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2025年に保育士の給料が上がる? 賃上げの理由や年収、処遇改善手当を解説

2025年に保育士の給料が上がる? 賃上げの理由や年収、処遇改善手当を解説

「2025年に保育士の給料が上がる」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。近年は保育士不足が大きな課題となっています。保育士が減っている原因の一つは給料水準の低さにあるため、国はさまざまな施策を行い保育士の賃上げを試みてきました。2025年も処遇改善により、給与の引き上げが見込まれています。

この記事では、2025年に保育士の給料が上がる理由や、保育士の年収の現状、処遇改善手当の仕組みなどを詳しく解説します。

2025年に保育士の給料は上がる?

2025年に保育士の給料は上がる?

2025年に保育士の給料が上がるといわれている主な理由には、保育士の処遇改善に関する取り組みが挙げられます。保育士の処遇改善とは、保育士不足の解消に向け、保育士の給料アップを目的に国や自治体から支給される補助金制度です。なお、支給対象となるのは認可保育施設であり、保育施設を介して支給されるため、保育士個人に直接支給されるものではありません。

2013年に処遇改善手当の支給が開始されて以降、保育士の年収は右肩上がりで上昇しています。2013年の保育士の平均年収は310万円でしたが、処遇改善手当の導入により2019年には平均年収が364万円まで上昇しました(※)。2019年以降も処遇改善は継続的に見直されていますが、2025年はより大幅な処遇改善が行われることから、さらなる保育士の給料アップが見込まれています。

※参考:厚生労働省.「保育士の現状と主な取組」. https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf ,(参照 2025-03-18)

保育士の給料が2025年に上がる理由

国が行う保育士の処遇改善により、2025年には保育士の給料がさらに上がるといわれています。給料アップに関する処遇改善内容のポイントは以下の4つです。

  • こども家庭庁が人件費を10.7%引き上げ
  • 保育士賃上げの補正予算案が可決
  • 保育園等の経営の見える化制度の実施
  • 処遇改善等加算の支給

各項目の内容を、それぞれ詳しく解説します。

こども家庭庁が人件費を10.7%引き上げ

2024年11月、こども家庭庁は保育士の処遇改善に向け、2024年度の保育士等の人件費を前年度より10.7%引き上げることを発表しました。保育士等の人件費の引き上げは、人事院勧告に伴う国家公務員の給与改定の内容に準じており、2014年度から保育士の処遇改善に盛り込まれています。なお、人件費の引き上げ幅は、2014年度から2023年度までは2.0〜5.2%で推移していたため、2024年度の10.7%は過去最大の引き上げ率です。

先述のように、処遇改善手当により保育士の年収は上昇傾向にあるとはいえ、保育士不足を解消するには保育士の処遇をさらに改善する策が急務です。2024年度の大幅な人件費の引き上げは、このような背景が理由といえます。

※参考:こども家庭庁.「令和6年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/443197f1-8796-458c-b5c8-27bb782a77d5/5061fd7a/20241218_councils_shingikai_kodomo_kosodate_443197f1_07.pdf ,(参照 2025-03-18).

保育士賃上げの補正予算案が可決

こども家庭庁は、保育士等の人件費引き上げに伴う処遇改善のための補正予算を1,150億円計上しています。2024年12月17日にこの補正予算案が可決されました。

人事院勧告による国家公務員の給与改定に準じて公定価格の引き上げを行い、対象となる保育施設への支給額を増額することで、保育士等の給料アップにつなげる仕組みです。例として、2024年の人事院勧告には以下のような内容が盛り込まれています。

  1. 初任給をはじめ若年層に重点を置いて俸給月額を引き上げる
  2. ボーナスを0.1月分引き上げる(4.5月分→4.6月分)

なお、公定価格の引き上げは2024年4月までさかのぼって行われます。

※参考:こども家庭庁.「令和6年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定」.

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/443197f1-8796-458c-b5c8-27bb782a77d5/5061fd7a/20241218_councils_shingikai_kodomo_kosodate_443197f1_07.pdf ,(参照 2024-03-18)

保育園等の経営の見える化制度の実施

保育士等の処遇改善をさらに進めるため、「保育所等における継続的な経営情報の見える化制度」が改正され、2025年4月から実施されます。これにより、施設型給付・地域型保育給付を受ける全ての施設・事業者は、以下3つの情報を公表しなければなりません(※)。

  1. 人員配置:基準上の配置と実際の配置、職員の属性情報など
  2. 職員給与:賃金水準、処遇改善状況、職員の属性情報など
  3. 収支の状況:収入・支出の科目別の金額、人件費関連科目の内訳など

新制度の実施は、対象となる保育施設の経営状況を見える化し、公定価格を改善して保育士等の賃上げにつなげることが主な目的です。経営にかかる費用の使い道を公表し、職員の給与など待遇に関する情報の透明性を高め、処遇改善の政策検討に活用します。

※参考:こども家庭庁.「新たな継続的な見える化の制度における報告・公表の在り方について」.

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c5eb8c7c-feff-491a-a91a-4fdf1d3e3a34/647fe44b/20240409_councils_kokoseido-keizokutekimieruka_semmonka_houkokusho_05.pdf ,(参照 2024-03-18)

処遇改善等加算の支給

2024年度の人件費の引き上げとは別に、保育士の処遇改善のための取り組みとして2013年から行われているのが処遇改善手当の支給です。2022年までに「処遇改善等加算」として、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3種類が支給されています。ただし、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲはそれぞれ受けるための要件や対象者、支給金額、加算割合などが異なるため、全ての保育士が3つの処遇改善等加算を受けられるわけではない点に注意が必要です。

処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの詳細は次の項目で解説します。

保育士の処遇改善手当とは

保育士の処遇改善手当とは

保育士の処遇改善手当とは、保育士の賃上げを目的とし、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの各要件を満たす保育施設に支給される補助金のことです。処遇改善等加算の要件を満たす保育施設に国や自治体から支給され、対象となる保育士の給料に加算されます。

ここからは、保育士の処遇改善手当の詳細を以下3つに分けて解説します。

  • 処遇改善等加算別・支給金額と対象者
  • 保育士の処遇改善手当の支給日
  • 処遇改善手当の支給対象外の人

それぞれの内容を見ていきましょう。

処遇加算別・支給金額と対象者

処遇改善等加算は、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの種類ごとに支給金額と対象者が異なります。以下に、処遇改善等加算の種類別に支給金額と対象者をまとめました。

処遇改善等加算の種類 支給金額 対象者
処遇改善等加算Ⅰ 給料に8~19%加算される(職員の平均経験年数に応じて支給) 全職員(非常勤職員も含む)
処遇改善等加算Ⅱ 役職や技能に応じて月額5,000~4万円がプラスで支給される 職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士など
処遇改善等加算Ⅲ 月額9,000円(給料の3%程度)が加算される 全職員(非常勤職員を含む)

詳しい内容は次の項目で解説します。

処遇改善等加算Ⅰ

2015年に導入された処遇改善等加算Ⅰは、保育士の経験年数やキャリアアップなどに応じて給料が8〜19%加算される処遇改善手当です。パートなどの非正規職員を含む全職員が支給対象となり、処遇改善等加算Ⅰの対象となる施設での勤続年数を合算した経験年数や、キャリアアップにより加算率が上がります。

処遇改善等加算Ⅰは、基礎分と賃金改善等要件の2種類に加え、キャリアパス要件で加算率が構成されます。それぞれの概要は以下の通りです。

種類 加算率
基礎分:対象施設の全てに適用 保育士1人当たりの平均経験年数に応じて2~12%加算

※1年未満は2%、10年未満までは1%ずつ上昇、10年以上は一律12%

賃金改善要件分:職員の賃上げに向けた取り組みを行う認可保育施設を対象に、基礎分に応じて加算 保育士1人当たりの平均経験年数が11年未満は6%、11年以上は7%加算
キャリアパス要件分:賃金改善要件分の対象となり、さらに職員のキャリアアップに取り組む保育施設を対象に加算 2%(賃金改善要件分に含まれる)

※キャリアパス要件に適合しない施設・事業所は賃金改善要件分から2%減算

処遇改善等加算II

処遇改善等加算Ⅱは、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士など指定の役職にキャリアアップした人に支給される処遇改善手当です。各役職の加算金額は、職務分野別リーダーが月額最大5,000円、専門リーダー・副主任保育士が月額最大4万円です。

処遇改善等加算Ⅱは、役職数が少なく、キャリアアップによる賃上げが難しい保育業界の問題を改善するため、2017年に導入されました。園長、主任以外の役職を設け、中堅保育士のキャリアアップを促進し給料に反映することで、保育士の給与面による離職防止につながります。また給料アップに加え、キャリアアップを目指すことで保育の質が向上する点もメリットです。

なお、処遇改善等加算Ⅱを適用している保育施設は、先述した処遇改善等加算Ⅰのキャリアパス要件分を満たしていることになります。

処遇改善等加算Ⅲ

処遇改善等加算Ⅲは、保育士の給料を継続的に底上げするための処遇改善です。パートなどの非常勤を含む全職員が対象で、月額平均9,000円(収入の3%)が加算されます。

もともとは、コロナ克服・新時代開拓のための経済対策に基づき、2022年から期間限定で行われていた処遇改善ですが、2022年10月からは処遇改善等加算Ⅲとして扱われるようになりました。2023年以降も引き続き公定価格に組み込まれています。

なお、処遇改善等加算Ⅲを適用するには、加算額以上の賃上げの実施や、賃金改善計画書の提出などの要件を満たす必要があります。

保育士の処遇改善手当の支給日

保育士の処遇改善手当は、保育施設が国に申請を行った上で、国がまとめて支給します。なお、支給先は保育施設になっているため、処遇改善手当の管理や割り振りを行うのは保育施設です。処遇改善手当の分配方法も保育施設が決めるため、最終的な加算金額は保育施設によって決定されます。

処遇改善手当の支給日は、給与日、給与日と別で支給、賞与の際にまとめて支給など、保育施設によって異なります。給与明細には「処遇改善手当」として基本給とは別に記載されるケースが多いようです。

処遇改善手当の支給対象外の人

処遇改善等加算は認可保育施設を対象としているため、無認可の保育施設で働いている場合は支給対象外となります。しかし、自治体によっては無認可保育施設の就労支援金や宿舎借り上げ支援など、別の形で助成を行っている場合もあります。

なお、認可園でも保育施設が国に申請を行っていない場合は処遇改善手当を受けられません。処遇改善等加算の他にも、各園の給与や独自の助成などをしっかり確認することが大切です。

保育士の賃上げに関する注意点

保育士の賃上げに関して、2025年に人件費が10.7%引き上げられることが決定していますが、この処遇改善には注意すべき点があります。こども家庭庁は、人事院勧告を踏まえ、保育士等の人件費を10.7%引き上げるとしましたが、これは前年度の人件費の改定率に対し+ 10.7%になったということであり、給料が10.7%上がるわけではありません。

さらにいうと、人件費の引き上げ分10.7%は保育士の給料に反映されるべきものですが、その配分は各園に一任されています。そのため、例えば園の経営状況や、保育士の評価などによって給料に反映される金額が変わる可能性も少なくありません。また一般的には役職に就いていたり、勤続年数が長かったりする保育士の賃金は高い傾向にあり、賃金の低い若手保育士の賃上げが優先的に行われます。つまり役職や勤続年数によっても、引き上げ幅に差が生じる可能性があるでしょう。

保育士の給与の現状

保育士の給与は、2023年の時点で平均年収と平均月収のどちらも全職種の平均を下回っています(※)。

  • 保育士の平均年収:396万9,000円
  • 全職種の平均年収:460万円
  • 保育士の平均月収:約27万1,000円
  • 全職種の平均月収:約31万8,000円

※参考:厚生労働省.「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html ,(参照 2025-03-18).

※参考:国税庁.「令和5年分 民間給与実態統計調査」.https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2023.htm ,(参照 2025-03-18).

では、保育士の給与水準はどのように推移していくのか、今後の傾向を見ていきましょう。

保育士の給与は上昇傾向にある

前述の通り、保育士の給与は2023年の時点で全職種平均に比べ低い水準です。この給与水準の低さは、保育士の離職率の増加や保育の質低下にも影響することから、長年問題視されてきました。このような状況を打破しない限り、保育士不足の解消や保育の質の向上にはつながらないため、政府は保育士の賃上げを目指し、処遇改善に一層力を入れています。

保育士の給料は、2013年に開始した処遇改善により増額が進み、過去10年間で見ると月収は約6万円増加しています。いまだ全体平均よりも低い水準ではあるものの、着実に給与の上昇傾向が見られます。先に挙げた人件費10.7%の引き上げなど、2025年以降も保育士不足の解消に向けて保育士の処遇改善に関する取り組みが進めば、さらなる給料アップが期待できるでしょう。

保育士処遇改善等加算は今後どうなる?

保育士の処遇改善等加算は、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのそれぞれが対象や支給金額などが異なっており、適用のための申請作業や事務作業も複雑です。処遇改善等加算の仕組みをより分かりやすくし、事務手続きの負担を軽減するため、2025年度より処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの一本化が進められています。

処遇改善等加算により保育士の賃上げが行われたことで、保育士の離職率の低下や、育児や他職種に携わっていた潜在保育士などの職場復帰促進が期待されています。保育施設は国からの補助金や、施設利用者の保育料などで運営されており、利益を上げにくいため保育士の賃上げが難しい業界です。そのような中で保育士の処遇改善等加算は保育士の賃上げに大きな結果を残しています。処遇改善等加算の一本化が進められている状況に鑑みても、保育士の処遇改善等加算は今後も継続する可能性が高いといえるでしょう。

保育士の給料をアップする方法

保育士の給料をアップする方法

保育士の給料をアップするには、処遇改善等加算や給料の底上げによる賃上げなど国の施策に頼るだけでなく、リーダーなどの役職に就いて役職手当を受けるのも一つの方法です。また、より年収や待遇の良い職場に転職する方法もあります。給料アップのための具体的な方法を、それぞれ見ていきましょう。

主任やリーダーなどの役職に就く

処遇改善等加算Ⅱでは、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士の役職に就くと月額最大5,000円~4万円の手当が支給されます。それぞれの役職に就くためには、以下の経験年数を満たし、職務分野の研修を必要数修了することが条件です。

役職 経験年数 必要な研修の数
職務分野別リーダー 3年以上 1つ
専門リーダー 7年以上
(職務分野リーダーの経験が必要)
4つ以上
副主任保育士 7年以上
(職務分野リーダーの経験が必要)
4つ以上
(マネジメント研修が必須)

なお、研修分野は「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食育・アレルギー」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」「保育実践」「マネジメント」の8分野があり、担当する職務分野の研修を修了することで各役職に就任できます。

年収や待遇の良い職場に転職する

処遇改善等加算Ⅱにより、中堅保育士の役職が増えたことでキャリアアップによる賃上げを目指す機会が増えましたが、現時点では役職に就くのはまだ先になる方や、役職に就いたとしても今の職場では給料が上がる可能性がさほど見込めない方も中にはいるでしょう。その場合は、より良い条件の保育施設に転職するのも一つの選択肢です。

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保育士の給料が上がる処遇改善策の仕組みを知っておこう

保育士の給料は、保育士不足の解消や保育の質向上のため、国のさまざまな処遇改善策により上昇傾向が見られます。2025年も人件費の引き上げなど、継続的な処遇改善により給料アップが期待できるでしょう。

ただし、処遇改善による加算は経験年数やキャリアアップして役職に就くことで得られる加算など、それぞれ要件が異なります。給料アップのためには、どのような処遇改善が自分に適用されるのか、具体的な支給条件などを確認することが大切です。

また、今よりも待遇の良い職場に転職するのも給料アップの選択肢になります。「保育のお仕事」では、保育士・幼稚園教諭専門の転職支援・適職紹介を行っています。非公開求人も豊富にあり、無料で利用可能です。求人の紹介はもちろん、入職準備に向けたアドバイスまで手厚いマンツーマンサポートであなたの転職・就職活動を支援します。LINEの友だち登録なら、個人情報の入力が不要で求人情報や転職に役立つ情報が受け取れますので、転職をご検討の方はぜひ、お気軽にご登録・ご相談ください。

監修者情報

礒部はるか

保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。

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