退職する際には、できるだけトラブルなく円満に職場を後にしたいものですよね。
しかし退職を検討している保育士さんのなかには、
「退職を切り出したいけれど、人間関係が悪くなりそう……」
「退職を認めてもらえるのか心配……」
など、退職をなかなか切り出せずに困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は「円満退職」のメリットから、実際に円満退職をするためのポイント、注意点などについてじっくり紹介していきます。
円満退職のメリットとは?
「円満退職」とは、労働者である保育士さんと雇用主である事業者(園)とが、おたがいに退職に合意し、円滑に退職の手続きを済ませることを言います。
どんな保育士さんも「できることならば円満に退職したい」と思うものですが、次のような理由で職場とトラブルになってしまう事例も少なくありません。
- 退職意思を伝えたら、引き止められて園と揉めてしまった
- ほかの職員から「迷惑だ」「自分勝手だ」などと言われ、つらい思いをした
- そもそも退職願を受け取ってもらえない……
職場とトラブルになった場合でも退職すること自体は可能ですが、円満退職には次のようなメリットがあります。
- 退職日まで職場の人間関係を円滑に保てる
- 退職手続きや業務の引継ぎがスムーズに行える
- 退職後も園とつながりが持てる
- 業界内に悪評が立つリスクを軽減できる
- 退職後、書類不備などがあった場合に連絡しやすい
- 気持ちよく新たなスタートを切ることができる
気持ちよく再スタートを切るため、そしてその園での経験や思い出をポジティブなものとして心にとどめるためにも、できるだけ「円満退職」を心がけることが重要です。
それでは、保育士さんが円満に退職するために必要な7つのポイントをご紹介しましょう。
【1】退職時期を検討しよう
保育士さんの場合、年度ごとの担任制や行事の兼ね合いを考慮して、退職時期をよく検討することが不可欠です。
保育士さんの退職でもっとも多いのは、年度末(3月末まで)で退職するパターン。
年度末は業務の引継ぎや人員体制の見直しが比較的しやすいため、職場やほかの職員の負担を最小限にできます。
もちろん心身の不調や転居など、やむを得ない事情がある場合には、かならずしも年度末にこだわる必要はありません。
ただし、そのようなケースであっても、運動会や生活発表会といった大きな行事の前に退職するのはできるだけ避けたほうがよいでしょう。
- できるだけ年度末など任期の節目を退職時期に選ぶ
- 年度末退職が難しい場合には、大きな行事前を避ける
【2】いつ退職を切り出すべきかを考えよう
「退職する」と決めたらすぐにでも退職願を提出したい気持ちになるかもしれませんが、いったん冷静になって、「いつ退職意思を伝えるべきか」を検討しましょう。
民法上では2週間前までに伝えればOKだけど……
民法上では、雇用契約で定められていない場合には退職日の2週間前までに退職の意を伝えればよいこととなっています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)
しかし円満退職を目指すのであれば、2週間前に退職を願い出るのでは遅すぎます。
年度末ならば前年のヒアリング時に
園によって異なりますが、前年の夏~秋ごろに就業を継続するかどうかのヒアリングが行われるケースが多いです。
その段階で転職が決まっている、年度末に退職して転職活動に専念するなどの意思が固まっていれば、きちんと伝えておくとよいでしょう。
できれば2~3ヶ月前までに伝えよう
年度末以外の退職であっても、できるだけ退職希望日の2~3ヶ月前までには退職意思を伝えておくようにしましょう。
保育士さんの場合、担当しているクラスの子どもの状況や日々の保育活動の内容など、引継ぎを行う項目が多いです。
後任者に余裕をもって伝達・指導を行うためにも、ゆとりをもって退職を伝えるべきでしょう。
ただし自身や家族の病気、ストレスによる不調が顕著な場合などには、正直に事情を話してなるべく早めに退職させてもらえるよう交渉することも必要ホィ。
- 年度末退職であれば前年のヒアリング時に意向を伝えておく
- 退職希望日の2~3ヶ月前までには伝えておくとベター
- 基本的には就業規則に従い、少なくとも1ヶ月前までには伝える
【3】退職理由を検討して上司に伝えよう
「職場の人間関係がストレスで……」
「給与が低すぎてやっていけない」
「残業が多すぎる!」
といったネガティブな理由で職場を辞めることにした方も少なくないでしょう。
しかし、退職意思を伝える際には、かならずしも理由を正直に話す必要はありません。
たとえば
本音 | 職場の〇〇さんとそりが合わず、毎日ストレスなため |
建前 | 将来のキャリアを考えて、〇〇といった経験も積んでみたいと思ったため |
本音 | 残業が多いのに給与が低すぎて限界! |
建前 | 体力的に限界を感じ、ほかの職種に移るという選択をしたいため |
など、個人的で当たり障りのない理由を伝えると、上司に納得してもらいやすくなります。
退職に意思が固いのなら、話題に出さないほうがスムーズに話が進む可能性が高いホィ。
くわしくはのちほど紹介するね!
退職意思は「直属の上司」に伝える
伝える退職理由を決めたら、まずは主任など直属の上司に退職を切り出しましょう。
いきなり園長や理事長に退職願を提出してしまうのはNG!
トラブルを避けるためにも、まずは直属の上司に「すこし相談があるのですが、お時間をいただけますか?」などと切り出すようにしましょう。
退職願の提出が必要な場合は……
退職願は提出を不要とする園もありますが、必要な場合には退職が正式に認められたあとに提出します。
提出先は職場によって異なるため、上司に確認をするようにしましょう。
フォーマットが用意されている場合以外は、基本的に自由形式。
B5用紙に黒の万年筆などで記入するのが一般的です。
退職願以外にも「退職届」「辞表」などもありますが、これらの書類は事情によって使い分けが必要です。
提出するのは基本的に「退職願」ですが、公立保育園の保育士さんか私立保育園や幼稚園の先生かによっても使う書類が変わってくるので注意しましょう。
退職で提出する書類の違い | |
---|---|
退職願 | 基本的に自己都合で仕事を辞める場合に使用する。 |
退職届 | 基本的に会社都合で仕事を辞める場合に使用する。 |
辞表(辞職願) | 公務員や役職に就いている場合で仕事を辞める際に使用する。 |
【4】業務の引継ぎを行う
退職が正式に認められたら、退職にむけて必要な業務の引継ぎを行いましょう。
ただし、業務の引継ぎを正式に行うのは退職が職場全体に公表されてからが基本。それまでは手持ちの資料を整理するなどの準備をしておきます。
引継ぎには余裕をもって
役職業務や壁面・行事といった担当がある場合はもちろんですが、通常の保育業務であっても、次のようなことを引き継ぐ必要があります。
- 児童・家庭の状況
- 担当している子どもの発達状況や健康状態、家庭環境について共有されていることなど
- 日々の保育内容
- 1日のおおまかな流れや、クラスの子ども達が好んでやっていることなど
- 備品の管理状況
- 保育に必要な備品がどこに保管されているのか
- 退職後に必要な業務
- 退職日以降にやるはずだった未処理業務や、保護者に伝達が必要な事項など
担当している業務や役職によっても大きく異なりますが、保育士さんの業務の引継ぎには1ヶ月ほどかかることがほとんど。
のちに後任者が見返すことができるように、重要事項は書類にまとめて渡しておくとよいでしょう。
【5】お世話になった人にはきちんとあいさつを
職場でお世話になった人や担当クラスの保護者、子ども達には退職の前にきちんとあいさつをしておきましょう。
退職日当日は、諸手続きや荷物の確認などで忙しいもの。
事前に計画を立てて、なるべく全員にこれまでお世話になったお礼を伝えるようにしましょう。
職場へのあいさつ
理事長や園長、主任や先輩・同僚など、できれば全員に口頭であいさつをするのがベスト。
ただし、系列園に異動した先輩など、直接あいさつすることが難しい場合にはメールなどを使ってお礼を伝えてもOKです。
職場によっては「退職時には関係者全員にお礼のメールを送る」「置き菓子とメッセージを沿える」など独自の慣例がある場合もあるので、その場合には慣例に従うようにしましょう。
保護者へのあいさつ
我が子の担任が変更になるというのは、保護者にとっては不安なものです。
退職が決まったら、1ヶ月前を目安にあらかじめ保護者に伝えておきましょう。そうすると保護者にも、先生に対して聞いておきたいことなどを相談するゆとりができます。
退職日はもちろん、後任の先生が決まっている場合にはその先生についても伝えたうえで、これまでの保育への協力に対してお礼を伝えましょう。
自己判断で行動せず、都度上席に確認することが大切ホィ!
子どもへのあいさつ
子ども達へのあいさつをいつするかについては、園によっても異なりますが、子どもたちが不安にならないよう言葉選びや伝える日程に配慮が必要です。
「もう会えなくなる」と思うと、子どもたちは不安で悲しくなってしまうもの。
「園には来なくなってしまうけれど、いつも応援しているよ」などと安心できる声かけができるとよいですね。
【6】しっかりと退職手続きをしよう
退職日を迎えれば「退職完了」となるわけではありません。
退職にはさまざまな手続きがあるため、不備がないようしっかりと手続きをする必要があります。
具体的な退職手続きは以下のとおりです。
主な退職手続き | |
---|---|
退職届の提出 | 所定のフォーマットに沿って退職届を提出します (退職2週間前まで) |
誓約書の提出 | 個人情報の取り扱いなどに対する誓約を取り交わす場合があります |
経費精算 | 立替経費などの清算を行います |
備品の返却 | 入館証や制服、ネームバッジ、PCなどの返却を行います |
定期券の払い戻し | 交通費の清算をします |
健康保険証の返却 | 後日郵送で返却する場合もあります |
離職票の受け取り | 退職後2週間ほどで自宅に郵送されます |
雇用保険被保険者証の返却 | 原則退職日に返却されます |
源泉徴収票の受け取り | 退職日までの源泉徴収票が発行されます |
年金手帳の返却 | 入職時に提出している場合には返却されます |
職場に確認して、退職後に不備が見つかるようなことがないように注意しようね!
【7】きちんと気持ちを切り替えて前向きに退職を!
ここまで、保育士さんが円満退職するためのポイントをお伝えしてきました。
しかしどんなに円満に退職できるように尽力したとしても、快く受け入れてくれない職員がいたり、職場の人間関係がぎくしゃくしてしまったり……心苦しい思いをすることもあるかもしれません。
しかし、あなたが退職日までできる限りの努力をしてきたのならば、後ろめたく思うことなく、前向きに次のステージへと歩き出しましょう。
職場の全員にあたたかく見送ってもらうことはもちろん理想ではありますが、それが円満退職の本質ではありません。
「自分自身が退職日までにやるべきことをしっかりとやり遂げて退職すること」こそが、自分のこれまでの仕事にけじめをつけ、前向きな退職をするために必要なことなのです。
【最後に】円満退職にこだわってはいけないケースもある
今回は円満退職のメリットと、それを実現するためのコツを紹介してきましたが、場合によっては職場と衝突しても権利を主張しなくてはならないケースもあります。
最後に、円満退職における注意点をお伝えしましょう。
退職理由を「自己都合」としてはいけないケース
退職には「会社都合」によるものと「自己都合」によるものがあります。
会社都合退職 | 倒産や解雇等、事業者の都合によって退職するケース |
自己都合退職 | 転職や転居、結婚などの個人的な理由によって離職するケース |
円満退職となるケースの多くは「自己都合退職」ですが、いっぽうで自ら退職を希望したとしても「会社都合」となりうるケースがあります。
(例※厚生労働省資料より引用)
・労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
・上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
・事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない)厚生労働省『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(2020/6/7)
そのほかにも、賃金の未払いや不当な時間外労働なども該当することがあります。
このような理由により退職を希望する場合、円満退職のために個人的な離職理由を伝えてしまうと、離職票上の退職理由が「自己都合」となってしまい、失業給付金などを受け折る場合に待機期間が生じるなどの不利益を被る可能性があります。
とくに退職後の就職先委が決まっていない、しばらくの間は心身の療養をしながら就職活動に専念する……といった場合には、離職票にきちんと正式な離職理由を書いてもらえるよう、職場と交渉する必要があるでしょう。
その場合にはタイムカードの控えやハラスメントの記録などが必要になるから、該当する場合は事前に記録を手元に残しておくといいホィね!
体調不良など、仕事を続けられない理由があるとき
心身に不調をきたし、年度末などまで退職を待てないというときにも、円満退職にこだわりすぎる必要はありません。
場合によっては休職制度なども併用しながら、退職の準備を進めていくとよいでしょう。
編集者より
退職というものは、誰の人生にとっても大きな転機となります。
それだけに緊張もあり、ときには不安にさいなまれることもあるでしょう。
しかし、一つひとつ手順を追って行動していけば、きっとあなたの納得できる「円満退職」に近づけるはずです。
あなたのこれまでの経歴がすばらしい経験と思い出となり、新たなスタートを支えてくれるよう、願っています。
保育士のお仕事探しのことなら、気軽に相談してホィ!
参考文献・サイト
- 厚生労働省『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(2020/6/7)
- 厚生労働省『知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識 第5章』(2020/6/7)
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