取材・インタビュー

保育士になってよかった瞬間が「ありすぎる」~夢を叶えた男性保育士が語る保育のやりがいと魅力~

東京都世田谷区に園舎を構える、ピノキオ幼児舎芦花保育園。楽しそうに遊ぶ子どもたち一人ひとりに優しいまなざしを向けるのは、油井 敏(ゆい さとし)先生。

平成25年時点では、男性保育士は全体の保育士のわずか4%(厚生労働省調べ)と、まだまだ女性が多い保育業界。そんな保育の世界に飛び込み、「保育士になりたい」という長年の夢を叶えた油井先生に、仕事のやりがいと魅力を聞いてみました!

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    *シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。

中学生時代からの夢だった「保育士」という仕事

油井先生

――油井先生が保育士を目指そうと思ったきっかけは?

子どもの頃から、年下の子たちと遊ぶのが好きだったんです。保育士は中学生くらいの時から夢見てきた、憧れの職業でした。

中学時代から、月に1度図書館で読み聞かせのボランティアをしていたのですが、それがとても楽しくて。

僕の読み聞かせを、子どもたちが目をキラキラさせて聞いてくれる。お話を読み進めるにつれて、驚いたり、笑ったり、ときには真剣な表情になったり……いろいろな反応を見せてくれる。ボランティアに行くたび、喜びや楽しさを感じていましたね。

いざ進路を考える時期になって、自分のやりたいことをいろいろと考えてみたのですが、「やっぱり子どもたちと関わる仕事がしたい!」と思い、保育の道に進むことを決めました。

子どもも保育士も「のびやか」に

――油井先生はピノキオ幼児舎に中途で入社されたそうですね

前職の園は新卒で入職しましたが、保育士として働き続けるうちに、より自分のやりたい保育ができる環境で働きたいという気持ちが出てきて、転職を視野に入れるようになりました。

当時僕の先輩だった保育士さんに相談してみたところ、たまたま先輩の元同僚の保育士さんがピノキオ幼児舎の方だったんです。

先輩が僕の話を聞いて「ピノキオ幼児舎なら油井先生の考えに合っているんじゃないかな?」と提案をしてくださったのが、僕が転職をするきっかけとなりました。

――どんなところが転職の決め手になりましたか?

僕は、大人が「こうだよ」と子どもたちを型にはめるのではなくて、子どもたち一人ひとりの興味や得意を伸ばしていけるような保育をしたいなと思っていました。

子どもたちの「やりたい」「好き」という気持ちに寄り添って、よいところを伸ばしていけるようなかかわりを目指す、ピノキオ幼児舎の「のびやか保育」というテーマには、とてもひかれるものがありましたね。

――実際に転職してみて、目指す保育は実現できていますか?

そうですね。子どもの心のありかたは日によってさまざまですから、たとえば同じ遊びや保育のプログラムでも、「やりたい!」と思う日もあれば「今日はちょっと気分が乗らないな」という日もありますよね。

やりたくない気分の子どもに対しても、「〇〇しなさい!」と無理やり強要するのではなく、そっと見守ったり、「やりたくなったらやってみようか」と提案したりと、子どもたちの気持ちに、しっかりと寄り添う保育ができているなと感じますね。

保育士さんそれぞれの得意を活かして

体を動かすのが得意な先生もいれば、ピアノが得意な先生もいる……それぞれの「得意」な部分を活かしながら活躍できているのも、今の環境の良さだと感じています。

組織として、ある程度の決まりはありますが、その枠のなかではある程度の自由に、自分のやりたい保育ができています。

子どもたちに対してももちろんですが、先生たちに対しても「のびやか」なのが、ピノキオ幼児舎の保育のよいところ。そこに魅力を感じて入社してよかったなと感じますね。

油井先生""▲「ピアノは得意ではないけれど歌は大好き!」と話してくれた油井先生。自作の歌を子どもたちと歌うこともあるのだそう

 

保育士の仕事には、他の職業では味わえない喜びがある

――「保育士をやっていてよかった」と思うときはどんなときですか?

それはもう、たくさんありすぎて……(笑)
日々ふとした瞬間にやりがいや喜びを感じますね。

たとえば、3歳児クラスの子どもたち。4月に入園してきた頃と比べると、本当にいろいろなことができるようになりました。給食で毎回残っていた野菜も、ひと口食べ、ふた口食べ……とチャレンジするうちに、いつの間にか完食できるようになっていたんです。

「あ、この子たちはこんなことができるようになったんだ」と感じたときは、本当に嬉しいものですね。同時に保育士として、「自分がやってきたことは無駄じゃなかったんだ」ということを実感するときでもあります。いわば、「日々の保育が報われる瞬間」だと思いますね。

――今まで保育に携わってきたなかで、とくに印象に残っているエピソードはありますか?

小学校に上がった卒園児に偶然会ったときに、その子が宇宙飛行士になるという夢を語ってくれたんです。そこまでなら成長を喜ばしく思う話というだけなのですが、その子が家で話していたことをお母さんが教えてくれて……。

その子は「僕、宇宙飛行士になる!だって、さとし先生が『〇〇くんなら大丈夫!』って言ってくれたもん!」とお母さんに言っていたそうです。

卒園前、僕はその子に「〇〇くんはすごいね!いろんなことをいっぱい知っているよね!卒園しても〇〇くんなら大丈夫!覚えたことを活かして、もっともっと成長していけるよ。」そう伝えていたんです。

その子は僕が言ったことをずっと覚えていてくれたんですね。それを自分の自信につなげて、今は将来の夢を持って小学校で頑張っている……。聞いた時には嬉しくて嬉しくて。思わずその場で泣いてしまいました。

保育には、大きな達成感を得られるような、素晴らしいエピソードに出会う瞬間もあれば、小さなできごとだけれど、日々の保育の積み重ねのなかで、やりがいや喜びを感じられる瞬間もある。そんな、他にはない素晴らしい仕事だと思います。

子どもと向き合う油井先生▲子どもたちの目線に立ち、笑顔で向き合う油井先生。一瞬一瞬を大切に保育にあたる姿勢がうかがえる

 

たくさんの「好き!」をもらい、与えられることの特別さ

子どもたちが保育士である自分を大切に思ってくれること、それもまた保育士という仕事ならではの魅力だと思います。たとえば、一般的な家庭においては、夫婦・親子などが互いに「一番大切な存在」になりますが、第三者がそこに介入する余地はあまりないですよね。

でも、保育士は子どもたちにとって「世界で何番目かに好きな人」になれるんです。「先生に会いたいから保育園に来るんだ」そんな嬉しいことを言ってくれる子もいます。それが自分にとって大きな励みになっていますね。

たくさんの「好き」が自分に向いて、同じようにたくさんの「好き」を子どもたちに与えることができる……その喜びや楽しさは、保育士という仕事でしか味わえないと思っています。

保育士は天職と語る油井先生▲「保育士の仕事は、僕の天職だと思っています」そう語る油井先生の満ち足りた表情がとても印象的だった

 

男性が保育士になる、ということ

――男性で保育士になるというのは、ある程度覚悟が必要なことだと感じますが、油井先生は不安や迷いはありませんでしたか?

大学時代から、給与の面で保育士は厳しいという話はよく耳にしてきました。家族を持ったときに収入面で厳しく、男性保育士が離職するケースも多いと聞いて、尻ごみする部分もありましたね……。

しかし、それでも僕にとってはずっと憧れていた職業でしたし、保育士になるために努力していました。だから諦めたくなかったんです。

もちろん、保育士という道を選ばずに、別の道に逃げることもできましたが、「どうせやるなら好きなことがやりたい!」そう思って保育士になることを決意しました。

――実際に働きはじめて、当時抱えていた不安は解消されましたか?

会社がサポートしてくれている部分も大きいので、働いてみて不安はだいぶ和らいだように思います。当時は「辞めることならいつでもできる」と飛び込んだ保育の世界ですが、今となっては保育士を辞めることは一切考えていませんね。

とはいえ、将来のことを考えたときに、やはり収入がネックになることは、ずっと意識のなかにありました。たとえば「家庭を持ちたい」と考えたら、どうしてもある程度の収入は必要になってきますよね。

ピノーコーポレーションでは積極的にキャリアアップを後押ししてくれるので、将来的には必要に応じてキャリアアップの道も視野に入れて、取り組んでいこうと思っています。

男性だからこそ保育の幅を広げられることもある

――まだまだ数の少ない男性保育士さんですが、保育においてどのようなことが求められると思いますか?

体を動かすのが得意な先生、力もちな先生、子どもの目線に立って無邪気に遊びにかかわることのできる先生……男性の保育士の割合は、業界全体では決して大きくはありませんが、男性が「得意」とする部分を活かせる場面はたくさんあると思います。

保育は保育士自身の人生経験や、子ども時代に遊んできた体験をもとに、ある程度自由に組み立てることができるもの。だから、男性ならではの発想や、遊びの体験があれば、保育の幅は、より広がるはずです。

それは男性保育士の強みでもあり、これからの保育において、求められるものでもあると思いますね。

今「辞めようかな……」と悩んでいる男性保育士さんへ

――男性の保育士さんのなかには、離職を検討する方も多いと聞きますが、そんな男性保育士さんに声をかけるとしたら、どのようなことを伝えたいですか?

難しいですね……。この仕事を「辞めようかな」と思う理由は、人それぞれ違うでしょう。給与の低さであったり、仕事の負担の大きさだったり、場合によっては、まだまだ女性が大半の職場環境のなかで自分の居場所が見いだせずに、ストレスを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、致し方ない理由もあると思いますが、もしも今、辞めようかどうか迷っているならば、「保育を辞める」のではなく、違った職場を探すという方法もあることを伝えたいなと思います。保育士を辞めるかどうかではなく、どのような職場で働くかであれば、その選択の幅はずっと大きいはずですから……。

男性が保育士という仕事を選ぶのには、相当の覚悟が必要だと思います。しかし、それでも「やりたい!」という気持ちを持って飛び込んできてくれた方には、やはり、できれば保育を諦めてほしくないな、とは思いますね。

インタビュー風景▲一語一句、言葉を選ぶように思いを話してくれる油井先生

 

保育士の魅力は、なんといっても「楽しさ」

――最後に、同じように男性保育士として頑張っている方へ、メッセージをいただけますでしょうか

保育士という仕事の一番の魅力は、その「楽しさ」だと思うんです。もちろん楽しいことばかりではないし、時には逃げ出したくなることや、立ち直れないくらい落ち込むこともあります。でも、最終的に「報われる部分」はとても大きい。

どんなに大変なことがあっても、「やっぱり保育は楽しい」と感じることが多々あります。

僕も朝、出勤前に「今日は休みたいな……」と思うこともたまにはあるのですが、それでも子どもたちが登園してきて、僕を見て笑いかけてくれる。だからこそ「よし! 今日も頑張るぞ!」という気持ちになります。

これって、大人が相手の他の職業では、なかなか味わえないことですよね。

子どもたちがもつやわらかな心に触れながら仕事ができる、というのは、保育の世界に身を置いていれば「あたりまえ」のことのように感じますが、本当はとても特別なこと。

そんな保育の魅力・長所を大切にしながら、ともに保育を楽しんでいけたらいいなと思いますね。

油井先生の保育風景▲子どもたちと接する油井先生。自然で本当に楽しそうな笑顔からは、保育に対する思いの深さが感じられた

 

編集者より

園児のイラスト
まだまだ女性社会であるといわれる保育業界。しかし今回、男性保育士である油井先生にお話をうかがい、保育に対する思いや子どもに対する愛情に、性別は関係ないことをあらためて感じました。

世の中では謂われなき偏見に悩んでいる男性保育士さんもいると聞きます。しかし、「処遇に課題があっても、女性が大半の職場でも、それでも保育がやりたい!」という熱い気持ちを持って、真剣に保育と向き合いながら活躍している男性保育士さんは、油井先生だけでなくたくさんいることでしょう。

今回取材させていただいたピノキオ幼児舎のように、男女の別にかかわらず、保育士さんが安心して働ける。そして保育の楽しさを存分に感じることができる……保育業界全体としてそのような環境が整っていけばよいなと、今回の取材を通して強く思いました。

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※この取材記事の内容は、2018年10月に行った取材に基づき作成しています。

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