自信をつけたい(保育士/50代女性) - ◆ 今のポジションに満足している
今が幸せです(保育士/30代女性) - ◆ 家庭との両立がしたい
子育てがあるからそんなに昇格するつもりはない(保育士/30代女性) - ◆ 責任の重さから
負担が大きい(保育士/50代女性)
具体的に園長や主任を目指されている方、目指しているのに実現ができない方、機会があれば役職に就いても良いという方を合計すると61.1%。皆さまキャリアアップについて積極的に考えられているようですね。一方で家庭との両立がしたい、子どもと関わる担任でいたい、などの思いから役職は望まない方も38.9%いらっしゃいました。
希望する役職は?
具体的に目指す職位がある方は少数でしたが、自分の園を持ちたい、園長になりたいという方が最も多い結果となりました。中には海外でプリスクールやデイケアを運営したいという夢をお持ちの方も。
・実施期間:2014年11月14日~11月19日
・実施対象:
保育士(69.4%)・幼稚園教諭(8.3%)・
その他保育関連職(8.3%)・学生(2.8%)・
主婦(8.3%)・その他(2.8%)
・実施者の役職:
主任保育士(2.8%)・保育士(72.2%)
その他短時間勤務など(25.0%)
・回答者数:36人
・平均年齢:34.7歳
・男女割合:女性/91.7% 男性/8.3%
なかなか昇格できないのはなぜ……?
これだけの保育士が「そろそろワンランク上の役職を目指したい……」と思っていても、園によってはなかなか希望が叶わないこともあります。希望の役職に就けない理由は、主に以下のものがあります。
◆スキルや経験が足りないため
◆保育方針など考え方が合わないため
◆家庭の事情など
公立と私立、役職につきにくいのは?
また、施設によっても役職の目指しやすさは異なります。
公立保育園は保育士の平均年齢が高く平均勤務年数が長いため、移動が定期的に発生します。そのため、私立保育園に比べて役職を目指しやすいのです。
私立保育園の中でも、特に以下のような条件がある場合はなかなか昇進が難しいかもしれません。
- 役職を目指しにくい傾向にある施設の例
- ・職員数が全体的に少ない(参考:職員数の平均…20.5人)
・系列保育園がなく人事異動が発生しない
・家族経営で基本的に園長などを世襲で選出している
・役職以外の職員の在籍平均年数が非常に短い
・役職者以外の職員の平均年齢が非常に若い
・園における内部の登用・昇格規定に明確な基準がない
・経験年数の長い先輩職員の数が多い
…など
今の勤務先で昇格の見込みが薄いなら……
現在勤めている保育園では昇給が難しい……ということであれば、以下のような手段を講じてみましょう。
1.希望を上席に伝えた上で必要なスキルを磨く
必要なスキルや経験が足りない場合には、将来的に役職を目指したい旨を人事担当者に伝えておいて、必要な資格を取得したり経験を積んだりするのもひとつの手段。
せっかく自己啓発を行っていても、積極性や意欲が伝わらなければ意味がありません。希望はきちんと上の人に伝えましょう。
職場内で将来的な役職ポストを狙うなら、上手く仕事の振り分けを行う、話す・伝える能力を磨く、上席や同僚への気配りを心がけるなど、マネジメント力を鍛えましょう。
3.思い切って転職する
キャリアアップを実現させるために、転職するのもひとつの手です。保育士としての経験をある程度積んでいる場合には、主任候補・園長候補など「将来的に役職に就ける可能性の高い」求人に応募するのがいいですね。
慣れ親しんだ職場で一定の経験とスキルを取得し、将来的には「主任保育士募集」など役職の求人に応募してみるのも良いでしょう。
キャリアアップに役立つ資格、研修をチェック!
今後主任や園長を目指す上で、取得しておくと役立つ資格をご紹介します。
社会福祉士
ソーシャルワーカーの国家資格。
課題を抱える人の相談に乗ってその人が必要とする社会資源を探し、専門知識に基づいたカウンセリングや援助をすることで課題の解決をサポートします。
保護者支援などに役立ちます。
福祉施設士
全国社会福祉協議会が実施する「福祉施設長専門講座」の修了者に対し、協議会会長が付与する民間資格。
福祉施設を運営・管理する責任者である施設長に求められる専門知識を習得することができます。
福祉簿記
社会福祉法人の運営する保育園の園長を目指す際に役立ちます。社会福祉法人の会計業務に必要な簿記会計、財務管理が学べます。
園内研修や、都道府県・自治体や保育士会などが行う講座や研修会に参加する必要がある場合も……
キャリアの可能性を広げる資格
役職に就かず、「ずっと現場で活躍する」というのもキャリアパスの一つの選択肢です。
ただし、今後どのようなスキルを身につけたいか、どんな保育を実践したいかという点は、今後の人生を充実させるためにも考えたいもの。身につけておくことで、保育園以外にも活躍の場が広がるかもしれませんよ。
- 保育園にとらわれないキャリア形成の例
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・教育機関にて指導教育者として保育士養成に携わる
・市町村などで保育所の巡回指導や保育・子育て関係の行政などに携わる
・保育ママなど異なる子育て支援サービス運営に携わる
社会福祉士
ソーシャルワーカーの国家資格。
課題を抱える人の相談に乗ってその人が必要とする社会資源を探し、専門知識に基づいたカウンセリングや援助をすることで課題の解決をサポートします。保護者支援などに役立ちます。
臨床心理士
精神的な悩みを抱える人たちの相談相手となり、さまざまな心理療法で心の問題解決を援助する、心理カウンセリングのエキスパート。
発達障害などの子どもたちに寄り添い支援を行いたい…と考えている方などは、業務で十分に知識を活かせるでしょう。
チャイルドマインダー
少人数保育で家庭的な温かさを大切にし、こどもたちの個性を尊重する質の高い保育を実践する保育専門職。
小規模保育や保育ママなどに興味がある方にオススメ。
児童福祉士
児童相談所にも配置されており、子どもの保護や児童福祉に関する相談を受け、指導を行うケースワーカー。
虐待防止や、その対策に関心を持っている方なら、業務にも役立つはずです。
編集者より
ふと自分の今までのキャリアを振り返ったとき、「選ばなかった選択肢の続きはどうなっていたんだろう…」と思うことがあります。きっとその先には今の私とまったく違った自分がいたことでしょう。
仕事は人の一生を大きく左右します。自分がどのように働くかを考えることは、大げさかもしれませんが、人生設計そのものとも言えるのではないでしょうか。後悔をしないためにも、将来を見つめる時間を定期的に設けて、自分にあったキャリアパスを構築していきたいものですね!
参考文献・サイト
- 保育士のキャリアパスの構築に向けて|全国保育士会
- 保育所版キャリアパスのイメージ
- 保育所設置認可等の基準に関する指針
- 保育所設置認可等事務取扱要綱
- 厚生労働省