2019年(令和元年・平成31年度)の後期保育士試験が、いよいよ近日に迫ってまいりました。
筆記試験まであともう少し。保育士を目指している方は今、試験勉強の真っただ中にあるのではないでしょうか。
数ある国家資格の中でも、合格率が低いことで有名な保育士。
今回の記事ではそんな保育士試験の本番に先立って、「保育士試験の対策」についてまとめてみたいと思います!
そもそも、保育士試験って?
保育士試験は厚生労働省が管轄している国家資格試験で、前期・後期に分けて1年で2回行われる試験です。保育士免許を取得して保育士として働くための手段のひとつで、多くの人が毎年試験に挑戦しています。
保育人材の確保を図るため、平成28年度から試験実施が年2回に増えました。前期は春に筆記試験・夏に実技試験、後期は秋に筆記試験・冬に実技試験が行われます。
勉強を始める時期にあわせて、受験タイミングを考える必要がありますね。
天災で試験が中止になってしまう……?
保育士試験を行っている一般社団法人 全国保育士養成協議会のホームページには、
自然災害等により試験が中止となった場合、再試験は行いません。
といった文言が記載されています。
実際、2018年7月に実施されるはずだった沖縄県の保育士試験は、台風の影響によって一度は中止ということになってしまいました。
参考:FNNPRIME「保育士試験が台風で中止…“再試験なし・返金なし”に200人の受験者「何とかして!」」
記事によれば、再試験を行わない理由は「予備の試験問題を用意できない」ため。
保育士試験が年に2回行われるようになったことで、予備問題を作るための時間を確保できなくなってしまったためです。
ただ、このケースは再試験を希望する受験生たちが声を上げ、メディアにも取り上げられたことで、例外的に再試験の日程が一か月後に組まれることになりました。
参考:【続報】「何とかなった!」保育士再試験の実施決定 受験生の“嘆き”届いた
2018年は島根県や大阪府、北海道で大きな地震があったり、台風が直撃したりと天災に多く見舞われる年になりました。
これからも注意が必要ですね。
保育士試験の内容
保育士試験には8科目9教科におよぶ筆記試験と、3種のうちから2種選択する実技試験があります。
教育原理および社会的養護「教育原理」は教育の概念や法令・理論など
「社会的養護」は児童養護の概念や制度、施設について学ぶ
保育原理 | 保育所保育指針を中心に、保育の基本を学ぶ |
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保育の心理学 | 保育に必要な心理学の知識を学ぶ |
児童家庭福祉 | 児童福祉の意義や法律・制度を中心に、児童の現状や社会問題を学ぶ |
社会福祉 | 社会福祉全般に関する法律・理念・実施サービスなどを学ぶ |
子どもの保健 | 「小児保健」と「精神保健」を合併させた科目。 人間の発達段階に基づき、小児の健康に影響する事柄や知識を学ぶ |
子どもの食と栄養 | 子どもの栄養に関する基礎的知識のほか、食生活における教育や実践を学ぶ |
保育実習理論 | 楽典の知識や絵画制作の用語など、保育に関する知識と保育所保育指針の内容を学ぶ |
音楽表現 | ピアノ・ギター・アコーディオンいずれかの楽器で弾き語り |
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造形表現 | 課題を元に色鉛筆による絵画を制作 |
言語表現 | 課題を元に3分間の素話 |
合格率は毎年おおよそ20%台。近年では少しずつ上昇傾向にありますが、それでもまだ高いとは言えません。
多岐にわたる分野の科目のすべてで6割以上正解しなくてはいけない保育士試験は、一発合格がなかなか難しいのです。一度合格した筆記試験科目は合格した年から3年以内であれば再受験の際に免除されるため、中には複数回に分けて合格を目指す人もいます。
しかし複数回に分けると、その回数分の受験料を支払わなければいけません。できることなら一発合格を狙いたいですよね。
勉強を始めるその前に!免除科目に注意
過去3年以内の保育士試験で合格した科目は免除される、ということは先述しましたが、それ以外にも保育士試験には免除科目が存在します。
それが、「幼稚園教諭の免許を持ち、4320時間以上の実務経験を有している」場合です。この場合、免除申請をすることで「保育の心理学」「教育原理」そして「実技試験」が免除されます。
少しでも効率的に勉強して合格するためにも、自分が免除対象なのかどうかは事前に調べておきましょう。
どう対策する?保育士試験~筆記試験~
保育士試験の合格率を下げている原因こそこの筆記試験。厚生労働省「保育士試験の概要」によれば、筆記試験の合格率は例年20~25%をマークしています。(最高:平成26年21.3%、最低:平成22年度12.9%)
8科目すべてで6割以上正解しないといけないこの試験、どのように対策すればいいのでしょうか?
8科目を一気に学ぶ
保育士試験の筆記試験は科目が多いため、ひとつひとつ進めていくと最初の方に勉強した事柄を忘れてしまう……といったことが起こり得ます。そのため、できるだけ一気に勉強するのが望ましいでしょう。
期間を設ける
人間のモチベーションを長時間持続させることは大変難しいです。何年もかけてだらだら勉強するより、短期集中で打ち込んだ方が良い結果が出ることもあります。
実際に保育士試験に一発合格している人のブログを見てみると、3カ月や5カ月といった期間での勉強で成果を出していることがわかります。
残りの2カ月で過去問を2回、予想問題集を1回解く。
残りの3ヶ月:問題集で練習(アウトプット)
がおすすめです。
すでにかなり勉強を進めている方は、「問題集で練習」の時間を多めにとるといいですよ✿
試験で必要なのは、インプットよりアウトプット。
参考:独学・半年以内で合格するコツ!保育士試験残り5ヶ月の勉強法
過去問を活用する
過去問題集は、試験の雰囲気を知るために利用します。ただ解いていれば合格できる……というわけではなく、「この問題は毎年出ている定番だな」「ここは時事問題が絡んでくるのかな」「最近改正された制度をチェックしておかなくちゃ」など、今年の試験問題を予想するために活用するのです。
過去3年くらいのものを解いておけば、おおむね雰囲気はつかめるでしょう。
特に試験日が近い時には、ひたすら問題を解きなおすアウトプットの作業が重要になります。
寸前に新しい知識を詰め込むよりも、基礎がきちんと身についているかブラッシュアップする方が大切。過去問を解き、間違えた部分の解説をしっかり読んで、同じ間違いをしなくなるまでしっかり解きなおしましょう。
直前対策講座を利用する手も
自分一人での勉強に不安を感じたら、保育士試験の対策講座を受講してみるのもひとつの手です。
講座によっては過去問題の傾向を分析した特別教材を手に入れることもできるので、自主勉強だけでは不安だという場合には利用してみるのもよいでしょう。
どう対策する?保育士試験~実技試験~
厚生労働省「保育士試験の概要」によれば、実技試験の合格率は例年70~80%をマークしています。(最高:平成25年89.3%、最低:平成19年73.4%)筆記試験に比べると、かなり高い数字であることがわかりますね。
しかし、油断は禁物。合格率の高かった平成25年度の試験でさえ、裏を返せば10.7%は不合格になっているのです。実技試験で合格できなければ、せっかく筆記試験を突破してもまた半年待たなければいけなくなります。
実技試験の対策も、しっかりしておきましょう。
音楽表現
子どもに歌って聞かせることを想定して、課題曲を弾き語りします。
ここで重要なのは難しい楽譜を間違えずに弾く力ではなく、子どもの様子を見ながら笑顔で演奏できる力。実務に沿った採点がなされるため、本番に少しでも緊張しないよう、しっかり練習して子ども達を見られる余裕を作っておきましょう。
- 対策ポイント
- ・自分のレベルに合わせた楽譜を選ぶ、もしくは楽譜をアレンジする
試験で使用できる楽譜は市販のものか、受験申請書に添付されている楽譜を編曲したものです。
・子ども達と一緒に歌うことを意識した練習をする
家族や知人などに聞いてもらいながら練習するのもよいのではないでしょうか。そこに子どもがいればますます望ましいですね。
造形表現
問題文のワンシーンを、条件を満たしながら絵で表現する試験です。
保育士は壁面装飾やおたより・行事にかかわる制作など、絵に関わる機会が多くあります。そのため、パッと見てわかりやすく、登場人物やキャラクターがいきいきしている明るい絵であることが重要です。
試験では「人物や情景を豊かにイメージした色使い・描写ができるか」をチェックされています。
- 対策ポイント
- ・保育現場によくあるものを練習する
男の子や女の子・保育士をはじめ、保育園にある机や椅子、公園の遊具を描けるようになっておくといいですね。
言語表現
3歳児20人のクラスを対象に、3分間で素話をする想定で行われます。
子どもが集中して聴けるような適切な話し方、声の出し方や表現の技術をチェックされています。子どもを飽きさせない題材選びやアレンジ力、目線や抑揚・テンポなどの工夫が重要ですね。
- 対策ポイント
- ・素話のコツについてはこちら→保育士が覚えておきたい「素話」のイロハ
人に見せることが前提となっている実技試験。その対策は、独学だけでは改善点を見つけるのが難しいこともあります。やっているところをチェックしてくれる存在がいるのが望ましいですね。
実技試験の対策講座を受講してみるのもひとつの手でしょう。
編集者より
平成30年度の後期保育士試験 筆記試験は10月20日(土)・21日(日)。
ここで合格して保育士免許を取得しよう、と考えている受験者の方も多いのではないでしょうか。ぜひ万全の準備をして、挑んでいただきたいと思います。
夢に向かって、頑張ってくださいね!
参考文献・サイト
- 保育士の実技試験内容をチェック!音楽・造形・言語表現って?(2017/11/15)
- 厚生労働省「保育士試験」(2017/11/15)
- 全国保育士養成協議会「保育士試験とは」(2017/11/15)