保育ノウハウ

障害児施設で働くにはどのような資格がいる? 対象施設や特徴、仕事内容を紹介

保育士として働いていると、何らかの障害がある子どもに関わる機会も増えていきます。そのような経験から障害児保育に携わりたいと考え、障害児施設で働くことを希望する方もいるでしょう。障害児施設で働くために、資格は必ずしも必須ではありませんが、保育士資格をはじめ、障害児施設で働くときに持っていると役立つ資格はさまざまあります。

本記事では、障害児施設で働く際に取得しておくと有利な国家資格や民間・任用資格を具体的にご紹介します。障害児施設の種類や特徴、主な仕事内容についても説明しているので、障害児施設への転職を希望する方は、ぜひ参考にしてください。

【この記事で分かること】

  • 障害児施設で働く際に役立つ資格
  • 障害児施設の種類と特徴
  • 障害児施設の主な仕事内容

障害児施設とは

障害児施設は、身体や知的、精神に障害がある子どもが利用できる児童福祉施設です。これらの施設では、日常生活に必要な動作を身に付ける生活訓練や、将来の自立を目指すためのサポートが行われています。例えば、食事や着替えの練習、集団での行動、言葉のやり取りの練習などが挙げられます。

以前は知的障害児施設など、障害の種類ごとに施設が分かれていましたが、2012年の児童福祉法改正により、入所型の施設は「障害児入所施設」に、通所型の施設は「障害児通所支援」としてそれぞれ一元化されました。これにより、施設職員には多様な障害特性への理解と柔軟な対応力が求められるようになっています。

障害児施設で働く際に役立つ国家資格

障害児施設で働くために必須の資格は特にありませんが、取得していると役立つ資格がいくつか挙げられます。ここでは、持っていると障害児施設で働く際に有利となる国家資格を5つご紹介します。それぞれの特徴や取得方法をチェックしていきましょう。

  • 保育士
  • 公認心理師
  • 理学療法士(PT)
  • 作業療法士(OT)
  • 言語聴覚士(ST)

【監修者・礒部はるかのアドバイス】
障害児施設で働く際は、保育士や公認心理師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった国家資格があると大きな強みとなります。有資格者は専門的知識を生かして、子どもの生活支援や心理ケア、身体機能の回復、コミュニケーション支援など多角的なサポートが可能になるため、現場で重宝されます。資格取得にはそれぞれの要件や試験合格が必要で、継続的な学びや実務経験も求められますが、長く保育・福祉分野で活躍し続けたい人は挑戦してみましょう。

保育士

保育士は、保育に関する専門知識や技術を有し、子どもや保護者へ保育指導を行う国家資格です。保育園や保育所で働くケースが多いですが、障害児入所施設や児童発達支援センターなどでは、施設ごとに最低1名の保育士の配置が義務付けられているため、転職の際も強みになります。

保育士の資格を取得するには、指定保育士養成施設を卒業する他、保育士試験を受験して合格するという2つの方法があります。保育士試験の場合は受験資格の要件を満たしていれば、受験が可能です。試験は筆記と実技があり、前期と後期の年2回実施されます。保育士資格は一度取得すれば更新の必要もなく、一生ものの資格として役立つでしょう。

公認心理師

公認心理師は、心理学に関する専門的知識と技術を有する国家資格の心理専門職です。障害児施設では、障害のある子どもやその家族に対して、カウンセリングや心理アセスメント(心理検査や行動観察など)を行い、心の支援を行います。また福祉にとどまらず、医療や教育など多様な分野で活躍できるのも特徴です。

公認心理師になるためには、公認心理師試験に合格する必要があります。公認心理師の受験資格を取得するには、4年制大学で指定された科目を履修し、卒業後は指定大学院で定められた科目を履修、修了することが条件です。あるいは大学卒業後に認定施設で2年以上の実務経験を積むことで国家試験の受験資格を得られ、試験に合格すると公認心理師として登録されます。

理学療法士(PT)

理学療法士(PT)は、病気やけが、障害などによって運動機能が低下した方に対してリハビリテーションを行う専門職です。理学療法により、子どもの身体機能の回復や維持をサポートし、日常生活の自立につなげる役割を担っています。

資格の取得条件は、4年制大学や3年制短期大学、専門学校などの養成校で必要な知識や技術を3年以上学ぶことです。受験資格を満たしたら国家試験を受験し、合格することで理学療法士の資格が得られます。

なお、すでに作業療法士の資格を取得している場合は、2年以上の課程で受験資格を得ることが可能です。

作業療法士(OT)

作業療法士(OT)は、運動機能や認知機能に障害のある方を対象に、日常生活に必要な動作の訓練や支援を行う専門職です。障害児施設では、食事や着替え、遊びなどの作業を通じて、子どもが自分らしく生活できるようサポートします。

作業療法士の受験資格を得るには、養成課程のある大学や作業療法士養成施設で3年以上学ぶことが条件となります。国家試験の合格率は約80%と高く、日常生活に直結した支援を通して、子どもたちの「できる」を増やしたい方におすすめの資格です。

言語聴覚士(ST)

言語聴覚士(ST)は、言語や聴覚、発音、認知機能などに障害がある方に対し、リハビリテーションを行う専門職です。障害児施設においては、子どもの発語や理解力、聞き取りの力など、コミュニケーションに関する課題の改善をサポートします。また食べる・飲み込むといった口腔機能に関する専門知識も持っており、摂食や嚥下の指導も担当分野です。

資格を取得するには、文部科学大臣が指定する学校や養成所で定められた課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。試験に合格後、厚生労働大臣の認定を得ることで、言語聴覚士として働くことが可能です。

障害児施設で働く際に役立つ民間・任用資格

障害児施設で働きたい方におすすめの資格には、国家資格の他に民間資格や任用資格もあります。ここでは、障害のある子どもの心身の両面をサポートするために役立つ6種類の資格をご紹介します。実務経験や得意分野などを考慮しながら、自分に合う資格を選択しましょう。

  • 児童発達支援管理責任者
  • 児童指導員任用資格
  • 臨床心理士
  • 児童発達支援士
  • 発達障害児支援士
  • 子ども発達障害支援アドバイザー

児童発達支援管理責任者

児童発達支援管理責任者(通称・児発管)は、障害のある子ども一人ひとりに合わせた「個別支援計画」を作成し、療育支援の内容や方向性をリードする役割を担う専門職です。放課後等デイサービスや児童発達支援などの施設では、必ず1名以上の配置が法律で義務付けられており、施設運営の中核を担います。

資格を取得するには、保育士や児童指導員任用資格などの資格がある場合は直接支援業務が5年以上、無資格の場合は障害者・障害児支援施設における相談支援業務の実務経験が5年以上必要です。加えて、所定の研修を修了することで任用資格として認定されます。支援チームのまとめ役としての責任も大きい一方で、子どもの発達に深く関われる、やりがいのある資格です。

児童指導員任用資格

児童指導員任用資格は、障害児施設や放課後等デイサービスなどで、保護者に代わって子どもの生活指導や遊びの支援を行う任用資格です。子ども一人ひとりの個別支援計画や事業所のカリキュラムに沿って、学習や運動、社会性の発達を支援します。

資格の取得に試験は必要なく、要件を満たすことで付与されるのが特徴です。具体的には、大学で社会福祉学や心理学などを専攻して卒業した方や、指定養成施設を卒業した方、福祉系の実務経験が2年以上かつ360日以上ある方などに付与されます。児童指導員は、実務経験を重ねながらスキルアップを目指せる現場密着型の資格です。

臨床心理士

臨床心理士は、臨床心理学に基づき、心の問題に専門的に対応する民間資格の心理職です。障害のある子どもやその家族に対して、心理的な支援や指導、助言を行い、安心して生活できる環境作りを支えます。

臨床心理士になるには、指定大学院または専門職大学院を修了し、日本臨床心理士資格認定協会が実施する資格審査に合格する必要があります。また臨床心理士には5年ごとの更新制度があり、継続的な研鑽も欠かせません。心理面から子どもの成長や家庭の安定を支援したい方に適した専門資格です。

児童発達支援士

児童発達支援士は、人間力認定協会による民間資格で、発達障害のある子どもを対象とした支援に関する専門的な知識を持つと証明できる資格です。脳科学や心理学に基づいたアプローチを取り入れ、子どもの行動や特性を理解した上で適切な関わり方を実践できます。

障害児施設では、支援の質を高めるための補助的な資格として活用されています。受験資格に制限はなく、誰でもチャレンジできる点が特徴です。教材などを用いた学習後、オンライン試験で70%以上の正答率を達成すれば合格となります。

発達障害児支援士

発達障害児支援士は、日本発達障害支援協議会が認定する民間資格です。資格の取得により、発達障害のある子どもに対する適切な関わり方や支援方法を習得しているとアピールできます。資格取得の過程で、障害児施設での実践に役立つ知識や対応スキルが身に付くため、現場で働く支援者や保護者からも注目されています。

この資格は、通信講座の受講後に、認定試験を受けることで取得可能です。受講や受験に当たって特別な条件はなく、発達障害児の支援や指導に関わる全ての方が挑戦できます。受講内容はオンラインによる講義動画の視聴がメインのため、自分のペースで勉強を進められる点も魅力です。

子ども発達障害支援アドバイザー

子ども発達障害支援アドバイザーは、発達障害のある子どもに対して適切な関わり方や支援方法を学ぶ、初学者向けの民間資格です。資格取得に向けた勉強の過程で、子どもの発達や特性を理解し、家庭や施設など日常の場面で成長に合わせた具体的なサポート方法を身に付けられます。

発達凸凹アカデミーが資格の認定をしており、発達障害に関する基礎知識や支援の実践力を習得することが目的です。資格は通信講座で取得可能で、学習後に修了認定試験をクリアすると資格が取得できます。受講に当たって特別な条件はなく、保護者や教育・福祉関係者、未経験者でも取り組みやすいのが特徴です。

障害児施設の種類と特徴

障害児施設と一言でいっても、施設にはさまざまな種類があります。入所型施設は大きく分けると福祉型と医療型に分類され、通所型施設も子どもの発達段階やニーズに応じて複数の種類に分かれています。ここでは、それぞれの施設の特徴や仕事内容、働く際に必要資格などをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 福祉型障害児入所施設
  • 医療型障害児入所施設
  • 児童発達支援センター・児童発達支援事業
  • 医療型児童発達支援センター
  • 放課後等デイサービス

福祉型障害児入所施設

福祉型障害児入所施設は、家庭での養育が難しい障害のある子どもを対象とした、入所型の児童福祉施設です。主に知的障害や発達障害のある子どもが利用する施設で、職員は生活の場として衣食住を提供する他、日常生活の基本的な動作や生活習慣の指導、機能訓練などを行います。集団生活を通じて社会性を育みながら、将来的な自立を目指す支援が特徴です。

職員には、児童指導員任用資格や保育士、介護福祉士などの資格が生かせ、子どもの発達段階に応じた柔軟な支援が求められます。子どもたちが安心して過ごせる環境作りが重視されており、医療機関や学校と連携しながら支援が行われるケースもあります。

医療型障害児入所施設

医療型障害児入所施設は、福祉型障害児入所施設が持つ生活支援の機能に加えて、治療や看護といった医療的ケアも提供できる入所施設です。主に肢体不自由や重度の知的障害、慢性疾患などを抱える子どもに対し、日常生活の支援だけではなく、医療的ケアやリハビリテーションも提供します。

施設には医師や看護師、理学療法士などが常駐し、子どもの身体的・精神的な状態に応じた専門的な対応が行われるのが特徴です。職員には、保育士や児童指導員の他、医療系資格を持つスタッフの配置が求められます。

児童発達支援センター・児童発達支援事業

児童発達支援センターは、障害のある子どもや発達に特性のある未就学児(診断前の子どもも含む)に対し、通所による療育を中心に、相談支援・訪問支援・地域支援などを総合的に行う通所型の事業所です。子ども一人ひとりの発達段階や家庭状況に応じて個別支援計画を立て、保護者への助言や支援機関との連携も担います。

一方、児童発達支援事業はより地域に根ざした小規模な事業所が多く、家庭からの通所のしやすさがメリットです。働く際は資格がなくても大丈夫な事業所もありますが、多くは保育士、児童指導員任用資格、作業療法士、言語聴覚士などの専門資格が求められます。両事業所とも、身近な療育の場として重要な役割を果たす施設です。

医療型児童発達支援センター

医療型児童発達支援センターは、児童発達支援の機能に加えて、医学的な治療や看護を提供する通所型の事業所です。発達の遅れや体幹機能などの障害があり、医療的なサポートが必要な子どもたちが対象となります。理学療法や作業療法、言語訓練などの機能訓練をはじめ、医師の診察や看護師による健康管理が受けられるのが特徴です。

保育や療育を担当する職員には、保育士や児童指導員任用資格、理学療法士、言語聴覚士などの専門資格が必要となります。医療と福祉の連携によって、子どもたちが安心して成長できる支援環境を提供することが目的です。保護者への助言や支援も含め、地域の中核的な支援拠点として重要な役割を担っています。

なお、2024年4月の改正児童福祉法の施行によって、児童発達支援センターの福祉型・医療型の類型が一元化され、「児童発達支援センター」として統一されました。ただ、この変更には経過措置期間が設けられており、2027年3月31日までの間は、一元化前の人員・設備による支援が認められています。

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、障害や発達に特性のある小学生から高校生までの子どもを対象に、放課後や夏休みなどの長期休暇中に支援を行う通所型の福祉サービスです。学校が終わった後の時間に、子どもたちに安全な居場所を提供するとともに、生活スキルや社会性の向上を目的とした活動を行います。

施設には従来型の他、運動を通じて発達を支援する運動療育型や、学習面の支援に特化した学習支援型など、子どものニーズに応じたさまざまな形態があります。働くには、保育士や児童指導員任用資格、作業療法士などの専門資格があると有利です。

障害児施設の主な仕事内容

障害児施設での仕事内容は、施設の種類や支援対象の子どもによって異なります。入所型の施設では、職員は日勤と夜勤に分かれてシフト勤務となるのが一般的です。日中は食事や排せつの介助、衣類の着脱などの生活訓練や、学習支援、遊びの時間を通じて、子どもたちの発達や自立をサポートします。夜勤の場合には、就寝の準備や夜間の見守り、対応も含まれます。

一方、通所型の施設では放課後や休日を中心に活動を行い、療育やレクリエーションが中心です。いずれの施設でも、子ども一人ひとりの個性や発達段階に合わせた支援が求められ、観察力や柔軟な対応力が必要となります。

【監修者・礒部はるかのアドバイス】
障害児施設では、日常的な生活支援だけではなく、保護者との連絡調整や多職種とのチーム連携も重要な仕事です。また日々の療育・保育では、子どもの成長や変化を丁寧に記録し、支援計画に生かすことも求められます。子ども一人ひとり特性が異なるため、知的障害、発達障害、身体障害に関する専門知識や、個々に合わせた柔軟な対応力も必要です。根気強さが必要ですが、その分、子どもたちの成長を近くで見守れる喜びは大きいです。

障害児施設で働くなら資格があると有利

障害児保育や療育支援を行う障害児施設は数多くあり、施設の種類や支援対象によって働き方や仕事内容が異なります。保育士資格をはじめ、児童指導員任用資格や専門的な支援資格があると、支援の幅が広がり、転職にも有利となるでしょう。

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監修者情報

礒部はるか

保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。

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